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第2編 監視される世界  作者: SEED
第1章 再び始まる一人の世界
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再始動

新シリーズ始めました。『第1編 Justice of Bullet』を見てない方はそちらをご覧ください。


空が見える。碓氷天翔は日本行きの飛行機にアメリカから乗り、もう日本列島が下に見える場所だ。あと1時間もしないうちに成田空港へ着くだろう。


あの事件、JoBのテロから3年の月日が立っていた。俺と結衣は種子島へと帰郷し、高校を卒業してから東京に出るはずだった。しかし、俺は結衣を東京に残っていた悠真に託して、単身でアメリカへと向かった。結衣には何も言わずに日本を出て行ったので、真相を知った時は悠真に怒り狂い、1週間口を聞かなかったそうだ。


「悠真には悪いことしたなぁ。」


懐かしい友人とせっかくまた会えたのに最初から怒られ役にしてしまった。一応、謝っておいたが、悠真はいつも通り「お前が気にすることじゃないさ」とだけ言ってくれた。悠真には3年前の事件よりも前よりずっと長い付き合いだ。


アナウンスが流れ、天翔は開いていたノートPCをとじ、鞄の中へとしまってから再び空へと視線を移した。徐々に地面が近づいてきて、大きな振動が襲ってきて数秒後に飛行機は完全に停止した。それからゆっくりと移動していき、完全にエンジンを停止した。


アナウンスに従って預けていた荷物を受け取り、空港を出ると、目の前に車が走りこんできた。


「失礼ですが、碓氷天翔様でしょうか?」


車の運転席から顔を出してきたのはスーツを着た俺よりも少し年を取った男だった。


「はい、そうですが。」


「P.J.F.Aの沖田という者です。霧島さんの命によりお迎えに上がりました。」


どうやら霧島さんが気をきかせてくれたようだ。鞄を後部座席に入れてから助手席に乗り込んだ。


「ところで、碓氷さんはどうして今さら日本に?」


「その碓氷さんってのはやめません?沖田さん俺より年上でしょ?」


沖田は照れたように笑った。


「いえ、でも碓氷さんは知らないようですけど、P.J.F.Aの階級で言うと軍曹なんですよ。碓氷さんは少佐でしょう?」


P.J.F.Aは3年前の事件以降、情報機密を守るために階級制を使用していた。そして俺は以前の活躍を見込まれ、少佐になっていた。霧島さんが力に合った権力を持っておくべきだと言って久山法務大臣に申し出た所、なんの問題もなくOKされたらしい。


「まぁ、沖田さんがそれで良いんでしたら俺は構いませんけどね。」


「はい、それに年が上と言ってもたった2つですから。私は22歳。今年大学を出て就職したばかりなんですよ。」


「そうなんですか。」


「それで、話は戻りますが、なぜ日本に?」


「まぁ理由はいろいろとあるんですけどね。・・・3年前の事件関係ですよ。」


「なるほど。あの事件の時私はまだ東京に出てきてすらいませんでしたからね。組織の先輩に聞いた時は驚きましたよ。影の救世主が17歳の高校生だったなんて。」


「でしょうね。」


そう言って俺と沖田さんは笑った。車は走り続け、懐かしい都会の風景を味わいながら車はP.J.F.Aの本部地下駐車場へと入って行った。


沖田さんが車を駐車場に置き、車から降りた。俺もそれに続き、最低限の鞄だけを所持して車から降りた。ゲートに向かって歩いて行くと、警備員が俺に向かって敬礼をしていた。それを俺は手を上げて返す。


「正直、こういう感じは困るんですけどね。」


「そんなこと言わないでください。それに、3年前ならまだ幼さがあったみたいですが、今では雰囲気を纏った大人ですよ。それに階級が少佐となれば、敬礼しないとまずいと感じるのも当然です。」


「・・・確かに、言われてみるとそうですね。って俺そんなに雰囲気あります?」


「ええ、ありますよ。」


即答され、俺は苦笑いを返すしか無い。会話をしていると地下ゲートに着いたようだった。沖田さんはセキュリティにカードをかざして中に入って行く。俺は立ち止まり、どうしようかと考えていると沖田さんが慌てて戻ってきた。


「すいません。セキュリティカードをまだ渡してませんでしたね。後から渡されるので、今は気にしないでください。」


そう言って沖田さんは横にいるコンピュータを見つめている警備員に俺の方を指差してセキュリティを解除させた。一時的にセキュリティゲートのセキュリティが解除され、俺は中にそのまま入って行く。ビル内は3年前と特にかわっておらず、迷わずに指揮官室にまでいくことができた。


「沖田です。」


するとドアの向こうから「どうぞ」という声が聞こえた。沖田さんがドアを開けて中に入ると、奥にあるデスクに霧島さんが座っていた。


「久しぶりだね、碓氷くん。」


沖田さんが横によけたのを確認してから霧島さんが話し始めた。


「お久しぶりです。霧島さんは少し・・・貫禄がましましたね。」


「そうかい?君は・・・かなり大人っぽくなったね、最後に見たときとは見間違うくらいだよ。」


「そうですかね?まぁ、あっちの組織で訓練させてもらったんで、3年前のようなガキみたいな甘さは消したつもりですよ。」


「さて、君にはこれからアメリカでの経験と、君の情報処理技術を提供してもらうことになる。これは3年前からの契約だ。覚えているね?」


「ええ、覚えています。」


その契約を俺が認めたことで、俺は公安警察からの許可をもらいアメリカへと飛び立ったのだ。


「ところで・・・・・」


そこで霧島さんは言葉を区切り、沖田さんの方を見た。沖田はその視線を受け二人に軽く会釈をしてから部屋から退出していった。


「別にそこまで隠すことじゃないでしょう。」


「いや、これは私と君だけが知っているトップシークレットだよ。」


「ちなみに言っておくと、『アレ』はまだ完成率が20%です。ぜんぜんパーツが足らない。」


「まぁ時間はまだある。私が君に持ちかけた計画は日本の今後を担っていくかもしれないのだからね。」


「・・・はい。」



「ところで、あれから彼女と連絡は取ったのかな?」


それを聞いて俺は苦笑いを返した。霧島さんなら話を振ってくると分かっていたからだ。


「いえ、あっちでもいろいろありまして。ぜんぜんですよ。たぶん、会ったら怒鳴られるんじゃないかぁ。」


「だろうな。君が突然いなくなった時よりはマシだろうがね。・・・あの時はすごかったよ。」


「沖田さんから聞きました。すみません。」


「いや、あれは私たちも納得してただけに君だけを責めるわけには行かないしね。」


(コンコン)


するとそこに先ほど入ってきたドアからノック音が聞こえてきた。


「沖田です。」


「ああ、どうぞ。」


「失礼します。・・・・・」


沖田さんが俺の方を見てから霧島さんの方を見た。おそらく事件の情報が入ってきたんだろう。


「出てましょうか?」


「いや、構わないよ。・・・沖田、話してくれ。」


「はい、分かりました。・・・午後13時20分。東京某所にある銀行強盗が発生しました。所轄が周囲を包囲していますが、テロの可能性もあるということでこちらの出動を打診してきています。」


「ふむ。・・・分かった。所轄には了解したと言ってくれ。それと、特殊部隊1班から2班にA装備で地下駐車場にて待機だ。」


「了解しました。」


そう言って沖田が部屋を出て行った。俺はそれを確認してから口を開いた。


「特殊部隊を出すんですか?」


「ああ、所轄だけではどうしようもないしな。かといって交渉が聞く相手では無いかもしれん。」


「・・・俺が出ましょうか?」


それを聞いた霧島は驚いた。なぜなら、3年前の事件、それにアメリカでの事件。これらを経験した天翔が自ら現場に出てくるとは思っていなかったからだ。しかし、霧島はこれに同意しようと思った。彼は今でも、いや、3年前の自分すらも超える天才ハッカーとなっているのだ。アメリカにいる間にも情報処理技術、セキュリティ技術、ソフト開発技術などの名誉をことごとく物にしてきたのだ。


「いいのか?」


それを聞いた天翔は乾いた顔を見せた。その顔にある意味を受け取るには天翔との付き合いが短すぎる。


「構いませんよ。できる事があるならできるだけ協力するつもりですから。」


そう言って天翔は自分のノートPCを持って立ち上がった。

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