4. 3000歳から3歳に
幼児の日常って
思ってるより大変そう(^-^)
目が覚めた・・・
視界良好!とはいかないが、乳児の頃から比べたら、雲泥の差だ。
私の傍らには、金髪の女性が不安そうな顔で
私を見ている。
「・・・母上・・・」
自然と言葉が出て来た。
この金髪の女性が自分の母親であると認識できている。
「やだっ 世良ちゃん 時代劇でも見たの?ママですよ〜
まだ、熱が下がってないのかしら」
そう言って、母が私の額に手を当てる。
待つ事しばし・・・真剣な顔で
「・・・分からない・・・下がってはいると思うけど・・・
体温計取って来るわね」
パタパタとスリッパの音を響かせ、母が部屋から出て行った。
うん、私の母は天然系なのだ。
女神とのお茶会から、目覚めて7日目、大量の情報を脳内に流し込まれた所為で、
高熱を出して寝込んでいたのだが、どうやら、ようやっと前世と今世の整合性が
取れた様である。
今は、20xx年、3月9日 火曜日 朝の8時30分
西暦や、時計の読み方、カレンダーの日付
これらは女神の日本語理解のステータスのお陰で、難なく理解。
ベットから上半身だけ起き上がり、
キョロキョロと辺りを見回す。
寝起きの所為か、ショボショボする目を擦り、確認する。
ここは私の子供部屋、熱が出た私を心配して
母が付きっきりで看病してくれていたのである。
脱!乳児 を喜ぶ間も無く、高熱が続き、『乳児が魔法を使ったら死ぬ』と言っていた
女神の言葉を身を以て体感した。
3歳時で高熱が1週間続くなら、当然、乳児は死亡だろう。
自前で魔法を使ったわけでなく、情報量だけでコレだ。
心の中で女神様に感謝の祈りを捧げておく
小さなノックの音の後、
体温計を持った母が、再び子供部屋に入ってくる。
「世良ちゃん、まだ起きてる?」
「はい 起きてます」
幼児特有の、高音域の声に、分かっていたが、多少 狼狽え
口元を手で押さえてしまう。
そんな息子の行動を、気に留める事もなく
「はい、じゃぁ、ちょっとお耳を拝借」
と、耳に体温計を差し入れた。
ピッという機械音がして、耳から体温計が離される。
「うん、36,8度 お熱は下がったみたいね
でも油断は禁物です。今日は1日、お家で遊びましょうね」
ベットサイドのカーテンを開けながら、母 マリアがウィンクしてくる。
朝日が部屋に入って子供部屋の全体が見える。
一面だけが空を描いた水色の壁紙、小さな机と小さな椅子
勿論、タンスも本棚も小さい。
3歳児が自室のコーディネートなどするはずも無く、6畳程の室内は、母のセンスで作られた、
〝世良ちゃん〟の為の子供部屋。
感覚的には自分の部屋だし、記憶を辿ると乳児から3歳までの記憶もちゃんとある。
確かに私は〝毛利 世良〟だ。
さっきは、〝母上〟呼びしてしまったが、普段は〝ママ〟呼びだったし、
父の事も〝パパ〟呼びだ。
祖父母の事は何故か〝ジージ〟〝バーバ〟と呼んでいる。
祖父母は生粋のイギリス人なのに・・・
まぁ、幼児に呼びやすい様に呼ばせているのだろう。
繰り返し言葉は幼児には発音しやすい。
しかし、もう一方で、女神 エルグランダとのお茶会の記憶と、
エンデバイヤでの マルズ・エラーダ・ギムウェルスとしての3150年の記憶もある。
一人称〝儂〟は流石にキツイ
かと言って、今更、記憶通りの〝世良〟も座りが悪い
結果、脳内記憶の一人称が〝私〟になった。
「さぁ、先ずはお着替えして朝食ね」
マリアは小さなタンスからピッタリしたズボン、その上から履くキュロット
上着には、長袖のインナーと丈が長めのトレーナー等を
次々と世良のベットの上に出して、コーディネートを決めていく
「ハイ バンザーイ」
マリアの掛け声と共に、世良は立ち上がって両手を挙げる。
バンザイ状態の世良からパジャマの上着と、下着代わりのタンクトップが、
一気に脱がされる。
「クシュッ」
突然、上半身だけ裸にされ、外気に当たった肌が冷えてクシャミが出た。
「ごめん ごめん
先にタンクトップ着ないとね」
そう言ってマリアは、やや慌てて、今度はタンスからタンクトップを出して、世良に着せる。
襟元にボタンが三つほど着いたパジャマの上着を脱がそうとして、下着ごと脱がす母、
当然、ゴム入りズボンも下着ごと脱がす結果になる・・・
乳児の時には確認?認識できていなかった、
可愛いぞうさんが外気にさらされる。
「おぉ」
思わず、感嘆の声が出てしまう。
「パンツも変えちゃおっか」
マリアは気にする素振りも無く、新しいパンツを引き出して、
器用に両手でパンツを足が通しやすい様に、四角く広げる。
立ってみて、分かった事だが、足元がグラつく
筋力の無い幼児が、自力で立って居られる時間は余り
長く無さそうだ。
早くこの身体に慣れないと・・・
女神とのお茶会で、元の自分の身体が使えていたので、
幼児の身体には全く慣れていない。
ヨロヨロと覚束ない足取りで、マリアの側により、
屈んでパンツを広げる母の肩に捕まって、何とかパンツに足を通す。
「うん 良くできました。」
自力で履いたか怪しい所だが、近付いた頬に
マリアは「チュッ」と音の出るキスをする。
そうやって、自力か他力か曖昧な着替えが終了し、全ての着替えが終わると
マリアは無造作に、世良を抱き上げ居間に降りて行く。
マルズは自分だけで、歩いて居間に行きたかったのだが
3歳児に、素早い階段昇降や、スタスタ歩くのは難しそうだと
少し、ガッカリしながら、マリアの抱っこを受け入れた。
まだ、幼児の日常が続きます。