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大好きだった彼女に浮気され、地獄に落とすまで。  作者: くまたに


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40/50

第40話:狂った秒針

「はい。言われた通り、響と位置情報を繋ぎました。後で共有かけておきます」


 震える声で言いながら、私は唇を噛んだ。

 ひーくん──否、響と築いてきた関係は、私のせいで崩れた。

 しかし、響を助けるにはこれしかなかった。

 そう自分に対して言い訳をしていないと、この先響と向き合える気がしなかった。


『次の"頼み事"は、追ってメッセージを送る』

「分かりました」


 そこで通話は終わる。

 画面が消えるのを確認してから、スマホをベッドに投げ捨てた。

 両親の稼ぎで買ってもらった物だ。

 だからこそ、乱暴に扱う自分が嫌だった。


「ひーくん……私、間違えちゃったよ……」


 壁を一枚挟んだ先にいる響に、今すぐにでも慰めてもらいたい。

 しかし、それをして貰うだなんて、虫が良すぎる。

 せめて──


「私が終わらせる」


 最後に呟いて、私は枕に顔を埋めた。

 狂った秒針のように、私と響の間にできた歪みは取り繕えない。

 だから、私にできる最大の"償い"をするまでだ。



     ◇



「おい響。ちょっと話がある」


 公園のベンチでぼんやりと空を眺めていると、いきなり話しかけられた。

 バシバシと背中を叩いてきて、()()()()があった。

 その声に聞き馴染みがあったので、悪意がないことは分かっているが、少し強引だ。


「零……痛い」

「あっ、すまん」


 飯塚零(いいづかれい)

 サッカーで、俺に一番近づいた男──って、俺は何様だ。

 高校に入学してからは、ほとんど話していなかったので少し驚いた。


「そんなに焦ってどうした」

「焦るだろ。普通! お前がイジメられてるって聞いたんだが、ほんとか?」


 知られたくないことを知られて、自然とこめかみがピクリと動いた。

 ずっと俺の背中を追ってくれていた零には、絶対に見せたくなかった。


「ほんとだよ。でも、大丈夫だ」

「──嘘つけ」


 零は俺の手を掴んで、言った。

 そうだ──コイツは昔から嘘が通用しないんだった。

 誰よりも周りが見れているから、無理をするとすぐにバレたのは、今となってはいい思い出だ。

 それでも──


「嘘はついてない。本気で大丈夫だから、安心してくれ」


 突き放すように少しだけ強く言うと、零は歯切れの悪い顔をしてから、すぐに笑って見せた。


「まあよ、俺でよかったらいつでも話聞くからさ、あんま溜めすぎんなよ」

「ああ、助かるよ」


 仲間がいる。

 そう思えるだけで、俺には十分すぎるくらい心の支えになる。

 助けがいらないと言えば嘘になるが、俺のせいで誰かが巻き込まれるのは、何よりも耐えられない。


「そんなことよりさ──」


 普段よりも少し低い声がかけられ、俺は視線を上げた。


「お前! なんで俺の電話に出てくれないんだよォ!」

「は?」

「ここ一週間で、30回はかけてんのによォ!」

「さんじゅッ──マジで?」

「大マジだよ。履歴見てみ?」


 衝撃の事実に、慌てて履歴を上から一番下まで探した。

 だが、妃菜の8件と父さんの5件だけだった。


「そうだ。俺、スマホ変えたんだった」

「そうなの?」

「ほら。最新機種」

「ほんとだ」


 さっきまでのテンションはどうした。

 零はけろりと元通りになった。


「じゃあ俺のを追加してくれよ」


 こうして、また連絡先の欄に新しい名前が増えた。

 冬美に浮気された時は、絶望で何も見えていなかったが、こうして見ると少しは俺にも味方がいることが分かる。


「よーし! モヤモヤが晴れたし、ちょっと体を動かすか!」


 零はカバンの中からバスケットボールを取り出した。

 雰囲気からするに、俺は強制参加のようだ。


(サッカーじゃないだけマシか)


 そう思い、ベンチから立ち上がった。

 夏の強い日差しが眩しい。

 けれど、曇り空よりは好きだ。


「サッカーじゃなくていいのか?」


 零に限って、もうサッカーをやめているなんてことはないと思うが、少しだけ心配になった。


「いや、いいんだ。お前、サッカーしたくないだろ?」

「そうだけど……」

「それに、今サッカーしてもすぐに勝負が決まるからな」

「俺、もう昔みたいに動けないぞ」

「何言ってんだ? お前じゃなくて、俺が圧勝するに決まってんだろ」


 自信があるのはいいことだが、少しだけ寂しい気持ちになった。

 しかし、零とのバスケは最高に気持ちが良かった。

 きっと汗をかいたからだろう。

 自販機でスポドリを二つ買って、片方は零に投げる。


「ナイスキャッチ」


 少しだけ、昔に戻れた気がした。

 俺が一番輝いていた、あの頃。

 部活は上手くいき、可愛い彼女だっていた。

 今更懐かしんでも何も変わらないことは分かっているが、叶うのなら最初からやり直したい。

 龍生に壊される前から──


「響、すまん! 今から塾あるから帰るわ!」


 零は謝るように手を合わせて、走り去っていった。


(今度は俺がアイツの背中を追う番かもな)


 彼の優しさには、昔から助けられっぱなしだ。

 優しくて逞しい背中が、俺には眩しすぎた。

ここまで読んでくれてありがとうございます!

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