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3歳児の日常〜学習編〜

3歳児生活 初日 2部目です。

感動の朝食を終えると、

母に再び抱っこされ、今度は床に降ろされる。


「おトイレしたら、居間で遊んでいいからね〜」


マリアが〝世良〟の手を引いて廊下の脇にあるドアの前に到着。

ドアを開け、何やらごそごそ準備している。


「ハイ ど〜ぞ〜」


準備を済ませたマリアがドアの前から退くと、

そこには小さな階段の付いた〝トイレ〟があった。

座面には穴が開いていて、そこから用を足すのだろう。


〝世良〟は既にトイレトレーニングが済んでいたので、マルズも

何をするのか、直ぐに理解できた。


モゾモゾと、ズボンとパンツを自力で降ろし、

小さな階段を登って、ハンドル付きの便座にまたがる。

が、出ない。


原因ははっきりしている。

マリアが「シー シー」と掛け声をかけ、マルズを見守って

いるからだ・・・


人に見られながら用を足すのは、3000歳超えの

マルズには少々、ハードルが高い


「ママは あっちむいて!」


何とか羞恥プレイを回避して用を足す。

熱前の記憶が無かったら、使用方法が分からずに

〝トイレットペーパー〟や〝水洗〟の仕方が分からなかっただろう。


ココでも女神様に感謝しておく


用を足し終わり、トイレ内の洗面で手洗いを済ますと、

記憶を辿って、居間への廊下を歩いて行く。


マリアは手慣れた様子で、小さな階段と、子供用の便座を片している。


ダイニングの脇を抜け、居間に着くと

マルズはTVのスイッチをリモコンで入れる。

朝食後、マリアの片づけが終わるまでは、大抵〝世良〟は

居間でTVを観ている。


時刻は9時30分

何時もはもう少し早い時間に起きて◯hkの子供番組を観ているが、

この時間にはもう終わっている。

マルズは〝世良〟の記憶を引き出しながらTVのチャンネルを

変えていく。


小さな手ではリモコンが大きすぎ、マルズはローテーブルにリモコンを

置いたまま、指でチャンネルのボタンを押していく


『やっぱり日本に来れて良かった』


TVに映し出されるニュースの内容よりも、マルズには

リモコンが楽し過ぎた。

ボタンを押して、遠隔にある物を操作する。

コレには一切の魔力が必要無いのだ。

しかも、TVに映っている物は、全て遠隔地の〝現在〟なのだ。

〝世良〟の時には当たり前だった日常が、体験してみると

驚愕の連続だ。


勿論、〝収録番組〟などはニュースと違って〝生放送〟では無いので

遠隔地の現在では無いのだが

ニュースは〝生放送〟が原則だ。


日本語理解のスキルと、〝世良〟の記憶、前世の知識で

マルズはTVからドンドン知識を吸収していく。


『コレが車か』


その映像はCMに映った〝車〟だった。

馬車とは違う、地上での移動手段の乗り物、

硬い道路(アスファルト)の上を颯爽と走る車、運転席から俳優が降り

何かしら言ってCMが終わる。


召喚勇者の勇人が言っていた通りだ。

エンデバイヤの人間には、説明しても分からないと・・・


TV、リモコン、クルマどれを取っても魔法でどうこう出来るものでは無い

文化水準がまるで違うのだ・・・


「それでは今日のお天気を、お伝えします」


CMが終わり、ニュースの内容が〝天気予報〟に変わる。


そこでマルズはまたも、驚愕の事実を目の当たりにする。


簡易版とはいえ、地図が画面に表示されているのだ!

エンデバイヤでは王国地図は魔法の〝ワールドマップ〟の使用者と、

一部の高位な人間以外が、持つことが許されていなかった。


ダンジョン限定の簡易な地図でも、銀貨10枚はする。

情報を得るには金か、権力が必要なのだ。


おまけにこの〝天気予報〟その名の通り、天気を予報している。


「今日は一日、暖かく晴れたお天気が続きます。

お洗濯は◎

空気が乾燥して花粉が飛びやすくなって

いますので、花粉症の方はマスクなどの対策をとってお出かけ下さい」


〝花粉症〟が何の事かはわからないが、それよりも、地図に加えて

土地別の降水確率、3時間ごとの天気の予測情報等、

一般に開示されている情報が凄すぎる。


3歳では到底理解できな情報を、前世の知識で補って観てはいるが、

余りの情報量に前世(マルズ)の脳の処理も怪しくなってきた。


ローテーブルの前で立ち尽くす〝世良ちゃん〟に

マリアが背後から「ワッ!」っと声をかける。

世良の身体が一瞬、ビクリとして

ーマルズ的には1m程、飛び上がったような驚きだったがー

そっと後ろを振り返る。


「アハハ ビックリした? 世良ちゃんがあんまりにもTVに集中してるから

からかいたくなっちゃった〜」


悪びれた様子もなく、マリアは脅かした〝世良〟を後ろから抱きしめて、

豪快に笑っている。


「そんなに近くでTV見てると、お目々が悪くなっちゃうわよ」


と言って、抱いた手に力を込め、〝世良〟をローテーブルの後ろのソファまで

連れていき、そのままソファにポフンと座った。


クルマのCM辺りから、マルズはリモコンでのザッピングを止め、

TVモニターの前に陣取ってかぶりつきで画面に見入っていたのだ。


マリアによって、力技でモニターから離され、

〝世良〟は再びモニターへ向かおうと、必死でもがくが、

マリアの腕の拘束から中々抜け出せない


「もう〝ママさんと一緒〟は終わっちゃったから、TVじゃなくて文字の

お勉強しましょうか?」


マリアはソファに座ったまま、片手で〝世良〟を拘束し、もう片方の手でリモコンを操作して

TVのスイッチを切ってしまう。


ジタバタと腕の中でもがいていたマルズだが、〝文字の勉強〟の方に興味が傾いた。


「おべんきょする!」


いつになくやる気を漲らせる〝世良〟を、腕から解放して、

マリアはTV脇の棚から、〝世良〟の勉強セットが入った箱ー道具箱ーを

ローテーブルに置いた。


マルズは箱の中から、子供用の鉛筆と補正クリップ、消しゴム、書き方練習帳を

ローテーブルに並べ、

マリアはTV脇にある小さな椅子をローテーブルのいつも〝世良〟が座っている場所に設置する。


お昼迄の時間、熱前には何時もこの居間で〝世良〟は〝書き方練習帳〟をやっていた。

子供用の鉛筆は、母が使う鉛筆と比べて、少し短くて太い。

その鉛筆に専用のクリップを付けると、3歳児でも使いやすい

〝世良ちゃん〟用鉛筆になる。


書き方練習帳を開き、【あ】から順番にひらがなの文字をなぞっていく、

日本語理解のスキルで文字は読めるが、書き順や、書き方は自力学習なのだ。

椅子に座って、薄く書かれた文字の上を一所懸命に鉛筆でなぞっていく


『しかし・・・多すぎないか?』


同時に書き方を練習しているアルファベットは26文字、

それに比べて、日本語はひらがなだけで50文字

コレに加えて、カタカナや漢字も覚えるのだ・・・


『 日本人凄すぎじゃろ・・・』


エンデバイヤの文字は、どちらかとゆうとアルファベット型

古代語や、魔法文字全てより、カタカナとひらがなの方が文字数が多いのだ・・・

日本語理解があるからこそ分かる、日本人の言語能力の高さに

驚愕と、少しの辟易を覚えながら

マルズは黙々と文字をなぞり続けた。



学習編 終了


幼児用えんぴつ


本当に素晴らしいです。

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