第六話 また、お前ですか
アオノ自己紹介で終わり、明日以降の予定を聞いて、今日のところは終了した。
明日の午前中は学院内を案内してもらう。昼食を食べた後は屋外魔法練習場で魔法適正を調べるようだ。なんでかなと思ったが、この適正審査で秘められている魔法才能を調べるためだった。
ちなみに実習服は無い。この制服が既に付与魔法によって高度な防御力を備えていると言われているらしい。もし服が破れても学院からまた無料で支給される。それと学院にある食堂と授業料も無料。王国にとって有望な人材を育てる為に年間予算として計上されている。だが、卒業後に国に仕える義務は無いが、事実上は国に仕えるらしいが。どうせ、勝利の神とかが、勝つために全力を注げとか言っているのだろうか。まあ、その分、私みたいな平民にとってはラッキーだが。
私はホームルームが終わり、今日から寮で暮らすため、寮に向かおうとした。
「ドールネーヴェルさん」
ハートベクト様に呼び止められた。後ろにはアールノット様もいるし。キリアとアオノの緊張しているし。
「ん?なんですか?」
「今から、寮に向かわれますよね」
「そうだけど」
「私とカヨラも今日から寮で暮らすため、ご一緒に向かってもいいですか?」
そんなことか。
「いいですよ」
「ありがとうございます。ハーズトロコモアさんとフロウテリナさんはどうしますか?」
今度はキリアとアオノにも言っているし。
「は、はい。ご一緒させていただきます」
「お、同じ」
「よろしく「よろしく〜ハーズトロコモアちゃん、フロウテリナちゃん」お願いします。カヨラ!!」
「ごめんってば」
突然、キリアに袖を掴まれた。
「どうしたの?」
「アインって、ハートベクト様とアールノット様と知り合いなの?」
「うん、そうだね。友達かな」
「そうなんですね」
キリア、何その凄いみたいな目はやめて、恥ずかしい。
「フロウテリナちゃん、可愛いね」
「ひぃ!」
アオノが私に抱きついてきた。
「やめてあげてください。アールノット様。アールノット様は貴族なんですから」
「チェ、わかったよ」
なんでそんなに悔しそうなんですか。
「それにしても、ドールネーヴェルさんは、フロウテリナさんのことを下の名前で呼ぶのですね」
「ん?キリアも呼んでますけど?」
「そうですか、わかりました」
何か機嫌悪いのかな、ハートベクト様?
「とりあえず、寮に行こうよ」
私達は、寮に向かうために教室を出た。
「おい、見つけたぞ!」
誰かが声を上げている。
「おい、無視をするな、白銀髪の貴様だ」
白銀髪の人ね。誰のことだろうか。
「アインのことだと思いますよ」
「えっ!!私?」
「そうだ、貴様だ!」
そういえば、こいつ、試験で絡んできたな。
「案内板にぶつかった人」
「貴様、無礼だぞ!」
「コーヴィアノさん、学園では、権力を振りかざすのは厳禁ですよ」
「黙れ、同じ伯爵家だからって調子に乗るなよ。ハートベクト」
同じ伯爵家でも、ここまで違うのか。凄いな。
キリアとアオノが私の後ろに隠れている。それぞれ腕をギュッと掴んでいる。
「いい加減にしろ」
「ぱ、パーソナル殿下…………」
ついに王子様の登場だ。やっちゃえ、やっちゃえ。
「コーヴィアノ、この学園では権力を行使することは厳禁のはずだ」
やっぱり、バカでしょ、こいつ。尊敬できる要素がない。
「ですが、パーソナル殿下……………あの者は、試験で不正しております」
「不正だと」
「はい、私がSクラスではなくて、Aクラスであり、あの者がSクラスであるのです。それには、不正したに違いありません」
「嫌、それはあんたが弱いだけだろ……………」
「貴様!」
あ、やべ、声に出てた。しまった。
「はあ……………コーヴィアノ、本当にこいつの不正を疑うのか?」
「はい」
「なら、いい方法がある」
「それは…………」
嫌な予感がする。
「決闘だ!」
ほらやっぱりそうだよ。嫌だな。
「おい、貴様!俺と決闘しろ!」
「えっ?嫌ですけど…………」
「はぁ?」
私が普通に断ると、周りから何言ってんのみたいな視線で見られた。いや、別に私に何もメリットがない試合なんてやる必要がないからね!
「おい、ドールネーヴェル」
「何でしょうか?パーソナル殿下」
「決闘しろ」
「何ででしょうか?」
「Sクラスの意地を見せろ」
要するにSクラスとAクラスの差を見せるために、決闘させるってことか。この王子様、案外腹黒いな。流石に王子様のことは断れないしな。
「いいですよ」
「なら、決闘の時刻を今日のこのあとでいいな」
「私はいつでもいいですよ」
「はい、殿下」
―――――――――――――――――――――――
こうして、私は決闘を受けることになったとさ。
何なんよ。コーヴィアノって言う奴、タチ悪すぎる。別にいいじゃんか、試験のことなんてさ。私は気にしてなかったのにさ、ここまで巻き込みやがって。王子様もタチが悪い、なんですか。この量の観戦者は、戦いにくくすぎる。
「それでは、今回、決闘をするお2人をお呼びいたします」
もう、始まるのか………
「まずは、1年Sクラスのアイン・ドールネーヴェルです」
あ、呼ばれた。私は、闘技場の上に立った。相変わらず人が多い。これだと、本気で戦えないよ。
「続いては、1年Aクラスのクーヨン・コーヴィアノです」
闘技場に登ってきた、コーヴィアノの雰囲気、こわぁ。何かしたのかな?
「ルールは簡単、相手を気絶状態にするか、降参させるか、場外に追い出すことだ」
簡単だな。降参か、やったら、絶対にあの王子様に言われるから、無理だな。あいつは降参はしないと思うし、気絶させるか。いや、場外に追い出そうか。
「では、両者異論は?」
「ありません」
「ない」
「では、スタート」
『ウォーターボール』
初っ端から、放ってきた。やっぱり、あいつバカだろ、何でわざわざ自分の得意の魔法を教えてくれるのだろう?
「ほいっと」
私は軽く避けた。まだ、反撃しない。
「チッ『ウォーターランス』」
「ほいっ」
かわす。私の目には遅すぎる。
『ウォーターランス』『ウォーターランス』『ウォーターランス』
ヤケクソじゃん。まあ、当たらないけどね。もうこれぐらいでいいか。私は距離を縮めていった。
「これでお終い」
おもっきりお腹を殴った。コーヴィアノは場外まで飛んでいった。会場が静かになる。
「し、勝者、アイン・ドールネーヴェル」
私はその場でお辞儀して、闘技場から去っていった。去るときに一瞬、王子様が視界に入ったが、悔しそうな顔をしていた。やっぱり王子様の目的は私の雷の力か。残念。
でも、成功してよかった。私の右手の周りに時間を遅らせる空間を作り、その中で拳の時間を早めて高速で動かして、殴る瞬間に全て解除して殴った。周りからは、ただ殴ったようにしか見られないから一石二鳥だ。
「お疲れさま、アイン」
「お…疲れ………アインさん」
私を出迎えたのは、キリアとアオノだった。あら、ハートベクト様とアールノット様はどうしたのだろうか。
「ありがとう、キリア、アオノ。ハートベクト様とアールノット様は?」
「ハートベクト様とアールノット様なら…………」
「おーーい」
遠くからアールノット様が手を振りながらやって来た。その後ろには、ハートベクト様がいる。
「はい、これ」
「これは?」
アールノット様から飲み物を渡された。
「オレンジジュースだよ〜。売店で売っているの」
「お疲れさまです。凄かったですね」
「ありがとう」
ハートベクト様は膝に手をついていた。どうやら、アールノット様に走らさせられていたようだ。
私達は今度こそ、誰にも絡まれないように寮に向かった。
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