奴ハ―――
PM9:00―――
「やっほー!」
「・・・元気ね・・・」
約束通り、《トシ子》探しを始めることにした。
「そういえば、華音」
「ん、何?」
「《トシ子》がどこにいるのか、わかるの?」
道を歩きながら、私が尋ねる。
その瞬間、華音が固まった。
「もしかして・・・、知らない・・・とか」
「いや~。実際、どこにでも出るみたいだからさ~。てか、いるのかどうかもわからない」
すごい脱力・・・。
なら、無駄じゃないのか、これ。
「ま、とにかくGO、GO!!」
そして私は、引っ張られるようにしながら、道を進んでいった。
PM9:15―――
「・・・」
「・・・」
《トシ子》を探し始めて、15分がたった。
「ねえ、やっぱ帰っていい?」
「だめ~・・・うっ!」
突然、華音が苦しそうにうめき、地面に膝をついた。
「ちょっ!大丈夫!?」
私は華音の前でしゃがみ、話しかける。
「・・・な~んてね。びっくりした?」
「華音・・・」
私は本気で心配していたので、脱力感がハンパなかった。
そんな私を見ながら、楽しそうに笑っている。
騙されたのが、おもしろかったのだろう。
「とりあえず、笑いを止めて・・・」
「プフッ!・・・ご、ごめん・・・。ヒッヒッヒッ」
「はぁ・・・」
その後、華音が「あと5分!」と言うので、仕方なく付き合うことにした。
PM9:20―――
「はい、5分たったよ」
「えっ、もう!?たのむ!もう少しっ!」
手を合わせて頼んでくるが、さすがにもう遅いので、帰ろうとした。
そのとき―――
「う゛っ!」
華音がうめいて、地面に膝をついた。
「もう、また?今度はひっかからないわよ!」
だが、そう言っても反応がない。
それどころか、頭をおさえて、苦しそうにうめいている。
「華音・・・?」
「う゛っ・・・あ゛っ・・・・・・」
さすがに変だと思い、華音の前にしゃがみこむ。
「ちょっと、華音・・・うぐっ!」
急に首を絞められた。
遊びではない、“本気”だ。
「あ・・・、華・・・音・・・・・・う゛っ!」
名前を呼ぶと、さらに力が強まった。
華音の顔を見ると、瞳に光はなく、何も考えていない様だった。
「華・・・、っ!」
今、華音の後ろに人影が見えた気がした。
かえり血を浴びた、女の姿―――
「トシ・・・子・・・・・・」
そこで、私の意識は途切れ、暗闇へと落ちていった―――
フフフhh・・・・・・オイデ・・・コッチニ・・・・・・
オワタ!
いろんな意味でオワタ!
駄目だ!駄目なんだ!
やはり俺は下手なんだ!!
くっ・・・、次の人・・・たの・・・む・・・・・・うっ!
こうして、慧爛は―――
眠りについた。