夢の中の彼女は4
入学式当日。
体育館には緊張した面持ちの新入生達が集まっている。
僕はといえば、今日は朝から妙にふわふわした感じで、変な気持ちだ。
「うーん、流石に緊張してきたかも…?」
「俺は全然」
「だろうと思ったよ」
紫音はいつもと変わらない様子だ。
変なのは僕だけなのだろうか。
(…緊張、とも少し違うのかな?)
どきどきするような、これは新しい生活への期待なのだろうか?
僕は胸に手を当て、静かに目を伏せた。
そうすればなんとなく落ち着いた気がした。
「そういえば…おんー、別クラスだったね」
「まー、仕方ないよ。…寂しい?」
「いや、全く」
つれないなーと紫音は少し拗ねたような顔をした。
別に…寂しくないわけじゃないけど…。
「じゃ、俺あっちだから。また後でなー」
「んーまた後で…あっ」
ふと、思い立って向こうに行こうとする紫音の腕を掴む。
顔に疑問符を浮かべて振り返った彼に、僕は笑って言った。
「新しい環境だけど、頑張れよ!」
「…おうっ!お前もな!」
嬉しそうに手を振る友人の姿に、自分も元気づけられた。
……僕も、頑張るか。
気合いを入れて僕も決められた席につく。
そうして、入学式が始まった。
*
入学式も順調に進んでいると思われた頃、僕らは一つの大きな困難にぶつかっていた。
(校長話長い…)
そう、校長先生の話がとにかく長いのだ。
先生はさっきから淡々と話を続けている。
せめてもう少しわかりやすい話をしてくれれば…!
(こればかりは逃れようもないもんなぁ…)
そんなことを考えていると、眠気がこみ上げてくる。
僕はこみ上げる眠気と必死に戦っていた。
(やばい…ね、眠い…)
隣の生徒とかがうつらうつらと船をこぎ始める。
それにつられて僕も眠気に堪えきれなくなり、一際大きな欠伸をした。
しかし、眠気は次の瞬間綺麗に吹き飛んだ。
ーーバタン。
大きな音が近くからなり、僕はびくっと身体を震わせた。
何だろうと思い音のした方を見ると、生徒が叫ぶように言った。
「先生!隣の子が…」
倒れたのか。
先生がすぐに駆けつけている。
(貧血?大丈夫かな…)
先生がその生徒を支えて、外まで移動させている。
僕はその生徒を見て固まった。
(えっ、嘘…)
頭が一瞬フリーズする。
それから、そうと気づくと体中の血液の温度が一気に上がるようだった。
『すいません…』
呟いた声だって、そうだ。
やっぱりその生徒は…、
夢の中の女の子にとてもよく似ていたのだ。