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2. 予期せぬ訪問者

ボンヤリとした視界に、やや色の識別がつき始めた。

握力は・・・おおよそ杖ーマジックウォンドー程度が持てるくらい?

手元にある物なら見ることは出来る。


しかし、物体の名称は分からない・・・

今は母親らしき人物からモコモコとした感触の獣の人形?を

渡されて、確認の為に長い耳の部分をハグハグと口に入れているところだ。

皮膚の触覚より、舌での触覚のほうが圧倒的に情報量が多いのだ。


「世良ちゃん ウサギさん チュキでちゅか〜」


満面の笑顔のマリア。

我が子がウサギのヌイグルミと戯れる姿を、スマホの写真に撮りまくる。


「マリア・・・いい加減にしなさい

そんなにカシャカシャしてたら煩くて世良が寝られないでしょう。」


「だって 世良ちゃんのメモリーを撮り逃したくないんだもん。」


母親のマリアを、祖母であるアメリアが嗜める。


マルズはカシャカシャと鳴るスマホに興味津々だ。

手を伸ばしてマリアに見せろとせがむ

幼児は視力より、聴力の方が発達しているようだ。


もちろん声も出ないし、腕でを伸ばしてスマホを受け取れもしないのだが・・・


手足をバタバタさせて、手に持ったウサギのヌイグルミをブンブンして

「だぁぁ うぅぅ」と、精一杯のアピールして見せる。


「激カワ!何アピールなのぉぉ」


口に銜えていた、モコモコのピンクのうさぎのヌイグルミを、

小さな手に握り直し、懸命に振る乳児に、スマホを動画モードにしたマリアが、

至近距離で撮影し始める。

まさに親バカ炸裂である。


「ねぇ スマホが見たいんじゃない?」


「ほんと?じゃちょっとだけですよ~」


といって、マリアが先程撮影した〝世良ちゃん〟の写真を画面に写し、

マルズの目前に近づけてくれる。


そこにはピンクのモコモコのミミを口にくわえた赤ん坊の姿。


これ・・・もしかして儂なのか・・・

白っぽい上下の繋がった、絵の書かれた小さな服を着て、

笑顔で玩具と戯れている乳児。


色の白い肌に、薄い茶色の瞳に金色の髪

可愛らし過ぎないか?


・・・もしかして儂、女子になったのか?

うぅ・・確かめる術がない・・・


ひとしきりショックを受けて

ふて寝を決め込むつもりだったのだが・・・

熟睡してしまった。


いかんせん未だ乳児だ、睡眠より重要な問題など存在しない。


ーーーーーーーーー


『あぁ あぁ 聴こえますか?』


夢の中で、奇妙に響く声が聞こえる。

マルズは自然と、声の方へ体を向ける。


立っている・・自分

不思議に思い手を見ると


大人の手だ。 顔にも触れてみる。

馴染みのある感触、 前世のマルズ・エラーダ・ギムウェルズの体だ。


「ヨォぉッシャー」


前世でも口にした事の無いような歓喜の声が飛び出した。

軽くジャンプしてガッツポーズのオマケ付きで


『喜んでいるトコロ大変恐縮ですが、これは、貴方の前世を基にした ただの夢ですよ~』


声のことをすっかり忘れて、浮かれた自分を「ゴホン」と意味のない咳をして

誤魔化してみる。


『悪いわね ぬか喜びさてしっまったみたいで』


苦笑気味に響く声は、そのまま説明を続ける。


『先ずは、本人確認を 大賢者 マルズ・エラーダ・ギムウェルズさんで間違いないですか?』


「あぁ 相違ない」


先程の浮かれ具合は無かった事にして

威厳のある風に対応する。


『良かった今度は人違いじゃ無かったわ』


声の主が不穏なことを口にしていたが、今は気に留める事が出来なかった。


今世に生まれてから、約3ヶ月の間、一度も夢を見た覚えが無い。

夢でも何でも自分が思考出来、自力で活動出来る事に心が浮つき気味なのだ。


ややあって、自分の元に光に包まれた 女性が降臨する。


『はじめまして 大賢者 マルズ・エラーダ・ギムウェルズ

私はエンデバイヤの召喚の女神、エルグランダよ』


外見はハイエルフの女性に見える。


スラリとした長身、人族にはない横長の耳に、20歳前後の外見。

腰まである金の髪は緩くウェーブがかかっている。

エルダーエルフとの違いは外見だ。ハイエルフが20歳前後の外見なのに対し、

エルダーエルフは、外見の年齢が人族の40歳前後位までは成長する。


降臨した女神がパチリと指を鳴らすと、

もともと何もなかったハズの空間に、円形の花園とテーブルセットが出現した。

足元まで隠れる白い長いドレスを翻し、女神がイスに腰掛ける。


『一度、違う人間の所に行ってしまって、来るのが遅れてしまったの ごめんなさいね』


やはり、聞き間違いでは無かった・・・

一体、何処の誰の元に降臨したのだ・・・


仮にも女神、エンデバイヤの者なら大騒動では無いのか・・・

少々気にはなったが、聞いてどうなるものでも無い

やや(いぶか)しげな目を向けるに留まった。


女神はテーブルに頬杖をつき、ティーセットでお茶を飲み、

はぁ、と大きなため息を吐くと


『本人確認が取れた所で、今回の転生について少しお話ししましょうか』


マルズにも対面の椅子に腰を掛ける様に促す。

女神は笑顔だが、その前の大きなため息が気にかかる

マルズは緊張の面持ちで、黙って指示に従った。





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