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11.奪還領都ピアニカ

 夜襲を掛けてきたカトレア聖国兵は、大司教アスモデウスを撃退したことにより烏合の衆と化し帝国兵によって全滅した。

 敵前逃亡は死刑の聖国兵は指揮官がいなくなったせいで撤退できず、最後の一人まで戦いを止めることなく向かってくる。

 残酷だが全員殺して火の魔術で死体を焼く。放っておけば疫病が流行ったり、死体がアンデッド化してしまうためだ。

 やはり人を殺すのは気分が悪いな。俺には向いていない。

 戦場の片付けが終わるころには朝になっていたが、領都に向けて出発する。休んでいる暇はない、領民の為にも領都ピアニカに急がないとな。




「どういうことだ? 聖国の奴らは何処に行ったのだ?」


「全軍で夜襲を掛けたのかもしれませんね。まあ、もともとアカシアを攫うのが聖国の目的だったのでピアニカを捨てて行ったのかもしれないですね」


 領都ピアニカに到着した俺たちは警戒しながら町を進むが聖国兵は見当たらない。領主邸を捜索しても見当たらないので、全軍で夜襲に出てきたか引き上げたのだろう。

 とにかくこれにて領都ピアニカ奪還作戦は終了だ。

 俺たちは戦勝を祝う宴を始めるのだった。




 領都奪還戦から七日程過ぎた頃、ピアニー子爵から帝都で行われる夜会に誘われた。今回の戦の褒賞も出るから功労者の俺には是非参加して欲しいとのことだ。


「それに、グラジオラス陛下がローズ殿に会いたいそうでな。是非夜会に出席して欲しいのだ」


「それは光栄ですね。参加させていただきます」


 皇帝陛下からの指名を断ることはできないしな。大陸の覇を競う皇帝の誘いを断ったら何をされるか考えただけで震えてくる。実質命令みたいなものだ。

 俺の住んでいたシベリアン王国の王はろくでもない人間だったから王に良いイメージがないんだよな。

 後が怖いし、大恩あるピアニー子爵の顔を立てる為にも参加するしかないだろう。


「それは僥倖だ! てっきり断られるかと思ったぞ」


「正直皇帝陛下は怖いですけど帝都には行ってみたいですし、参加させていただきます」


 謁見は怖いが帝都には行ってみたい。帝国は人間第一主義のシベリアン王国と違い、他の国を侵略して大きくなった国だけに人種の垣根を越えていろいろな種族が一緒に生活している。

 シベリアン王国では人間以外は奴隷にされていたから様々な種族が仲良くしている姿を見るのは楽しみだ。


「では、謁見や夜会で着る正装を用意しなければならんな。すぐに作らせよう。私とアカシア、カサブランカ辺境伯も出席するからな。出発は五日後だぞ」


「分かりました。楽しみにしています」


 見知った人たちがいるのは心強いな。俺は田舎者だから何かあったらフォローしてもえるのは凄く助かるよ。

 そうそう、ピアニー子爵に聞きたいことがあったんだ。


「ピアニー子爵、私がここにきて数日たちますが、仕事はしなくていいのでしょうか? 今ではたんなるタダ飯食らいですよ」


「何を言うかローズ殿! 兵を鍛錬してくれているではないか。兵は皆喜んでいたぞ。それに、ローズ殿は客分であって私の部下ではないのだから気にしないでくれ」


 一人でも鍛錬はできるが実戦形式での模擬戦闘はできないため、自分の修行にもなるから一緒に兵たちと鍛錬することもあるが喜んでもらえていたんだな。

 客分だからと甘えてばかりはいられないと思い聞いてみたが、そんなことで良いなら喜んでやらせてもらおうじゃないか。


 それから帝都に出発する日まで毎日兵の訓練に参加し、それが終わってから自分の修行をする毎日を過ごした。

 ピアニー子爵の兵は精強を誇るが、その中でもフルールは別格で強かった。まだ数日しかたってないが出会った頃より確実に強くなってるな。

 俺が気の使い方を教えたのもあるが、アカシア直属の護衛になったことでモチベーションが上がりまくっているのがでかいと思う。

 何度やられても俺に向かってくる姿は見習わなくちゃな。


 そして、帝都に出発する日がやってきた。途中まで馬車で行き、船に乗り換えると聞いたがこっちは海のある方角じゃなかったはずなんだが……。

 少し心配しながら馬車に揺られること数刻、この先は確か大きな湖があったはずだが船を使うような場所じゃないよな?

 そう思い湖に到着して大きな船を見た時、俺は目を見開いた。


「これは……もしかして魔導船ですか?」


「その通りだ。ローズ殿は魔導船は初めてですかな?」


「シベリアン王国にも一隻あるのですが貴族専用なので、こんな近くで見たのは初めてですよ」


 湖に浮かんでいたのは大きな魔導船だった。魔導船とは水の上だけではなく空を飛ぶことができる船だ。

 現存する魔導船は古代遺跡や迷宮などから発掘された物のみで、新しく作ることは現在どこの国も成功できずにいる一級の古代遺物である。

 俺がいたシベリアン王国では王侯貴族が遠い国に外交に行く時くらいしか使用しなかった。平民の俺は当然近くで見るのは初めてだ。

 まさか魔導船に乗って帝都に行くのか?

 昔から憧れていた魔導船に乗れるとはな。それだけできて良かったと思えるよ。

 あまり乗り気じゃない旅だったが、俺は次第に心躍る気持ちになっていた。

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