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8.開戦

「フルール、この後ちょっと時間をもらえるか」


 会議が終わり各自準備のため解散となったのでフルールを呼び止める。彼女は強いが、教皇に狙われるアカシア付きの護衛のになったのだから強敵と戦う機会も今後増えるだろう。力及ばず負けましたなんてことにはしたくない。

 俺には稽古を付けてやるくらいしかできないが、できることはしてやりたい。ここまで一緒に逃亡してきた仲だからな。


 ぜひお願いしますと了承を得て、屋敷裏にある訓練場にやってきた。広い、さすが辺境伯邸の訓練場だな。先客の兵士が数十名いるがまだまだ場所には余裕がある。

 アカシアも訓練を見たいと言うので三人でやってきたが、ここでもアカシア人気は凄いな。羨望や嫉妬の視線をひしひし感じるぜ。


「ローズ様の怪我が治って本当に良かったです。前は傷だらけで分かりませんでしたが、フルールほどではないですけれど精悍な顔をしていたのですね」


「いやいやそんな、照れますよアカシア様。ローズ殿もイケメン? ですよ」


 顔の傷が治ったことで容姿を褒めてもらったが、これは褒められてるのか? 確かにフルールはイケメンだが女子だぞ。

 少し納得いかないが気を取り直して訓練を始めるか。


「まずは実力を見たいから手合わせしてみよう。今日の訓練では教会騎士に合わせて剣と盾を使うからな」


「分かりました。アカシア様付きの護衛の力、ローズ殿にお見せしましょう!」


 浮かれている! 専属護衛になれたのがよっぽど嬉しかったんだな。

 構えは中段か。バランスの良い基本の構えだが、それだけじゃ自分よりも強い奴に勝つのは難しいぞ。


「それではわたくしが合図を掛けますね。お互いに礼! 始め!」


 浮かれフルールは突っ込んでくるかと思ったがまずは様子見か、体の治った俺の実力が分からないからそれで正解だ。護衛がいきなり突っ込んでやられたらお終いだからな。

 俺は盾を前に出してじりじりと距離を縮め、剣の間合いに入ると盾でフルールの視界を遮り剣を横薙ぎに振るった。

 バックステップで剣を躱すと、フルールは体勢の崩れた俺に上段から袈裟懸けに剣を振り下ろしてくる。

 袈裟斬りを体を沈めて躱し、そのまま回転して胴廻し回転蹴りを叩き込むとフルールは地面に膝をついた。


「ロ……ローズ殿、教会騎士はそんな蹴り使ってこないですよ」


「この世に絶対なんてないからな。奴らは何でもありだから格闘術を使うかもしれないだろ?」


 勝つ為に毒でも薬でも何でも使うのが教会騎士の怖いところだ。逃亡時の戦いでも薬で痛みを消してるから腹を斬られても腸出しながら戦いを止めなかったもんな。あれは正直怖いと言うかグロかった。


「フルールの実力はかなり高い。後は多少汚くても何が何でも勝つ執念みたいな物が欲しいな。例えば室内戦だったら椅子や机を投げつけて隙を作るとか、アカシアを守るなら負けられないからな」


「その通りです! ローズ殿、もう一本お願いします!」


 基本的な実力の高いフルールだから教えるのは勝つ為の小技で十分だろう。俺は剣士じゃないから技術的なことは教えられないしな。闘志を燃やすフルールに付き合い、日が暮れるまで訓練して明日の戦に備えた。




 早朝から領都ピアニカ奪還に向けて俺たちは進軍を開始しする。兵は二千、軍隊としては少ない人数の為進軍スピードも速く明日には仕掛けられる位置で野営することになった。開戦に備えて英気を養う為、今日は御馳走が振る舞われたが本当に旨かったな。

 その夜のことだった。少数の見張りを残して眠りについていると辺りが騒がしいことに気付く。


「敵襲! 聖国が夜襲を掛けてきたぞ!」


 伝令を聞いて状況を把握するが、まさか向こうから仕掛けてくるとはな。俺はテントを飛び出て戦いに向かう。戦争は初めてだからこれが初陣てやつだな。

 外では敵味方入り乱れての戦闘が始まっているが、不意を突かれた分劣勢だ。

 戦闘前の会議で俺の役目は高い個人戦闘力を活かして大将首を取ってくる作戦になっている。精神を集中して気の探知を行うといくつかの強い気の反応があった。指揮官が強いとは限らないが、強い護衛を傍に置いている可能性は高いし行ってみるか。


 敵を薙ぎ倒しながら一番強い気の反応を示した場所に行くと、ピアニー子爵のテントが包囲されている。これじゃあ逆に大将首を取られちまうぞ。簡単に恩人を殺らせるかよ!

 俺は敵の包囲網を突き破ってピアニー子爵のもとに向かう。


「ピアニー子爵、御無事ですか?」


「ローズ殿! 皆の者、武神ローズ殿がきてくれたぞ! 邪神を崇拝する宗教家共に我らの力を見せてやるのだ!」


「「「うおおおおおおおお」」」


 ピアニー子爵の鼓舞で兵たちから鬨の声が上がる。やはり子爵は兵からの信頼が厚い良いリーダーだな。

 奇襲を受けて浮足立っていた兵の士気が高まり戦況を盛り返すと、他の聖国兵よりも豪華な意匠のローブを纏った男が前に出てきた。

 こいつがカトレア聖国の指揮官なのか?

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