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14.謁見

「そういえば町で帝国兵の鎧を着た化け物並みに強い男を見かけたのですが、帝国にはあんなに強い男が沢山いるのですか?」


「帝国兵の鎧を着た強者か……。その男、他の兵とは少し違った鎧を着ていなかったか? 帝国には通常の騎士団の他に戦闘能力が高い者を集めたイージスと言う名の特殊部隊がある。魔鉄製の黒い鎧を着ているから見れば分かると思うぞ」


 確かにあの男は意匠の凝らされた黒い鎧を着ていた。帝国の強者を集めた特殊部隊の人間だったのか。強い訳だぜ。


「イージスは帝国を守る盾と言われる十名の精鋭を集めた特殊部隊です。中でも隊長のアドニス様は皇帝の盾の二つ名を持ち帝国最強とされていますね。ちなみに帝国騎士団長は皇帝の剣の二つ名を持っていて、去年の闘技大会決勝戦ではその二人が激闘を繰り広げた末、アドニス様が勝利したことで帝国最強の称号を得ました」


 ちょうどフルールとのデートから帰ってきたアカシアが補足してくれた。って、この二人まだ手繋いでいやがる。ピアニー子爵にばれても知らないぞ。

 しかし帝国最強か、もしかしたらあの時ぶつかった男がそのアドニスなのかもしれないな。いくら帝国でもあんなに強い人間はゴロゴロいないだろう。


「それはそうとアカシア、なぜフルールと手を繋いでいるのだ?」


「あっ、それは……」


「アカシア様を悪い虫からお守りする為であります!」


 ついに気付いたピアニー子爵が尋ねるとアカシアは気まずそうな顔になり言い淀むが、代わりにフルールが自信満々に答えた。

 凄いよフルール、俺はお前を応援する!


「そ、そうか。ほどほどにな」


「お任せください! このフルールが我が命に代えてもお守りいたします!」


「死んではダメですよフルール! 貴方がいなくなったら残されたわたくしはどうしたら……」


 どうやら二人の世界に入ってしまったようだ。これはしばらく戻ってこれないだろうな。

 今日は魔導船に初めて乗れたし、帝都も観光できた。充実した一日だったな。




 翌日、俺たちは皇帝と謁見する為に昼頃城にやってきた。

 メンバーは俺、ピアニー子爵、カサブランカ辺境伯、アカシア、フルールの五人だ。

 シベリアン王国の城よりも大きく、意匠の凝らされた豪華な作りはさすが大国の皇帝の城だな。


 城に到着した俺たちは別室に通され待機する。玉座の間の控室だ。謁見前に身だしなみを整える為の部屋だな。

 今日の俺はピアニー子爵が用意してくれた正装を身に着けているから身だしなみはばっちりだ。

 帝国の正装なんて初めて着るが、なんで正装と言うのはどこの国でも動きづらい物なんだろうな。

 小国よりも大国であるほどよりゴテゴテした正装になりがちな気がするよ。


「お待たせいたしました。準備が整いましたので玉座の間へとお進みください」


 考え事をしていたら謁見の時間になってしまった。

 みんなの様子を見ると特に緊張もしてないみたいだが、あっ! フルールは固まってるな。仲間がいた。


「さて、行こうか。今日の主役はローズ殿だ。しっかり頼むぞ」


「できる限りがんばります」


 そう、頑張るしかないんだ。謁見の礼儀作法はアカシアとピアニー子爵から習っているしな。

 案内人の後について歩き、玉座の間までやってきた。


「武神ローズ、カサブランカ辺境伯、ピアニー子爵一行!」


 入口の兵士が声を上げ扉を開いた。

 扉が音を立てて開き玉座の間に入場する。

 さすが大国の玉座の間だ。かなりの広さに絢爛な装飾。

 見た目の豪華さで威厳を出すのは大事なことだからな。

 左右にはそれぞれ兵士が二十人程並び、一段高い玉座に座る皇帝の横には一目で強者と分かる男が二人立っている。

 一人は昨日会った男だ。やはり大物だったか。


 ここからの礼儀作法は失敗できないぞ。

 俺が学んだ礼儀作法はとにかく隣にいるピアニー子爵とアカシアの真似をすることだ。

 アカシアの場合は女性用の作法になるから基本的にはピアニー子爵の真似だな。フルールは逆にアカシアの真似をする作戦だ。

 俺たちは玉座の間を進み、ピアニー子爵とアカシアの真似をして片膝をついて頭を垂れる。

 しばらくして、皇帝から声がかかった。


「皆の者、面を上げよ。久しいなカサブランカ卿、ピアニー卿、アカシア嬢も大きくなったな。隣は護衛の者か、ではそちらの男が武神ローズだな? 私がグラジオラス帝国皇帝、グラディウス・グラジオラスだ」


「はいっ! ローズと申します。本日はお招きいただき恐悦至極に存じます」


 片膝をついて、皇帝から声がかかるまで頭を垂れろと教えられた通りにする。

 皇帝に言われるがまま顔を上げ挨拶をした。

 思ったよりも若いが威厳を感じるな。歳は三十代くらいか? 精悍な顔で色気と言うか華がある男だ。


「うむ、この度の其方の活躍は聞いている。アカシア嬢を守り、カトレア聖国八大司教アスモデウスを撃退したそうだな。見事である。褒美をピアニー卿の屋敷に送るので受け取るがよい」


「はいっ! ありがたき幸せに存じます」


 さすが皇帝! 文無しの俺には凄く嬉しいよ! これでお世話になった人たちに感謝の気持ちを込めた品を買える。


「武神と呼ばれる其方の力に興味がある。是非見せてくれ。相手はアドニス、其方に頼もう」


「命令とあれば喜んで」


 アドニスと呼ばれた男を見ると、予想通り昨日ぶつかった男だった。

 やっぱりな、ただ者じゃないと思ってたんだよ。

 皇帝の発言で突如帝国最強と戦うことになりそうだ。

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