そして輪廻転生へ(最終章)
オレはボサツに言った。
「勉強になったよ……愛し愛されるということがどういうことなのか、よく分かった気がする。ちゃんと誠実に生きることができれば性欲がいかに素敵なものかもよく分かった。オレの人生も、そんなに性欲を否定しないで生きてみたかったな……」
ボサツが言った。
「そうですか……やはりオレさんは自分の人生をやり直してみたいですか?」
オレは言った。
「うん。オイゲンの人生を観たら、ますます自分の人生をやり直したくなったよ。色々なことにチャレンジしたかったよ」
ボサツが言った。
「素敵な人生を傍観したらこうなることは分かっていました。予定どおりです。私たちがオイゲンの人生を観ているあいだに、私の師匠、ニョライ2501先生があなたの人生をやり直す準備を整えてくれました。私ではこういうことはできないのですが、ニョライの手にかかれば簡単なことなのです。やってもらえるかかなり微妙なところだったのですが、頑張って私からお願いしたらOKが出ました。もう準備OKと言われました。では、あなたはあなたの人生に戻ってください。さようなら」
オレは言った。
「ボサツ、ありがとう」
ボサツはオレを慈しむまなざしをして微笑んだ。
朝起きると、股間が固かった。いつもどおりだ。うんうん、オレは今日も元気なようだ。自分が健康なことが素直に嬉しい。
朝食を食べ、着がえて七時半に家を出て歩きで駅をめざす。
その途中でスマフォに通知が来た。忘れ物でもしたかな? と思ったら昨日SNSでつながった川本さんだった。
『おはようございます。いま電車です。西宮さんと学校でお会いできるのが楽しみです』
オレは心底嬉しくなった。すると、なんか股間が気持ちよくなった。そうか、初めての恋愛かもしれないから股間も期待をしているのか。体は正直だなぁ。オレの体は素直にできているなぁ。でも今はまだ理性をきかせるべき時だ。川本さんとはまだ恋愛でさえないのだから。
オレは歩くのをやめて、空を見た。青い空と白い雲が美しかった。思いっきり息をはいてから、体の力を抜いて自然に息を吸った。
目の前をものすごい速さでチャリのオッサンがかけぬけた。いつものようにスマフォを見ながらイヤホンしてる。前髪がかする勢いだった。あいつやべーな。何とかしたいな……どう考えても違法だし、誰に相談すればアイツを通報できるだろう。警察の人に何とかしてもらいたいな。オレは真剣に考えた。
駅へ着いた。電車が来た。座れたので、オレはスマフォをポケットから取り出した。そして、川本さんに返信を打つことにした。
『おはようございます。いまオレも電車に乗りました。川本さんと学校でお会いできるのが嬉しいです』
そしてオレは川本さんのメッセージにイイネをつけた。オレはスマフォをポケットにしまって周囲を見渡した。
みんなスマフォやタブレットに向かって必死に何かをしている。
オレは向かいの窓の景色が流れていくのをボーッと眺めた。田植えされた田んぼがすっかり緑色になっているのが見えた。
なんだろう……何もかもが大切なような気持ちがしている。
オレは誰に感謝の心を向ければいいのか分からないままに目を閉じた。
すると、うしろの席の川本さんの顔を連想した。
もう……オレは川本さんが好きなのかな。まだ性格とかよく知らないのに、我ながら気が早いなぁ……まあでも、つきあわないと性格とか分からないよね。オレはちゃんと性格を知りたい。興味と関心がある。そのためにはつきあう必要がある。となれば……まぁ、徐々に心の距離を縮めて、お互いに乗り気だと分かればつきあえばいいんだろう。
おかしいな、なんで俺はこんなに余裕があるのだろう。好きな人ができて性格が変わったのかな。
(終わり)




