第27話:乾杯の後の友情
「こほん。それでは──球技大会ィ〜お疲れ様でした!乾杯!」
「「「乾杯!」」」
水樹の掛け声に、クラスメイトの声が重なる。
「くっそー。俺達が負けるなんて……そういっちゃんごめんなー」
「し、仕方ない……相手の組が強すぎた」
担任はわかりやすくご機嫌斜めだった。
サッカーは男女ともに一回戦負け――その事実が、表情にそのまま出ている。
「それにしても、水樹たちマジありがとな。お前らのおかげで、ジュース飲めて、最高だよ」
「どういたしまして。実は、僕は足を挫いていて、途中から足を引っ張ることしかできなかったんだよね」
「そうだったのか?」
「うん。平野がいなかったら、負けていたかもしれない……」
突然俺の名前が出された。
水樹に悪意はない。それでも、クラスの空気が一瞬凍りつく。
わかっていたことだ。別に傷つくなんてことはない。
「ひーくんのシュートかっこよかったよ〜!バシュッって、気持ちよかった!」
転校してきてまだ日が浅い恋春は、もう女子グループの中心にいた。
その輪の中に妃菜はいない。
まるで、最初からいたのが恋春だったかのよう。
「平野、球技大会のときはありがとな。おかげで恥を晒さずに済んだよ」
「そう言えば――気になる子に、見てもらいたかったんだっけ?」
「しーッ!声が大きいわ!」
「大丈夫だって。誰も俺が話していても、聞かないよ」
「……」
茶化すように言うと、水樹の声が途切れた。
笑ってもらって構わない――だから、話に出した。
「そのことなんだけどさ――」
「ん?」
「僕は今の状況、納得いかないよ!」
「自分で煽っておいて?」
「あっ……それはごめん」
(やってしまったーッ!)
また茶化そうとしては、空回る。
気まずい空気が、俺たちの間を流れた。
それでも、我らが学級長は引き下がることはなかった。
「デマだよね?」
確信じゃない。確認でもない。逃げ道を残した問いだった。
「何が」
「言わなくてもわかってるでしょ――菊池さんのことを、ストーカーしてたって話だよ」
「そうだよ、デマだ」
「だったらどうして――」
水樹は言いかけて、何を思ったのか口を閉じた。
気づいたのだろう――噂が広がってすぐに、俺が誤解だと、否定をしなかったのかを。
「僕に……なにかできることはない?」
「逆に何ができるの?」
我ながら面倒くさい返しだと思う。
それでも、水樹がこれから言うであろうことを、なんとしてでも阻止したかった。
「友達に――そうだ。僕と友達になってよ」
「友達だァ?この歳でそんな小っ恥ずかしいこと言えるの、お前くらいだろ」
突き放すように言った。
それなのに、水樹は真っ直ぐな目を向けてくる。
「確かに、こんなことは僕にしか言えないかもね。でもさ――」
(やめろ……それ以上言わないでくれ)
「それは他の人のことでしょ。僕は、平野を助けたいと思ったし、君ともっと仲良くなりたいと思ったから、提案したんだよ」
「俺と仲良くなっても……なにも返ってこないよ」
「僕はそんなことまで考えられないかな。だって、頭悪いもん」
「嘘だ」
「うんん。僕がバスケの推薦でここに入学したのは、取り柄がそれしかなかったからだし」
なんの躊躇もなく、自分の弱みを曝け出す水樹が眩しかった。
俺なんて、それが欠けててサッカーを辞めたまであるのに。
「言い返せない?だったら、友達になってもいいってことだよね」
「どうしてそうなるんだよ」
「よろしくな、平野」
都合の悪いことは、まるで聞こえていないようにスルーした。
優しく微笑んで出された手を、俺はダルそうに掴んだ。
――少しだけ嬉しかった。そんな感情は決して口に出さない。
水樹瀬名――彼こそが、俺が高校に入学してから三ヶ月目にして、初めてできた同性の友達だった。
「お前らー、楽しんでるところ申し訳ないんだが、来週の試験大丈夫なんだろうな?」
その途端、お祭りムードが消えた──まるで元からなかったかのように。
(最悪だ、忘れてた……)
妃菜と目が合った。
会話はなくてもわかる。あれは何も勉強してない顔だ。
このままでは冬美の思うツボだ。
しかし、この時はまだ知らなかった──
裏で動いている奴がいるなんてことを。
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