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探偵役と助手さん2

 ぼくは基本的に、紫苑さんの嫌がるお仕事を代わりにすることが仕事です。

 あの人は面倒くさがりなので、その仕事は多岐にわたるのが実情ですけど。

 お茶汲みから始まって、ペット探しもその定例の一部。あとは、依頼の簿帳もぼくが書くし、浮気調査も紫苑さんはめったに顔を出さない。……ほんと、結構あるなぁ。

「ふんふふ~ん♪」

 それでもぼくは、ご機嫌に仕事を行うことが多い。紫苑さんに遣えることが、ぼくの存在意義といっても過言ではない。

 それに、あの人はあの人なりに優しさを持っていらっしゃるし、何よりかわいい。

 こんなことを言ったら……想像するだけで震えが止まらない。がくがく。あの人が本気になったら、僕が考えていることなんてすぐにばれる。用心しよう……。

 寒気をごまかすように周囲を見回して、自分が今いるあたりを確認する。

「早く終わらせないとなあ」

 紫苑さんは、基本ぼくがいない間にも応対はするが、お茶は出さないし、事務机から退きもしない。応接用にあるソファに相手を座らせることもなく、勝手に座れば? みたいな態度で淡々と依頼を聞くのみなのだ。その時点で約半数のお客が踵を返す、らしい。

 全部紫苑さんから聞いた日常会話から導いた答えだけど、探偵事務所に来るほど切羽詰まったお客様が半数近くも――半数以上かも――話もせずに帰る応対というのは、容易に想像がつくから、たぶん本当のことだ。

 その間に受けた依頼も、ほとんどがぼくの仕事になる。けれど、受けられない量は持ってこないあたり、やっぱり優しい。

 夏場といってもいい湿度と気温のビル群を潜り抜け、ぼくは目的の猫の集会所へと足を運んだ。

「…………。いない、か」

 依頼用のメモと写真を確認したが、やっぱりいない。

 ……仕方がない。聞いてみるか。

「あの……」

「にゃ?」

 比較的涼しい場所に陣取っていたデブ猫が、ぼくの近づく気配に気づいて振り向いた。

 やや警戒をあらわにしているが、気にせずに近寄る。紫苑さん的に言えば、そちらの都合など関係がない――だ。

 ぼくは写真を取り出すと、それをデブ猫の方へと突きつけて尋ねた。


『この猫を知っていますか?』


 ピクンッ、とデブ猫の全身が、弱い電流を流されたように震える。

『にゃ? われの言葉が分かるのか?』

『ええ、わかりますよ。……それよりも、このトラ猫さんを知っていますか?』

 デブ猫は一瞬不思議そうな目でぼくをみたけど、すぐに写真の方に目をやった。

 動物は人間ほど不思議な出来事に対して頓着しないのでいつも助かる。

 人間相手に質問したら、普通の質問方法であったとしても、『なんでそんなことを聞くのか?』から始まって『一緒にお茶をしながら話しませんか?』まで続くこともしばしばあるのだ。

 しばらく写真を見ていたデブ猫だが、やがて瞳をそっと落とした。

『いや……知らぬな』

『そうですか』

 正直、落胆がないといえばうそになるが、予想の範囲内でもある。ぼくはお礼に、自家製のささみジャーキーを分けようかと考えていたら、デブ猫が重々しく口を開いた。

『われはここのことはよく知っているが、ここ以外は知らぬ。しかし、あちこち歩き回るあやつなら、何か知っておるやもしれぬ。……ついてくるがよい』

 すっ、とデブ猫は身を起こすと、そのまま歩き去っていくので、ぼくは無言でついていく。

 そこで出会った猫は、依頼の猫とは違うトラ猫だった。依頼猫が灰色のアメリカンショートヘアらしいのだが、こちらは短毛のデザートリンクスだろうか。

『にゃ。あやつだ』

『わかりました。あ、これ鶏肉で作ったジャーキーです。お礼にどうぞ』

 ありがたくもらおうと言って、餌を咥えて指定位置へ。ぼくは言われたトラ猫に同じように話しかけた。

『このトラ猫、知ってます?』

『にゃ? きみ、わしらの言葉が……? まあよいか。どれ……? ああこいつなら、近頃神社で寝泊まりしているよ。昨日餌を恵んでやった』

『ありがとうございます』

 珍しく一か所目の聞き取りで有力情報を得て、ぼくはお礼を渡してさっさと神社へと向かい、今少しの聞き取りの後に労せず依頼猫を捕まえることができた。

あと1話続きます

……やっぱりこの文章の書き方だめですかねぇ?

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