あの国要らないので、魔王様滅ぼしましょう。番外編
あの国要らないので、魔王様滅ぼしましょう。の番外編です。
なんとなく書きたいなと思いつつのんびりしてたらかなり経ってしまいました。優しい目で見て頂けると幸いです。
ここは魔王国。
人間国のとのいざこざも治まり新国王になってから今では少しづつ
物流など交流が深まっている。
そんな魔王様は部屋では頭を抱えていた。
「うーむ」
「先程から何をうねっているのですか?魔王様」
その姿に声を掛ける魔王軍副団長アイロス
「いや、その…だな」
「魔王様は人間国の夜会にご招待されたのです」
「それの何が不安なんですかー?」
軽い口調で聞くのは団長ロイド
「人間国では夜会は基本パートナーを付けて行くのがマナーですが魔王様はその御方がいらっしゃらないので困っているそうです」
「えー、そんなのそこら辺にいるお嬢様にお願いしたらいいんじゃないのー?」
「いえ、魔王様の場合下手に頼むとその方に誤解が生まれる可能性がありますので選別に時間がかかっているのです」
「魔王様がパートナーに選ぶと自分がお嫁さんになれると勘違いするバカがでるってことだねー!」
「団長もう少しオブラートに包んで下さい」
「えー?本当のことじゃーん」
パクっと机の上にあるお菓子を食べる。
「中々難しいんです」
「因みにどんな条件なんですか?」
「そうですね、人間にも理解があり下手に勘違いせず魔王様の隣にいても見劣りしない見た目で、なにを言われても鼻で笑うぐらいできる肝の据わった方……ですかね」
「……それ難しすぎですよ」
「そんなのいたら既に魔王様の隣にいるって!」
あはは!と笑い転げるロイド。
「そうなんですよね。まず魔王様と隣にいても見劣りしない容姿という時点で中々…」
「ふーん」
「なんでしょうか?ロイド様」
にやにやした顔でシンラを見る。
「ねぇ、補佐官くんそのパートナー探し俺に任せてくれない?」
「構いませんが」
「ロイド誰か宛があるのか?」
「あるといえばありますかねー?まぁ!任せて下さーい」
「……何か恐ろしい事がおきそうです」
「……俺もだ」
当日になり出発時間になるもパートナーになる女性が見当たらない。
「……ロイドのやつどうする気だ?」
「そう言えばシンラ殿も見当たらないですが」
「あいつも朝から見当たらないな」
するとそこへ
「魔王様ーお待たせしましたー」
のんびり歩いてくるロイドの姿…とその後ろを歩く女性
「団長そちらが魔王様のパートナーですか?」
「そうそうーこの子ー」
団長の後ろから出てきた女性。それは魔王様にも負けない美しさであった。
魔王様と同じ艶のある黒髪を後ろにすっきりと纏め。
首からは黒のレースが手首まで覆い白い肌によく合い赤い口紅と相まって色っぽさまで感じられる。
引き締まったクビレから下はふんわりとしたドレス。
「そ、そちらの女性は?」
見たことのない美しい女性にドキドキする魔王。
「どうですかー?魔王様ー?」
「とても美しい方ですね、どちらで見つけられたんですか?団長」
「でしょでしょー!綺麗だよねー!」
「うふふ、それはありがとうございます」
その女性が笑うと少し冷たい印象から花が開いた様な可憐な雰囲気に変わる。
「う、うむ。今日はよろしく頼む」
「はい。」
その様子を見たアイロス。
「あれ?」
「どうしたのー?アイロス」
「もしかして……シンラ殿ですか?」
「え、」
固まる魔王。
「いえ、その見た目は確かに分かりにくいですが声と笑う雰囲気がどうも見た事ある様な気がして…」
「え、」
「すごーい!!アイロスせいかーい!!」
パチパチパチと拍手をする
「あらすぐにバレてしまいましたね」
花の様に笑っていた笑顔が一瞬で氷に変わる。
「アイロスって勘がいいからすぐバレるんだよねー」
「団長で鍛えられましたからね」
「どういうことだよー」
ブーブーと文句を言うロイド。
シンラの隣でさっきから動かない魔王に声を掛ける。
「魔王様?どうされました?」
「………お前シンラなのか?」
「はい、そうです。お気に召しませんでしたか?」
「いやそういう事ではなく…」
心無しかガックリしている魔王
「あぁ!魔王様今の補佐官くんタイプ過ぎてショックなんですよねー!」
「おまっ」
そう、今のシンラは魔王の好みドンピシャだったのでかなりドキドキしたのだが男だと分かりショックを受けていた。
見た目でこんなに女性になるもんだなと感心しシンラを見ていると……
「……申し訳ありませんがそちらの趣味はないのです」と言って腕を使って身体を隠す。
「我も無いわ!!!」
アイロスが呆れながら
「というかいくらパートナーがいないとはいえ女装した男性が行くのはどうなんですか?」
「まぁ、バレなきゃいいでしょー!」
「そんな無責任な…」
「大丈夫、大丈夫だって補佐官くんだよ?心配ないよ」
「全く知りませんよ…」
「ってことでいってらっしゃーい」と馬車に押し込まれ出発する事に向かい合わせに座っているがやはり慣れないドレスに少し動きづらい。
「お前よく了解したな」
「いえ、何やら楽しそうでしたので」
「全くお前ら2人揃うとろくな事がないな……」
「私は魔王様の好みが知れたので今後の参考になりました」
「…………」
お城では既に貴族などたくさんの人が集まり盛り上がりを見せていた。
その中にひっそりと入ったものの魔族は魔王様だけなのですぐに周りのヒソヒソ声が聞こえてくる。
友好関係を結んだとはいえ長年の縺れは中々解く事はできない。
「はぁ、魔王様この貴族達の口を塞ぎましょうか」
「お前が言うと冗談にならん」
元々人前はあまり得意ではない魔王様は挨拶したらさっさと出るぞと王様の所に行く。
「アルータ国国王この度は招待頂き感謝する」
「こちらこそご参加頂きありがとうございます」
「いや、友好関係を築く相手とこうして会話をすることは大切だからな」
「そうですね…ところでそちらの女性はもしや魔王殿の奥方ですか?」
「あ、いや」
本来の姿と違うシンラを紹介しても良いのか…と思っていると隣で伏せていた目線をしっかり上げたシンラが国王陛下を見る。
「国王陛下にご挨拶申し上げます。魔王様のパートナーを務めさせて頂いております。シンラと申します」
「シンラ?…もしやお主あのシンラか?」
気づかれてるじゃねーか。
「はい。お久しぶりでございます国王陛下」
「はは!そうか!お主には幼い頃世話になったしなこうして姿は違う様だが会えて嬉しいよ!」
「有り難きお言葉です。私の後ろを着いて歩いていた殿下がこうして立派な国王陛下になられて私も嬉しいです」
「む、お主には口止めをしておかないと私の恥ずかしい過去が暴かれてしまうな」
楽しそうに会話する国王とシンラは昔からの顔なじみだったようだ。
道理でシンラが今の国王は相応しいと言うのかが分かった。
確かにこの王になってから無駄な争いもなくなったし魔族と人間との交流も少しづつ増えて物流が良くなっている。
内心嫌々だったこの夜会も来たかいがあったな。
うんうん、と思っていると…
「そうか、その姿は魔王殿の好みなのか!」
「はい」
「ん?」
「そうか!シンラの今の姿は中々の美女だから魔王殿は美人系が好みなのだな」
「そうなのです。私も少し危機感を覚えております」
「おぉぉい!!」
こいつなんて事を口走っているんだ!
「誤解される言い方をするな!」
「魔王様照れなくても良いのですよ」
「照れてないわ!我が変な性癖だと思われるだろうが!」
「ははは!魔王殿のシンラは仲が良いのですね」
「いや、仲がよいというか」
弄られているのだが…と思う魔王
「シンラは腕は確かだが中々癖が強いので少し心配してはいたのですよ」
「そうだな、軍の魔族には恐れられてるな」
「なんと!」
目をキラキラする国王。早くに即位したがまだ若い国王やはり年相応にこんな話の方が興味があるのだろう。
「笑顔で魔族を放り投げる姿は、魔王より魔王と言われている」
「シンラらしいなこの国の軍でもしていました」
こいつは何処にいても同じなのかと…呆れる。
その後、挨拶したら帰ろうと思っていたがせっかくなので少しのんびりしてから帰ることにした。
帰りの馬車では窓から名残りおしそうに街並みを見つめるシンラ。
「……戻っても良いのだぞ」
「はい?」
「元々は前国王があんなだったから国をでたのであって今の国王なら安泰だろう。お前の心配もなくなったなら魔族にいる必要もないのでは?」
「魔王様……そうですね。今のアルータ国は良い国になりました」
月の明かりがシンラを照らし姿も相まって神秘的な雰囲気が出ている。
「ですが私は戻りません。良い国になったからこそ私が戻らなくても大丈夫です」
「そうか」
「それに魔王様はお1人では心配ですし魔王軍でまだ試したい技もありますし」
「は?」
「魔王軍の皆様は頑丈で助かります。アルータ国の軍人は相手にならず力が発揮出来ずモヤモヤしました」
「………程々にな」
部下達思い手を合わせておく。生きろ。
馬車がガタガタと揺れながら国王との会話や久方の夜会、シンラの意外な姿など1日の出来事を思い出したまにはこんな日もいいものだと感じる魔王だった。
最後までご覧頂きありがとうございました!
次の話はいつ出来るのやらと思いつつ書き溜めています。