休息
「――どうやら行ったみたいだな」
東城先生が言った。
将人は安堵の息を吐いた。どうやら唯菜たちに見つからずに済んだらしい。
「随分と話し合っていたみたいですけど、彼女たち、何を話してたんですかね」
将人たちのいる三組の教室は締め切ってあったため、話の内容までは分からなかったのだ。
「さあな。あたしたちがどこにいるのか、相談でもしてたんじゃねえか。見当違いの方向に行っちまったみたいだが」
東城先生はにやりと笑う。けれど、その笑みには余裕が感じられなかった。
「大丈夫ですか」
「心配するな。このくそったれのデスゲームをクリアしたら、真っ先に病院に行くさ」
「俺も付き添いますよ」
「ああ。そのときは頼んだぜ。この怪我じゃ、病院に着く前に野垂れ死ぬかもしれねえからな」
冗談のような口調で言っているが、実際に病院へ一人で行こうとしたら、本当に道端で倒れてしまうのではないだろうか。
将人がそう思ってしまうほど、東城先生は辛そうだった。
――五時になったら、本当に戦いに行くつもりですか?
将人はその言葉を呑み込んだ。将人が何を言おうとも、東城先生は「行く」と答えるだろうから。
代わりに、将人は別の言葉を口にする。
「今はゆっくり休んでください。五時になったら起こしますよ」
「そうか。だったら休ませてもらう」
東城先生は目を閉じた。背を壁に預け、床に腰を下ろしたままの姿勢だ。片膝を立てているのも相変わらずだ。何かあったときに素早く動けるようにだろう。
将人は近くの席に座って、ぼんやりと教室の前にある掛け時計を眺める。
デスゲームの結末がどのようになるのか、全く想像もできないまま、時間だけが過ぎていった――。