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恋夢 ~こいゆめ~  作者: ぽろ
第一章
3/5

夢の中の彼女は2

「……っは」


ガタンという音で目が覚めてしまった。

家の猫が本を落としたらしい。


「高校入っても…か」


夢の出来事をぼんやりと思い返す。

高校入っても夢を見ていたいよ、僕は。

でも、なんだか高校入ってしまったら会えないような気がしてならない。

(なんて…気のせいだよね)

そう思ってもう一度眠りにつこうとするが、眠れない。

不安は胸に残っていた。


会えると思っていれば、会えるよ。

そう思っているくらい、いいじゃないか。

(ううん…別に会えなくなる訳じゃないんだから、不安がらなくていいんだ)

僕は自分に言い聞かせるように呟き、目を閉じた。


           *

ーー鈴君。

幼い可愛らしい声が聞こえる。

色白で、細っこい身体。病弱そうなその子を見て、僕はなんと思ったんだっけ…?

ーーあのね、私行かなくちゃいけないの。

どこに行くの?尋ねようと思ったけど、声がでない。

ねぇ、行かないでよ。

ーーごめんね。

待って!僕は必死に彼女に手を伸ばした。

まっすぐに彼女を見つめるけど、やはり僕にそれは見えない。

涙が頬を伝う。


謝らないで…ごめんねはこっちの方だ。

僕には彼女の顔が見えていなかった。


           *


「……夢か」

嫌な汗が額に浮かんでいる。

あの人は一体誰だろう?知っているような、知らないような…そんな妙な感じがして、変な気分だ。

それにしても、あの夢とは違う夢を見るのは久しぶりだ。

僕は何となくこの夢を忘れてはいけないような気がした。



「鈴ー、おはよー!」

朝、教室で読書をしていると、紫音がいつものように話しかけてくる。

僕は本を置き、軽く手を振って紫音に挨拶をした。

「おはよう、おん。なんかテンション高いね」

紫音はやっぱわかる? と言っていたずらっこく 笑った。

「実はね、昔の写真を見つけてさー」

「へぇー」

「幼稚園くらいのやつなんだけど…昔の鈴が超可愛いの!!」

「僕かよ!もー…なんか恥ずかしいからあんま見ないでよ」

紫音とは幼稚園の頃からの付き合いだ。

もしかしたらこういうのを幼なじみと言うのだろうか?あまりそんな感じはしないが、昔から仲が良いため、お互いの写真はお互いにたくさん持っていておかしくない。

(ただ、昔の写真見られるのって、恥ずかしいんだよなー)

大体僕は写真自体嫌いだ。

「…でね、その写真三人で写ってたんだけど、そういやもう一人すっごい仲良かったやついたなーって思って。懐かしいなー」

「……そう言われると、いたような気がする」

どんな人だっけ、女の子だったような気がする。

僕がそう思っていると、紫音も同じようなことを呟いた。

「たださ、そいつの顔が思い出せないのさ」


とっさに昨日の夢が脳裏によぎる。

顔が霞んで見えない女の子。あの子は……?


「……あいつ、どんなやつだっけ?」


思い出せない。

それなのに僕はなぜか涙が出そうになった。


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