次回
背後でゴトッと音を立てて、灰皿が絨毯の上に落ちた。理事長はそれを一瞥すると、デスクの上にある電話のコールボタンを押した。
「――私です。今すぐ理事長室に」
理事長が受話器を置いて数秒としないうちに、扉を開けて教頭が姿を見せた。
「これを処分しておいてください」
理事長は床に転がっている男の死体を一瞥して告げる。
過去にも何度か殺意を抑えられない生存者がいた。そのたびに、こうして始末してきた。逆らわなければ殺されずに済んだものを――愚かな。
そういう点では、鏑谷先生や東城先生は賢かった。彼らは決して逆らわず、デスゲームで生き残ることだけを考えていた。彼らのような都合のいい駒を失ったのは少々残念だ。
「かしこまりました。すぐに手配します」
教頭はそう言って頭を下げた。
「――理事長。現在の待機教師および待機生徒は、それぞれ三百六十五名と千百五十一名となっています」
デスゲームで毎月のように死者が出る絹白学園は、通年で教師や生徒を募集している。待機教師とは、この絹白学園で働くことを希望し、採用面接の順番を待っている教師たち。そして待機生徒とは、他の高校に通っているが、絹白学園への転校を希望している生徒たちのことである。
絹白学園は全国屈指のお嬢様学校。ブランドや待遇に惹かれる教師や生徒は腐るほどいるのである。
「次はどのような基準で採用致しましょうか」
「いつも通りランダムで構いません。面接をして、目立った問題がなければ合格で。どうせすぐに消える駒なのですから、時間をかける必要はありません」
「かしこまりました」
「――あ、待ってください」
部屋を去ろうとしていた教頭を呼び止める。
「教師の採用に一つ基準を設けることにしましょう。今回はなかなか楽しませてくれましたからね。――この学園の生徒に知り合いがいる教師を、優先的に採用してください」
教頭は承知の言葉を述べて、部屋を去っていった。
一人になった部屋で、理事長は笑みを浮かべる。
「次はどんな面白いドラマが観られるのか――楽しみですね」