王子のラブレターと作戦会議
王子は「次回会うのが楽しみです。」というキラキラスマイルで使用人たちの株をばくあげし帰っていった。
(なんか、失敗した……みたい?)
「アルセーラお前は…………。」と頭を真っ赤にして怒るお父様のお小言を聞きながら私は頭の中で作戦を考える。
(見た目ヤバイぞ作戦も、趣味ヤバイぞ作戦も失敗………どうするべきか………。)
「だいたいお前は……そんな風に相手をばかにする子じゃなかっただろう?」
「べつにばかになど………。」
「とにかく、今日の件でおそらく王子は次のお相手をお探しになるだろう………。」
「そうだといいんですけど。」
数日後、王子の使者が私のところに王子からの手紙を持ってきた。
【愛しいアルセーラ………。婚約の申し込みのため会いにいこうと思っていたのですが、父の体調が優れず公務に同席することとなってしまいました。】という書き出しで始まったその手紙には会いたいとか愛しいという言葉が繰り返し綴られていた。
(これじゃあまるで恋人に送るラブレターじゃない………どうしよう。)と部屋で落胆していると扉の向こうから使用人の声が聞こえた。
「お嬢様入ってもよろしいですか?」
「ええ。」
扉をあけて入ってきたのはイレーヌとマリアだった。
「どうしたの?」
「旦那様から王子にお返事を出すようにとのことで……。」
とマリアは喋りながらレターセットのようなものを取り出した。
「えっと……。」
「お嬢様……手紙にはなんと書いてあったのですか?」
「それが……」と私は二人に手紙を見せた。
「まぁ………公務におわれる日々の中で君のことを思い出さない日はない。君に会いたいアルセーラ………ですって。」
「よくそんなこと書けるよね。」
まるで吟遊詩人のようなその文章を書くなんて、学生時代国語の評定3だった私には無理だ。
(どうしたら………嫌われる?)
「イレーヌ………嫌われるにはどうしたらいい?」
「嫌われる……ですか?誰に?」
「王子に……。」
「何でですか?」
「王子と結婚したらいつかは王妃になるのよ勤まると思う?」
「ええ、お嬢様は誰にでもお優しく良民にもすかれていますし、努力家ですから大丈夫かと……。」と真っ直ぐ私の目を見て答えるイレーヌには私はありがとうと答えながらため息をついた。
「べつに嫌われなくてもいいのでは?」とマリアが口を開く。
「マリア………私は王妃になりたくないのよ。」
「ですから病気や別の理由を作ればいいのでは?」
(………!その手があった!)と私は心のなかで不安材料でしかなかった、結婚と処刑という二文字は砂のように崩れて消え去った。