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拝啓  作者: Say
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むかし


 幼少期の私は周囲の大人が手を焼くほどのお転婆で甘えん坊だったらしい。男の子と一緒に虫を取りに行ったり、泥だらけになるまで遊んだりケンカをして大人に叱られたりしていたと聞いた。

 その頃は家族と暮らしていて、祖母は祖父と二人暮らしだった。家が近所なためよく遊びに行き、悪戯をしては祖父に怒られていたことは覚えている。

 そんな普通でありふれた幸せな日々はある日唐突に終わりを告げた。子供の頃の私はなにもわからないまま周りに流されて、子供だからと配慮されなにもわからないまますべてが終わった。

 不幸は続くものですこしして祖父も亡くなった。悲しむ祖母の背に当時の私は何を思い考えたのかは覚えていないが、何かを伝えたのだろう。気が付くと私と祖母の二人暮らしが始まっていた。

 慣れない二人暮らしは合わないことも多く、喧嘩ばかりしていた。喧嘩といっても私が一方的に癇癪を起し祖母が優しく諭すといったものだ。子供舌の私に和食メインの祖母の料理は苦痛だったのだ。

 しかしそれも長らく一緒に暮らすと無くなっていき二人で穏やかに暮らしていた。学校へ通うようになっても祖母の家から通学し家族とは一日一回会う程度となっていた。学校では友達もでき、勉強は苦手ながらも楽しい日々を送っていた。


 学生時代、友人とこのような会話をした。

「テルって一人でいるとき顔怖いよね~、怖くて話しかけれない。」

『え、一人でいるときにニヤニヤしてる方が怖くない?そっちの方が怖くて話しかけれないわ。』

「ちがう違う。ふとした瞬間の真顔って言うのかなぁ、感情が無くなったような顔をするときがあって、その時だけすごく怖い。小さいころからテルのこと知ってるけど、そのころよくその顔してたから怖くて友達になれなかった。でも脱走事件は面白かった。」

『誰の話よ、それ。私はいつだって愛嬌たっぷりな可愛い子よ。それに仮に私だとして今無事?友達だから問題ないでしょ。脱走事件もいい思い出よ』

「まぁたしかに~。懐かしい昔話ってことですな。」

 友達と会話しながら私は何とも言えない感情を抱いていたことを私は今でも覚えている。

 幼少期の記憶というのはほとんどの人がおぼろげな記憶しかないだろう。私もそのような物だと思っていた。しかし昔ながらの友人や家族と話すと彼らの中にいる思い出の私は本当に私なのだろうかと、だれか違う人と間違えていないかと感じてしまうのだ。だってその記憶は私の中になく、その脱走事件も私は覚えていないのだから。このようなことが何度もあり、そのたびに私は私の知らない何かが私に成り代わっているようで恐ろしかったのである。


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