4 呼び出し相手と上司
「やっぱりあんたか…アンリエッタさん。」
「フンッ。吸血鬼に名前なんて呼ばれたくはないわね。」
「あっそ。じゃあ、何か用か?少女A。」
「貴様…。」
「なあ、お互い見なかったことにしようって昨日言っただろ?」
「そんなことできるわけないでしょ、貴方たちは害悪。主もそうおっしゃっている。」
「聞く耳なし…か…。じゃあどうする?ヤるのか?」
「ええ、もちろん。キャっ!?」
体勢を崩し、その場に転がるアンリエッタ。
一瞬のうちに魔術が起動したのだ。
「はい、おしまい。」
「貴様…。」
「おいおい、睨まないでくれよ。俺はただ襲い掛かってくる奴を拘束して身を守っただけなんだから。」
「卑怯者っ!!」
「なんとでも。…というか、昨日いきなり斬りつけてきて、今だって俺が魔術を使わなかったら、先に撃ち込んできていたお前にそんなこと言われる筋合いないと思うんだが?」
「……うっ、うるさいっ!!吸血鬼のくせに!!」
「今の話に別に吸血鬼とか関係ないだろ…まあ、いいけど。…しかし、どうしたものか…。」
転がるアンリエッタ。今、彼女の拘束を解けば、また昨日の二の舞だろう。
根気よく説得を続けるか…はたまた…。
「……。」
しかし…そういえばコイツ、スカートだったな…はあ…。
「み、見るな!!この変態!!」
どうやらアンリエッタは永人の視線の先に気がついたらしく、顔を赤らめ、そんなことを言ってくる。
ホント別に見たくて見たわけじゃないんだけどな…水色の縞パンなんて。
「クッ…殺せ。」
おいおい、お前はどこぞの姫騎士か?
って…。
…まあ、冗談はこの辺にして…。
「…おい、いい加減出てこい。ブチ殺すぞ、何も知らないガキなんてぶつけてきやがって。」
永人は相手に向かって一直線に殺気をぶつけた。
カハッ!!
「っ!?」
なにもないところからそんな音が聞こえた。アンリエッタはおそらくそんなふうに思ったのだろう。驚き目を見開くと、続く光景に声を漏らした。
「な、なんで…。」
それは当然だろう。なにせそこにいたのはアンリエッタの上司である人物…行燈ヒルマだったのだから。
「ハアハアハア…こ、これはこれは第一…「は?」…ビクン…し、失礼致しました。ふ、普羅様、ぶ、部下がご、ご迷惑を。」
普羅…様?
アンリエッタの口がそう動いたように思う。
アンリエッタのそれはあり得ないものを耳にしたかのように言葉にはならなかった。
「ご迷惑?けしかけておいてよく言う。」
「いやはや、それは誤解でございます。私はなにも…。」
「俺のことを伝え忘れたとでも言うんだろ?わかりきったこと言うなよ。どうせ俺のデータ集めに役立てもとでも思っていたんだろ?つまらない真似してんじゃねぇ…潰すぞ。」
「ハアハアハア……は、はははっ。」
…笑って誤魔化しやがった。まあ、いい。とりあえず…。
「昼行燈、お前。このガキの上司なんだろ?ならやることはわかるな?」
「は、はい!それはもちろん!!」
「じゃあ、さっさとやれ。」




