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第2編 監視される世界  作者: SEED
第2章 存在する闇へ
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3年ぶりの『ただいま』を

前話に大きな変更を加えました。まだ確認してない方は確認をお願いいたします。


趣味でダラダラと書いている小説ですが、閲覧してくれている方々、ありがとうございます。


これからもどうかよろしくお願いいたします。

目を覚ますと、まず見えたのは真っ白な天井だった。ありきたりな場所だなと思い、体を起こそうとするが体全体が痛むために起き上がることができない。自分がなぜここにいるのだろうかと考えると、先ほどのことが記憶の奥底から沸きあがってくる。


「あぁ、そうだ、思い出した。あの時遥香の前に飛び出して、・・・撃たれたんだっけか。」


自分の脇腹に手を当てるとそこには縫われたようなキズがあった。鈍痛と突然の頭痛に顔をしかめ、布団に顔を埋める。するとドアの開いた気配がした。顔を上げようとするが、その前に声をかけられた。


「か、天翔さん!・・・まだ起き上がっちゃダメですよ。」


聞いたことがある声だ。だがそんなに多く聞いたことはない。強烈な鈍痛から逃れて顔を上げるとそこには早瀬遥香がいすに座っていた。


「は・・・早瀬さん?」


春香と呼びそうになり途中で修正を入れた。しかし遥香は目をピクッと動かした。


「・・・天翔さん。名前で呼んでください。」


・・・・・・・・そこにこだわるのか。


「遥香・・・さん、なんで君がここに?」


遥香は買い物から帰ってきたようで足元においてあったビニール袋からミネラルウォーターを取り出し渡してくれた。それを受け取り、一口飲む。


「それはもちろん、天翔さんを介抱するためです!・・・私を助けてくれた恩人ですし、私がやるべきだと思ったんですよ!!」


「あ、ああ。なるほど。」


強引に納得させられたような気もするがまぁいいだろう。しかし問題はこれからだ。


「・・・・・どうしたものかな。」


窓に目を向けると上を丁度飛行船が飛んでいた。表示されている広告に昨日の大学内での事件はない。おそらく情報統制が働いたんだろう。


「・・・天翔さんは、これからどうするんですか?」


同様に飛行船を見ていた春香が話しかけ来た。話を振ってきた本意を探りながらも答える。


「どうしようかな、キズが治ったら仕事に戻るかもしれないし。」


「そうなんですか?・・・」


「あのときはホントに無我夢中だったんだ。でもその結果で春香が助けられたんだから結果オーライだけどね。」


そう言いつつ苦笑いでごまかす。しかし遥香はその顔を見て顔を赤く染めて下を向いた。それを見ていたが見なかったことにした天翔は目を閉じた。すぐに思考は遅くなっていき、意識は暗闇の中に埋没していった。




次に起きると、周りは暗くなっていた。手元にあるスイッチで照明をつけた。一人部屋なので周りを気にする必要はない。照明をつけると隣に一人の女性がベッドに顔を伏せて寝ていることに気づいた。遥香がまだ残っていたのかと思い使っていない毛布を肩から掛けてやる。枕元から折りたたみ式の携帯端末を取り出し電源をつけてニュースサイトを訪問する。あの事件から2日ほどすぎていたが『表』のほうでは特にこれといったことが起きていないようだ。『裏』サイトの掲示板フォーラムではどこから漏れたのかも分からないが大学での騒ぎで騒がれていた。天翔はこんなものかと思い、端末を閉じ、枕元に戻した。その際コトッという音がなってしまった。


すると、寝ていた遥香がおきた。


「あ、悪い。起こしちゃった・・・・・か?」


そこに寝ていたのは春香ではなかった。悠真でもない。・・・結衣だった。


「結衣・・・さん。どうしたんですか?面会時間はもう過ぎてしまっていますけど。」


「・・・・・・・・・」


「まだ眠いならここで寝ていってもらってかまいませんよ?自分は気にしないので。」


「なんで・・・」


「え?・・・!?」


結衣は突然目から涙をこぼしながら天翔の目を覗き込んだ。その目には様々な感情が混入している。それを感じた俺はその意図を理解することができず、ただ顔を見つめ続けてしまう。


そのとき、天翔の携帯から着信音が鳴り響く。仕事の電話なのだろう、初期設定のままの単調な通知音だ。取ろうか迷ってから結衣に背を向けて携帯を取ろうとすると、後ろから結衣が抱きついてきた。


「ゆ、結衣・・・さん?」


天翔はその懐かしい感覚に驚き、体を硬直させた。目の前の窓からは外にある建物などの人工的な明りが差し込んできている。


「ご・・・・・・・・めん・・・・・ッ」


天翔の耳には結衣が「ごめん」と泣きながらつぶやいたように聞こえた。だがその謝罪はなにに対してなのか天翔は理解できない。


「・・・・・」


しかし、天翔の困惑を感じてなのか、分からないが結衣は言葉を紡ぎ始める。


「天翔のこと・・・・・忘れてて、ごめん・・・なさい・・・」


「—————(お、思い出したのか。)」


「私、天翔のそばにずっといるって・・・・・言ったのに!私、私ッ!」


結衣の顔が背中に押し付けられ、わずかに湿った感触をもたらす。天翔はそれが自分の冷や汗でないことを自覚していた。だが結衣はすでに記憶を取り戻している。天翔が帰国した時にはすでに記憶を失っていた、そして今・・・・・おそらく俺が撃たれた時のショックで記憶を取り戻したのだろう。



「結衣・・・・思い出したのか。」


「うん、うん、思い出したよ。全部・・・。」


「そうか。・・・・・何も言わずに渡米してごめん。」


「本当だよ、私、ずっと忘れてたんだよ。」


「うん、俺が渡米する時に結衣の記憶にロックをかけたんだ。これ以上、辛い思いをしないようにね。俺が居ない間危険が迫らないようにしたんだ。でも、余計なお世話だったかもしれないね。」


「本当だよ・・・・なんで、忘れさせようなんて。」


「ごめん。」


いつのまにか、携帯からの通知音は消えていた。いつか、またこうなるとは覚悟していたのかもしれない。そして、望んでいたのかもしれない。俺は結衣を守ると沙紀にも誓ったのだから。


「結衣、そろそろ離れてくれないか?」


「理由」


「え?」


「理由があるならいいよ。」


「・・・・撃たれた時のキズが痛むんだ。」


そこで結衣はハッと気づいたように背中から離れた。天翔は振り向いてその顔を見る。泣き腫らした目元を手で隠そうとするがその手を捕まえて頬に手を添える。


「ごめん。そして・・・・ただいま。」


「うん、おかえり・・・・・・まってたよっ、天翔!」


結衣が俺の胸に飛び込んでくる





それを優しく抱きしめてから






3年ぶりのキスをした。












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