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二人Ⅰ
わたしはてる。祖父に名付けてもらった。祖父以外はわたしをテルと呼ぶ。
あの日を境にわたしはあまり祖父母の家に寄り付かなくなった。
しかし子供の抵抗は空しく、両親の都合で預けられることが増えていった。
そんなある日祖母が話しかけてきた。
「てるちゃん、こっちきてお菓子食べましょう、これ食べたことないでしょう。」
わたしは祖母を見た。
「ふふっ、あなたの言ってた通りだわ。かわいいてるちゃん、お菓子は好きよね?」
祖母は厳格な祖父とは正反対の上品で穏やかで、言葉を選ばないのであればフワフワとどこか現実離れしたメルヘンな性格をした人だった。そんな祖母が自力で気が付くとは言い難い。わたしはお菓子を食べ終えた後すぐさま祖父のもとを訪ねた。