れっつオンナノコ!
「まさか魔女さんが星梧の友達だとは思いもしなかったけど、まぁそれは置いといて」
両手で箱を横にどかすようなジェスチャー付きで話を置かれる。俺的には今からでも本人に聞きに行きたいくらいなのだが。
「これで本物なのが分かったでしょ?ね?」
「えー……正直認めたくなさが半端ないが、まぁ目の前で起きてることは認めるしかないな」
「よし。だから、はい」
ぽん、と渡されたのは、巴月が手に持っていたタブレットケースだ。ちなみに本体が白で蓋が藍色のスライド式。
「……さっき見たことが、認めたくないけど事実ってことは、これを俺が飲んだら俺が女になるわけだよな……」
「そうだよー。月曜日から身代わりしてもらうんだから、今のうちに深月に似てるか確かめないと」
「っは!?もうやんのか!?」
「だって12月になったら星梧はテスト勉強し始めるでしょ?そしたら難しいだろうし、それまでに解決するかわかんないし、だったら少しでも出席日数稼いでおかないと」
「ま、まぁそれもそうか……」
手渡されたものを見つめる。実際、女の子になるのは微妙だ。しかも多分姉に似ているときた。
「っていうか和明はもっと直接的なもの作れないのかよ」
「ん?」
「だから、巴月が深月みたいな外見になる、とか」
「それは最初に提案したんだけど、なんか表の裏は出せるけど表裏以外は無理…?みたいな、えっと、つまり複雑な理由で無理なんだって」
「はぁ?」
「私にもよくわかんないんだけど、なれるものとなれないものがあるんだってさ」
「ふーん……」
正直魔法みたいな日常にないものに科学要素があることも意味不明だが、使える本人が無理だというなら仕方ない。
「性別が変わるだけで人格には作用しないって言ってたから、まあイメチェンみたいなものだと思えばいいんだよ」
思えるか。
「さ、ほらほら、飲んで飲んで」
「えー……ちなみに効果はどのくらい続くんだ?」
巴月がさっき試したと言っていたが、帰ってきたときにはいつもの巴月だったし、それまでは部活で試す時間なんてなかっただろう。だとしたら、さっき夕飯を食べてから今までの間の3時間以内か。
「1時間ちょっとって言ってた。だから授業時間ごとに飲まないとなんだってー」
「ちょっと、ってなんだよ」
「人によって変わるんだってー。で、平均1時間8分くらいらしいよ」
中途半端な数字だな。
「で、どれくらいで戻っちゃうか分かっとかないとでしょ?」
「まぁそれは確かにな……。連続で服用するのは大丈夫なのか?」
市販の薬でもないのに副作用とかどうとかがあるのかわからないが。
「大丈夫だってー。裏の物を引っ張ってきてるだけだから自然現象の一部?とかって言ってたかなぁ?」
よくわからねえけど、男が女になることが自然現象の一部ってことだけはないと思う。