傍観
また眺める日々が始まった
あの子が起きてすぐ気付いたが、わたしの声は届かず、記憶もないようだ。色々な環境が変わっていたあの子にとっては驚きの連続だろう。
祖母も戸惑ってはいたがすぐに‘‘テルちゃん‘‘と呼ぶようになった。
祖父はこれを見越していたのだろう、祖父の先見と祖母の懐の広さを知った。
なぜあのタイミングであの子が目を覚ましたのかは分からない。
しかしあの子は身も心も日々成長していった。記憶がないことを恐ろしく感じてしまうこともあったが、持ち前の前向きさで適応していった。
本来はあの子の人生だ。わたしはイレギュラーな存在であり認識されたことがおかしいのだ、そう考える日も多くなっていった。
社会人となり家を出たとき、あの子は祖母の前では強がっていたけど一人で泣いていた。そんなあの子に寄り添うことはできなかったけれど、その気持ちは一番近くで感じ取れた。
働くということ大変で、心がすり減っていくこともあったがその中でも楽しみを見つけ充実した毎日だった。
そんなときに祖母の病気が発覚したのだ。その知らせを聞いた日夢を見た。
水滴が水面にゆっくりと落ち、波紋が広がっていく。砂時計は落ちていない。