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19/22

19.ダンス

 ピアノやヴァイオリンといった楽器が音楽を奏でるホール中央では、多くの男女がペアになりダンスを楽しんでいる。

 おっ、アカシアとフルールがペアで踊って注目を集めているな。

 さすが美男美女、じゃなかった。美女美女コンビだ。


「さあ、ローズ様。わたくしたちも行きますわよ」


「そうですね。行きましょう」


 アカシアによると、未婚の女性からのダンスの申し入れを未婚の男性が断るのはマナー違反らしい。

 もっとも、性格はともかく、コロナリア程の美少女からのダンスの誘いを断る男などいないだろうがな。

 コロナリアに手を引かれホール中央にやってきた俺たちは、ホールドを組むべく手を掴み体を寄せる。


「ローズ様、やっぱり逞しい体をされていますのね。わたくしなど簡単に壊れてしまいそうですわ。優しくしてくださいまし」


「コロナリア殿下にそのような真似はいたしません」


 悪戯っぽく微笑むコロナリアにドキッとするが騙されてはいけない。

 この(あま)、絶対どういう意味か分かって言ってるだろ。

 確信したぞ。コロナリア殿下の本性は小悪魔だ。

 まあ、美女に振り回されるのは悪い気はしないがな。


 俺たちが踊り始めると会場の注目を集めることになった。

 グラディウス陛下から紹介された俺と皇女殿下が仲良く踊っていたらそりゃあ目立つよな。

 視線を感じるがダンスに集中しないと、初心者の俺はミスして恥をかいてしまう。

 そんなことになったらパートナーのコロナリア殿下にも、ダンスを教えてくれたアカシアにも申し訳ない。


「お父様からはローズ様は他国の人間だからダンスは踊れないかもと聞いていましたが、上手く踊れていますね。経験があるのですか?」


「お褒めいただき光栄です。今日の為にアカシアから習いました」


 殿下からも及第点を貰えたようだ。練習頑張って良かったよ。


「ピアニー子爵家のアカシア様ですか? 彼女に習ったのなら納得です」


「アカシアは殿下も知るほどに有名なんですか?」


「才女と名高いピアニー子爵家のアカシア様を知らぬ者は帝国貴族では少ないのではないかしら。わたくしもお茶会で御一緒したことがありますわ」


 衝撃の事実だ。アカシアは有名人だったのか。

 でなければカトレア聖国の教皇なんて超大物が身柄を狙ったりはしないか。

 まあ、俺にとってのアカシアが一緒に逃亡した仲間で、ダンスの師匠で、フルールとべったりのバカップルなのは変わらない。

 やがてホールに流れていた曲が終わると、俺たちのダンスを見ていた貴族たちから拍手喝采をあびた。

 初心者ながら一生懸命踊ったのが良かったのかな?

 後でダンスを教えてくれたアカシアにはお礼をしなければ。

 俺たちが踊り終えると多くの貴族たちが押し寄せてきた。


「ローズ様、是非私と踊ってくださらない?」


「私ともお願いしますわ!」


「コロナリア殿下、僕と一曲踊っていただけませんか?」


 俺たちにダンスの誘いにきたのか。

 そう少しコロナリア殿下と話していたい気持ちもあるが、誘いを断るのはマナー違反だしな。


「わたくしがローズ様を独占するのもここまでのようですね。また会える日を楽しみにしていますわ」


 コロナリア殿下は花が咲くように微笑むと、ダンスの誘いにきた男性貴族とホール中央へ行ってしまった。

 また会える日を楽しみにか、そうだな、俺もコロナリア殿下にはまた会いたい。

 これは惚れてしまったかもしれないな。

 俺はダンスの誘いにきてくれた貴族令嬢たちと踊る為、ホール中央へ行きダンスパーティーを楽しんだ。




「アカシア、ダンスを教えてくれてありがとう。本当に助かったよ」


「お役に立てたようで良かったです。それにしてもローズ様、随分とコロナリア殿下と親しそうになさってましたけど、いつの間に口説き落としたんですか?」


「口説いたと言うか、グラディウス陛下に紹介されたんだよ。コロナリア殿下は強い男が好きみたいで気に入られたみたいだ」


 夜会が終わり帰りの馬車の中、アカシアが上機嫌で聞いてきた。

 貴族でも噂話は好きなんだな。むしろ貴族だから噂や情報を集めるのが大事なのかもしれないな。


「そうなのですね。コロナリア殿下とはお茶会で何度かお会いしたことがあります。少し腹黒いところもありますが、とても面白いかたで私は好きですよ」


「俺も殿下のことは好きだよ。アカシアのお墨付きの人物だと知れて安心したよ」


「まあ、ローズ様。わたくしのことをそんなに信用してくださるのですね」


 アカシアと親しげにしていると「ぐぎぎぎいぃぃ」とフルールが歯を食いしばっていた。

 フルールは嫉妬深いな。歯が欠けるから食いしばるのを止めなさいよ。奇麗な顔が大変なことになっているぞ。


「明日なんだが、陛下にシベリアン王国の件で話があるからと城に呼ばれたんだ。どう思う?」


「……おそらく戦になると思います」


「やはりそう思うか」


 アカシアも俺と同じ意見か。どんな話か聞いてみないことには分からないが、あの国が絡むと碌なことにならないからな。

 シベリアン王国との決着も近いか。

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