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21.因果応報

 グラジオラス帝国軍は王国に進軍し王都シベリアンを包囲したが、堅牢な城壁に阻まれ王都内に突入できずにいた。

 そして、王国が籠城戦で時間を稼いでいる間に戦線が伸びた帝国軍の隙をついてカトレア聖国軍が攻撃を始め、帝国対王国聖国連合軍の戦いは膠着状態になっていた。

 俺は対策を講じる為、今回の戦の指揮官を務めるカサブランカ辺境伯、ピアニー子爵と作戦会議中である。


「ローズ殿、元シベリアン王国民であり勇者パーティーの一員でもあった貴方なら、何か王都へ侵入できる抜け道を知らないか?」


「そうですね……大人数では行けませんが、王国内部につながる下水道があります。下水道から内部に侵入して城門を開けるのはどうでしょうか?」


「良い手だな。ローズ殿、案内を頼めるか?」


「任せてください」


 王国の下水道は近くに流れる川の下流につながる為、城壁外から中に入る唯一の道だ。

 確か王家の非常用の抜け道も下水道につながるって聞いたことがあるが、俺の目的は王じゃなく勇者への復讐だ。

 宰相の言いなりである傀儡の王は眼中にない。




 俺は帝国軍の精鋭と城壁の堀に注ぐ下水道の入口にやってきた。

 入口は巧妙に隠されているが、この町に長年住んでいた俺はこの場所を知っている。

 昔下水道掃除の仕事をした経験がこんなところで生きるとは、人生何があるか分からないな。

 俺たちは堀を慎重に降りて行き、入口の鉄格子を破壊して侵入する。


「ローズ殿、この下水道が城門まで続いているのですか?」


「城門付近までは行けますので案内します。急ぎましょう」


 帝国兵の質問に答えつつ汚水が酷い臭いを発する中、足早に城門近くの出口まで進んで行く。

 俺ができるのは案内するところまでだ。


「着きました。この出口は城門の傍に出ます。俺は勇者を討つ為城に向かいますので、御武運を」


「ここまで案内ありがとうございます。ローズ殿も御武運を」


 精鋭の帝国兵と別れ、俺は勇者を討つべく城に急ぐ。

 もうすぐだぞ勇者シードよ。

 長いこと勇者パーティーで一緒にやってきた俺には分かる。

 王をお守りする為とかでっち上げて前線には出てこないつもりなんだろ?


 下水道から王城に侵入した俺は警備の目を掻い潜り慎重に歩みを進めるが、思ったよりも警備が薄いな。

 王城の守りよりも城壁の守りに人員を割いているのか?

 シードの奴は何処にいる? あいつのことだ、もうダメだと分かれば最後は見た目を気にして派手に散ろうとか考えてそうだな。

 なら、玉座の間か?




 俺の推理道理、玉座の間にシードは待ち構えていた。

 他には兵士が数十名と、後ろには王と宰相がいるな。


「ローズ、まさか一人でくるとはな」


「お前こそ、アネモネとアイリスはどうした? 俺はあの二人にも恨みがある」


「あの二人ならとっくに逃げたさ。そんなことよりローズ、恨みがあるのは俺の方だ! 貴様が帝国に寝返らなければこの国は俺の物になるはずだったんだぞ!」


 ちっ! 二人は逃げたか、狡賢い奴らだ。

 しかしシードの奴、この国を乗っ取るつもりだったのか?

 だが、俺を恨むのはお門違いってやつだろ。


「シード、どういうことだ? お前も裏切るつもりなのか?」


「王……いや、形だけの神輿よ。誰もお前に忠誠など誓っていないぞ。父上、貴方にもな」


 シードがパチンと指を鳴らすと、王の横に付いていた兵が王と宰相を斬りつけ首が飛んだ。

 こいつ、王と宰相を殺しやがった。自棄になったのか?


「これで俺がこの国の王だ! 例え一時でも、俺は王になったのだ! 殺せ! お前たち、ローズを殺せえぇぇええ!」


 錯乱したかシード! だが、この程度の人数で俺に勝てると思うなよ!

 俺は身構え迎撃態勢を取るが、王国兵は後ろからシードを剣で刺した。


「何で俺の腹から剣が生えてるんだ? どういうことだよおおぉぉおお!」


 叫ぶシードの首を王国兵が斬り落とした。

 あいつ、最後には自分が裏切られやがった。

 これが因果応報って奴か、ざまあないな。


「ローズ殿、我々は投降します。この国に振り回されるのに疲れました。もう争う気はありません」


「そうか、なら早く終戦を伝えなきゃならないな」


 こうしてシベリアン王国との戦は終わりを告げた。

 結果は裏切りに次ぐ裏切りと散々なものだったが、俺はこの国らしいと思う。

 何事にも原因があって結果があるのだから。

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