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第2編 監視される世界  作者: SEED
第4章 真理の裏側
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Truth of the world



「伝説のハッカー・碓氷天翔くん。初めまして、久しぶり・・・・・君にしてみれば初めましてかな?」


「『初めまして』だ。」


天翔の言葉に四条は愉快そうに肩をすくめる。


「僕にとっては『久しぶり』だ。リアルでは20年振り。ネットではつい先日あったばかりかな。」


「・・・・・どういうことだ。」


「僕は、君の父親にあたる。」


「なん・・・・・・・・だと?」


「君は両親がいないだろう?それもそのはずだ。君は僕の研究成果と同時に遺伝子を与えた存在なのだから。20年前から僕はネットという存在に着目していた。そしてその恩恵を人類に与えるために。」


「その結果が君だ。君は生まれながらに無意識領域にE'sの領域を持っている。君以外の人間は洋一郎君のようにナノマシン・Forceで領域を作るか、デバイスのような物を通さないと技術を使う事はできない。」


「馬鹿な、俺の脳内にそんな物が・・・」


「それともう一つの疑問だけど・・・・僕の正体が分かるかな?・・・・僕はアサルトだよ。3年前も世話になったね。」


「そ、そんな!!ならあんたはなぜ・・・」


今まで話を聞いていた洋一郎が叫びをあげた。しかしそれも仕方のないことだ。四条がアサルトなら、New Orderを自ら破壊し、設計図を洋一郎に渡した事になる。


「まさか・・・・・それも最初からこうなると分かってやったのか?」


「そうさ、洋一郎君の性格ならそれをさらにバージョンアップして示顕エンジンを作ってくれると分かっていた。そして最後の一つを打ち上げるタイミングで君、碓氷天翔がこの場に現れる事も計画の一部だった。」


「そんな・・・・・四条さん、なら僕はなんのために。」


「君はよくやってくれた。研究室でも一番優秀だったよ。・・・・二人ともよく見ておくんだ。示顕エンジンは『現実さえも湾曲させる』その本当の意味を。」


四条が手を前に掲げるとそこから青い閃光が瞬き、次の瞬間、洋一郎が手にしていた発射スイッチが弾け飛んだ。


「・・・・・・・ッ!」


苦痛に顔を歪め、手を押さえる。それを見た四条は自分の手を見て首を傾げる。


「まだ研究の余地があるな。」


「四条さん、あなたは示顕エンジンを破壊するおつもりですか?」


「破壊?馬鹿なことを言わないでくれ。僕はこれを利用するつもりだったんだよ。」


「ならなぜ、僕の邪魔を・・・・・」


「私はね洋一郎くん。私が書いたシナリオの上に計画にない人物があがるのを嫌うんだ。」


「・・・・・・」


「前段階で君を巻き込んでしまってすまないと思っている。けれども君は僕の最終的な計画には必要だったんだ。」


「四条さん・・・・・」


そして天翔の方を向いてにやりと不気味な笑みを浮かべる。


「碓氷くん、君も悪かったね。君は平凡な人生・・・・・とも言えないけれど恋人を失うような人生を歩ませるはずではなかったんだ。少なくとも君には・・・・・———」


「少佐!!」


四条が一息つき、言葉を紡ごうとした瞬間、天翔の後ろから雫が現れた。雫は四条がいたことを知っていたようで、驚きもせずに洋一郎へと銃を向ける。


「もうすぐP.J.F.Aの本隊が到着します、武装を解いて下さい!」


「・・・・・邪魔を、するな!!」


洋一郎が声を荒げ、手を横に薙ぎ払うと青い閃光が瞬き、突風が巻き起こる。



「雫・・・・!!」


天翔は雫の前へとかばうように飛び出した。そしてとっさに自分の前に壁のようなイメージを築いた。すると洋一郎が巻き起こした突風を見えない壁が打ち消した。


「!・・・・・これが、示顕エンジンの・・・」


「そうだ、君はがもともと使える技術だ。」


洋一郎が悔しそうに顔を歪めた。そして今度は目を閉じて手を雫に向けてかざす。すると雫は頭を抑えて苦しみ始めた。


「くっ・・・うぅ・・・」


「雫!どうした?」


「マインド・ハックか。・・・さすがだ洋一郎君。論理的な思考からの発展は君の最も得意とする物だったね。」


「四条!これを防ぐ方法は!?」


「すでに洋一郎君は侵入を始めている。もともと人間の脳には防御機能がついているが、マインド・ハックへの対抗策を持っていない脳は脆弱性を持ったコンピュータのような物だ。・・・防御する方法は、使用者を殺すことだ。」


「そんな・・・・・・」


「洋一郎を殺せ、それともこのまま少女を見殺しにするか?」


「くそ、くそ・・・くっそおおおお!!洋一郎おおお!」


天翔は先ほどと同じようにイメージする。しかし今度イメージしたのは洋一郎の体に穴を穿つ思考だ。自分の手から蒼い閃光が迸り、洋一郎は目を見開く。


「う、うおおおおおおお!」


ボコンッ!という大きな音とともに、洋一郎の腕が文字通り、消えた。


「・・・・・やはりそうか。なるほど、良い研究材料だ。」


四条は楽しそうに笑い、こちらに振り返る。


「この・・・狂信者め。」


「狂信者だろうとなんだろうと私は科学者だ。新たな技術を人類に提供するし、その成功報酬として私の興味を満たす。・・・対等な等価交換だ。」


「碓氷君、君に会える事ができてよかったよ。これからも会う事があるだろう。・・・さらばだ、・・・・息子よ。そのロケットは君に任せる。打ち上げるも破壊するも好きにしたまえ。また、会おう!」


四条が腕を横に振り、発射上の地面が隆起するように爆発した。


「四条!!・・・・・・」


力で噴煙を吹き飛ばすと、すでに四条は立ち去っていた。右腕を失っていた洋一郎も今の瞬間にどこかへと消えたようだった。


「か、天翔さん・・・・・」


「雫、・・・・・俺P.J.F.Aを抜けるよ。」


「・・・・そう言うと思ってました。」


天翔は振り向くと雫は笑った。それを見て、天翔も笑った。そして天翔は手を上に振り上げ、力を解放した。脳の中で圧倒的な力が巻き起こり、青いきらめきが空間を覆った。




そして人類の希望か、



はたまた絶望を乗せた最後のロケットは




必死に手を人間の届かない領域へ、




空へ、




向かって飛び立って行った。




それは数秒後には、極小の点となって、見えなくなった。







これで第2編 監視される世界は終わりです。

最後にエピローグを入れて完全に幕を下ろしたいと思います。


第3編も創作中ですので、できるだけ早く乗せたいと思います。

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