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4.逃亡

「ローズ殿! そちらは任せます!」


「了解……した」


 俺たちは追手の追撃を撃退しつつカサブランカ辺境伯領に向かう。

 道中でお互いの事情を話し合ったが、アカシアたちはカトレア聖国に領主館を襲撃されてここまで逃げてきたそうだ。


「父であるピアニー子爵が兵を連れての遠征中を狙われてしまいました。まさか勇者パーティーがそんな人たちだなんて……ローズ様も大変な思いをされたのですね……」


 帝国貴族の援助がほしい俺はアカシアたちに事情を説明した。

 勇者の名声は他国にも広まっているらしく大層驚いていたが、今の俺の状態を見て納得してくれたようだ。この声もろくに出せない、傷だらけの体にボロボロの服を着た俺の説得力は相当高いだろう。


「アカシア様、ローズ殿ここで山を下りて街道を進みます」


「分かりました。では二人ともこれを着てください」


 アカシアはアイテムボックスから地味な色の外套を取り出して俺とフルールに渡す。

 いいなアイテムボックス、俺は魔力がないから使えないが便利だよな。アイテムボックスは物を収容した分だけ最大魔力が減り、取り出すと元に戻る便利魔法だ。


 この世界には気と魔力二つの力がある。

 気は気力とも言い、肉体の強化、武器に流せば武器の強化もできる力。気は誰もが持つ生命力なので修練次第で誰でも習得できる。


 それに対して魔力は持って生まれた才能だ。

 基本の火、水、土、風の四属性とそれ以外の特殊属性に分けられ、持って生まれた一属性のみ使用できる。

 俺は魔力は使えないが気の扱いに才能があり、良い師にも恵まれ武神と呼ばれるまでになれたが、やっぱ魔法は便利だしかっこいいから俺も使ってみたかったぜ。


「この先の宿場町で宿を取り、明朝馬車でピアニー子爵と辺境伯のいる領都リリウムに向かいましょう」


 フルールの話に頷きを返し、渡された外套を纏い下山を始めた。


 周囲を警戒しながら街道に出るが、気力感知にも魔力感知にも引っ掛からない。どうやら勇者からの追手も教会騎士もいないようだ。


「このまま警戒しながら宿場町まで警戒しながら進みましょう」


 俺たちはフルールの言葉に同意し、警戒しながらも速足で宿場町へ向かった。




 道中は襲撃もなく無事に宿場町に到着した。

 日が暮れかけて人通りは少ないが、町に入るのは危険か? 人を隠すには人の中と言うが、俺は人混みに紛れた暗殺者からアカシアを守れる自信はないぞ。


「では、代官のところへ向かいましょうか。この町はピアニー子爵家の領地で、代官は父の部下なんです」


 なるほど、民間の宿屋じゃなくこの町を治める代官邸に泊まるのか、それなら安心だな。代官が悪だくみしてなければだが……。

 いかんいかん、最近裏切られてばっかだから人を信用できなくなってきてるな。無駄に警戒しすぎても疲れ果てていざって時に戦えなくなっちまう。


 俺たちはアカシアに連れられ宿場町の代官邸にやってきた。

 フルールがドアノッカーをガンガン叩いて人を呼ぶが、あまり大きな音を立てて目立たないでくれ。


「こんな時間に何事ですかな」


 中から使用人風の老人が対応に出てきた。日が暮れた時間の来客に不機嫌そうな顔だな。


「急な訪問で申し訳ありません。わたくしはピアニー子爵家のアカシア・ピアニーと申します。代官のバターバ様に至急お話ししたいことがありますので面会をお願いします」


「ピアニー子爵家のご令嬢でしたか。とりあえず中にお入りください」


 俺たちは使用人に応接室に通され、少し待つと代官がやってきた。


「これはこれはアカシア様、こんな時間にどうされましたかな? 至急の要件があると聞きましたが」


 バターバは四十代くらいの小太りの男で、その顔は一筋縄ではいかなそうな曲者に見える。

 これまでの経緯をアカシアが説明すると、代官バターバは快く引き受けてくれた。もっとも、俺の汚い恰好に良い顔はしていないようだけどな。


「それでは明朝出発できるよう馬車を手配致しましょう。ところで、そちらの汚い男……おっと、汚れた格好の方はどなたでしょうか?」


 こいつやっぱ俺のこと汚いと思ってやがったな!事実なだけに反論できないが。


「こちらは武神ローズ様ですよ。事情があり今は護衛として同行してもらっています」


「なんと! あの有名な武神ローズ殿ですか! これは大変失礼いたしました」


「いや……大丈夫だ……気に……するな」


 バターバは俺のかすれ声に訝し気な顔をするが納得したようだ。


「皆様大変お疲れでしょう。湯と食事を準備しますのでお待ちください」


 話が終わり、俺たちは汚れを落として用意してもらった食事をいただく。食事はかなり豪華なものだ。代官ともなると良い物食ってるんだな。

 食事が終わり、俺たちは用意してもらった客室で休むことになった。体はボロボロだし、明朝出発だから早く休まないとな。


 深夜、殺気を感じた俺が目を覚ますと教会騎士が剣を振りかぶっているところだった。

 ベットから転がり落ちてなんとか回避する。クソ! やっと休めると思ったのにこんな時間に襲撃してきやがって!

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