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島流し

 松平が小さくため息をついた瞬間、「ヒヒーん!!」と力強い馬の雄たけびが校舎に響き渡る。

 全員が声の方角に振り返ると、全身に真っ赤な鎧を装備した歴戦の雰囲気の男が馬に跨がり、松平達をジッと見つめていた。

 男が馬をせかし、馬はゆっくりと歩を進める。

 「誰?生徒?」「馬通学?」「でもあの人かっこいい……」

 周りの生徒たちがひそひそ話をする中、馬は松平達の目の前で止まった。ゴゴゴゴゴゴゴ!と音が聞こえてきそうなほどの威圧感に松平は息を呑む。

 (このただならぬオーラ。間違いない、熱校に入学してくると噂の豊臣秀吉殿の息子だろう)

 (違います)男の声が松平の脳に響く。

 「何ィ!?この人、直接脳内に……」

 「どうなさいましたか若!?貴様!若に何をした!?」

 TDK2が右腕を変形させ、キャノン砲の銃口を男に向ける。

 「これは失礼致しました。つい術を……わたくしは、真田幸国と申します」

 男は穏やかに名乗ったが、その名前に全員が驚き、TDK2はさらに身構えた。

 「真田幸国って、日本一の兵と言われた……」「本物?」「カッコいい……」

 野次馬はさらに増え続ける。

 「松平HIDEKI様でよろしいでしょうか?」

 「はい。武勇を噂に聞いたことがありますが、真田殿も熱校に入学を?」

 「いえ、わたくしは羽柴秀樹様の護衛の先陣で。ついでに、秀樹様のご学友になる松平様にご挨拶をと思いまして」

 「はあ、わざわざどうも。それで、その羽柴殿は?」

 「到着いたしました」

 その時、校門から敷地内に袴や鎧を着た武士集団がごく小規模な大名行列で行進してきた。その隊列の中心に四人がかりで持つ旅籠が一つ。それが真田の近くまで運ばれる。

 「正しく殿様出勤……」

 「ご紹介いたしましょう。我らが主君、豊臣秀吉公の嫡子、羽柴秀樹様です」

 (一体どんな男なんだ?この真田を従えるほどのカリスマを備えた勇ましい男が……)

 真田が旅籠にくくりつけてあった縄の一部を外した瞬間、連鎖的に旅籠の底が抜け、中から縄で縛られ芋虫のようになった男が一人落下し、地面に叩きつけられ情けない悲鳴をあげた。

 「いだあっ!!」

 「若様、到着いたしました。熱田神宮学校でございます」

 (これ護衛じゃなくて護送だろ……)

 松平がそうこころで呟いた時、男はのたうち回りながら真田を叱りつける。

 「おい真田あ!今は受け身が取れんのじゃ、もっと低い位置から落とさんかい!」

 (そこ!?)

 「申し訳ありません。これが令和大名の通学方法でして」

 「おう、そうなのか!なら仕方ないか!」

 (何に納得したんだ!?)

 「ではわたくしはこれで。くれぐれも皆さまと仲良く」

 真田は一礼し馬をせかして去っていき、者どもも真田の後について行く。その後ろ姿を松平は唖然としながら眺めていた。 

 しかし羽柴だけは首を傾げながら松平を凝視し、その視線に松平が気が付いた。

 「……何?」

 羽柴は納得したようにはっ、となった。

 「おお、お主!元気そうじゃな!」

 「……あれ、ごめん。前に会ったっけ?思い出せない」

 「?初対面なんだから当然じゃろ」

 「じゃあ久々の再開を喜ぶような口ぶりで言わないで!今、記憶の引き出しを片っ端から探したからね!?」

 「はっはっは!すまんなすまんな!俺は羽柴秀樹というもんじゃ!よろしくな!」

  それは縄で縛られ動けない男とは思えないほどの満面の笑みだった。

 「えっと……僕は」

 「おっと名乗る必要はないぞ。お主は有名人じゃからな。どうした、お主も島流しか?」

 「勝手に罪人にすんな!」

 「ひょっとしてここはゲームを一日一時間しかできないこの世の地獄島……」

 「それは令和の四国だ!ここは四国じゃなくてNAGOYA……あれ?(この男、ゲームを知っているのか?)」

 「NAGOYA?あーそういうことか!ん?」

 その時、遠くから「アニキいいいいいい!!」という叫び声が微かに聞こえてきた。

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