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セカンドインパクト

 「感情的な話はいらない。人類補完計画の継続のため、セカンドインパクト発射砲の建設を開始する」

 「ヘ!?ちょ、ちょっと待って!」

 「何だ?」

 「今、人類補完計画とセカンドインパクトって言った?」

 「お前には話しておくべきか……東日本の繁栄のために密かに遂行されている人類補完計画の全容を――」

 「違う!!パパは何も分かってない!人類補完計画とは、遙か昔平成に遂行され世界を救った計画なんだ!内容は不明なんだけど、現代人は人類補完計画の上に立っているんだよ!」

 「人類補完計画が平成から?何の話だ?」

 「セカンドインパクトなんて人間が発射していいものじゃない。十四歳の少年の神話をパパは知らないのか?」

 「知らんな」

 「そんなんで人類補完計画という名を使うな!少年達が流した血と汗と涙を、パパは踏みにじってるんだ!」

 「そんなものどうでもいい。改造手術を始める」

 家康の声に手術室のコンピューターが反応し、床や壁からロボットアームが生えてくる。それらは松平の身ぐるみを剥がし、松平は全裸にされた。さらにロボットアームは松平の下半身に狙いを定めたため、松平が慌てて大声を出した。

 「ストップ!!パパストップ!!」

 「何だ?」ロボットアームが停止する。

 「セカンドインパクト発射砲どこに建設する気?」

 「股間だ」

 「僕のチンコはどうなる?」

 「撤去する」

 「ふざけるな!簡単に言いやがって、それこそ小便とかどうするんだよ?!」

 「何も心配はいらない。生身が機械に置き換わって小便と射精とセカンドインパクトが遠隔操作で撃てるようになるだけだ」

 「嫌がらせじゃないか!これ人類補完計画じゃなくて人類股間計画だろ?」

 「何か文句があるのか?純金製だぞ?」

 「文句しかねえよ!本当に金玉にしなくていいんだよ!」

 「防御性能も大幅にアップし、男の弱点であるはずの股間が弱点でなくなる。最強の漢になれるのだぞ?」

 「お断りだ!そんなことしたら一生童貞卒業出来ないじゃないか!?」

 「何?童貞卒業してないのか?ナオが毎晩夜這いを仕掛けているのに?」

 (!しまった……!)

 松平は口を滑らせてしまった。自分が童貞であることもそうだが、ナオのことの方がより深刻だった。ナオは従者として、そして徳川四天王・井伊一族の務めで松平に毎晩夜這いを仕掛けている、はずなのだ。

 「改造手術を後悔しないようにお前が日本男子の平均童貞卒業年齢である十五歳になった三年前からナオに毎日夜這いを命じたのだが、ナオは仕事をしていないのか?毎晩激しい行為をしているという報告を彼女から受けているが、それは嘘なのか?」

 「(ぐ……このままだとナオが処罰される……)じ、実は僕がEDなんだ!でもそれがバレるのが恥ずかしくてナオに嘘の報告をさせた。悪いのは僕なんだ!」

 「お前はセカンドインパクトどころか、ファーストインパクトすら撃てないのか?尚更改造が必要だ」

 「セカンドンパクトってそういうこと!?二発目!?」

 「当たり前だ。徳川家の繁栄、日本の人口減少を食い止めるために、お前には男性器が二本必要だ」

 「増やすんかよ!わざわざ僕のチンコを撤去して二本建て直すの?!……はっ!まさか、平成に実行された人類補完計画とは、少子化を食い止めるために人類のチンコを二本にしたのか……?」

 松平はただでさえサイボーグ化したくない。当然、童貞・勃起不全のまま男性器を改造などもってのほか。それは人間として、男としての「死」と同じである。

 「童貞で勃起不全。最早価値なし!改造手術を再開する!」

 追い込まれた松平は最後の手段に出ることにし、力の限り叫んだ。

 「パパ!!一生のお願いがある!最後のチャンス、熱校に入学させてくれ!」

 「マツコに入学したいのか?」

 「熱校だよ!マツコってオカマ女装家専門学校じゃないか!熱校!信長様の学校だよ。今年からNAGOYA出身者以外の入学を受け付ける。つまり必然的に日本全国から超優秀な人材がそこに集まる。もしその学校で文武共にトップになれば、改造なんてしなくても現代で通用することの証明になるよね?」

 「お前は何も分かっていない。武力知略があるのは当然。天下統一にはカリスマも必要だ」

 「もちろん分かってる!……生徒会長になる!生徒会長になって学校統一して、信長様に認められたなら、改造手術は白紙にしてくれ!」

 「一番深刻なのはお前の勃起不全だ。それはどうするんだ?」

 「それも熱校で完治させる!彼女作ってヤリまくる!」

 「信用ならん。お前はナオに嘘の報告をさせたんだ。女に嘘をつかせればいとも簡単に」

 「確実な証拠を持ってくる。というより、パパの目の前で子作りする!女性と絡み合って僕が勃起する瞬間と、ファーストインパクト、セカンドインパクト、いや、サードインパクトまで発射してみせる!それなら改造なんて必要ないだろ?本当に、本当に最後のチャンスを、お願いします!」 

 松平は目を閉じ、首だけを動かし目一杯頭を下げた。 

 「……いいだろう。だが入学にあたって二つ条件がある」

 「?何でしょう?」

 「お前の自力を試すため、学費・住居以外の資金援助は一切行わない。さらに、共に入学する家臣と護衛は井伊NAOと本多TDK2のみだ」

 「なっ!?」

 「不正なぞ金があればいくらでも出来る。部下が多ければ同じく。それを防ぐためだ。筋は通ってるだろう?文句があるなら即改造だ」

 「……いや、分かった。文句はないし、ありがとうございます。パパ」

 

 かくして松平は改造を免れた。しかし、それは時間稼ぎに過ぎない。松平秀喜の勃起不全は嘘ではない。手術台から解放された松平は決意を新たにする。

 (とりあえず最優先は童貞だ。最悪それだけでもいい)

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