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羽柴秀樹

 ~回想~熱高入学式の二日前~

 大阪城本丸御殿六階にある自室で、羽柴はソワソワしながらある人物の到着を待っていた。

 「秀樹様、ただ今戻りました」

 羽柴が振り返ると声の先には人影はなく、代わりにPS5の箱が置かれていた。

 「でかした、猿飛!」

 箱を抱え、階段下の押し入れに入る。

 そこは羽柴秀樹の隠し部屋で、テレビと歴代PS、電源コードとコンセントがあった。

 文明を否定した西日本で電気が通っているのは羽柴秀樹の隠し部屋のみ。忍者の猿飛右助が主君の命で東日本とNAGOYAから科学を盗み出し、大阪城天守閣の屋根にソーラーパネルを設置して電力を供給している。

 いくら秀吉の嫡子としても、いやテクノロジーを拒否した秀吉の嫡子だからこそこの背信行為は許されるはずもなく、羽柴もそれを承知し誰にも知られないよう密かに東日本の娯楽に手を出しているのだ。ゲームだけで無く、断片的に科学やNAGOYAの文化をかき集め、勉強したり遊んだり、憧れ物思いにふけている。

 鼻息を荒くし、懐中電灯の明かりを頼りに羽柴は手探りでコードをつなぎ合わせ、主電源を押した。

 聞き飽きた笛太鼓とは次元の違う電子音、不細工に描かれる文人画とは別世界の美しき映像。至極、いとおかし――

 その瞬間、隠し部屋の扉が開き、者どもが羽柴に襲いかかる。

 「なっ!おい、何をする?!俺を誰だと思っとるんじゃ!」

 者どもは問答無用で羽柴を押し入れから引っ張り出して縄で縛り上げ、羽柴から離れる。羽柴の目の前にいたのは九百九十九代目豊臣秀吉だった。

 「親父殿!?待てまてえい!?違う違う!これは――」

 羽柴の叫びを尻目に秀吉は隠し部屋に入り、PS5とテレビを確認する。

 「このドラ息子!豊臣家の跡継ぎがなんたることだ!!今一度、信長様の元で鍛え直すがよい!!連れてけ!!」

 「はッ」者どもが一斉に返事し、羽柴を担ぎ上げる。

 「親父待てい!言い訳を聞けえ!信長様は勘弁してくれんか?!があああああ!――」

 


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