1. 最初のピンチ
ままならない・・・
恐らく出産から数日は経っている
だが、何も出来ない
寝て起きて、母乳を貰い、又寝る
視界はボンヤリしたまま
体を自由に動かす事も出来ない
はっきり言って苦痛だ
3000年生きて来て、ここまで他人に介助された事は無い
赤ん坊ならば当然の事が、前世の記憶の所為で拷問の様だ
羞恥で死ぬレベルだ
なのに眠くて思考が纏まらず 結果
「うぅぅ ふにゃぁぁ」
と、泣き声を出す。他の声が出せない
そして
「世良ちゃん、まだお腹一杯じゃ無いんですか〜」
と、母から母乳を飲まされる
「んくっんくっ」
差し出されれば飲む、そして寝る
このままでは精神的なダメージで前世の記憶がトビそうだ
ーーーーーー
苦痛の日々を多めに眠る事で、どうにか対処し
また数日、
どうやら移動したらしい
母親らしき人物に抱かれ騒がしかった建物をでた
「これからお家に行くからね〜」
揺り籠の様なものに寝かされ
暫しの後、また別の場所へ
今度は乗り物の中なのか?
軽い振動と、騒音と共に乗り物が移動を開始したらしい
ーーーーーー
「本当に良く寝てるわね、せっかくの可愛い瞳が見れないのが残念」
ハンドルを握りつつ、バックミラーに映る孫の寝顔にアメリアは相好を崩した
「赤ちゃんは寝るのがオシゴトなんでちゅよ〜 お母さんは運転に集中して下さ〜い」
マリアはベビーシートで眠る我が子の小さな頬を指で撫でながら
バックミラーを孫に合わせる母を注意する。
マルズはこしょこしょと指を当ててくる、マリアの指を払いのけようとするが
側からは、寝ぐずって指を握り返す可愛らしい赤ん坊だ。
精一杯の抵抗も、ただただ可愛いだけである。
自分の指を懸命に握り返す我が子の可愛さに、スキンシップが一層加速する
もはやなす術無しである。
乗り物が止まるまで母はマルズを構い倒した。
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車が住宅街の一角、広い玄関アプローチのある白い壁のモダンな造りの一軒屋の前に停車する
都内に有る一軒屋としては立派なものだ。
キーケースの中の自動扉用のボタンを押すと、アメリアは慣れた動作で車を車庫へと駐車する
「ただいま〜」
自分のウチでは無いが、ベビーシートを外し孫を抱くマリアに変わって
ドアを開け、車のキーを玄関の靴箱の上に置き、
アメリアが玄関で待っていた大成に声をかける。
「お帰りなさい、マリア お義母様も ありがとうございました」
アメリアに続いて我が子を抱いたマリアも家の中へ
「・・・世良が凄い顔で寝てるんだけど・・・」
最早定番の様に、眉間に皺を寄せて、苦悶の表情で眠る我が子を、
大成が苦笑気味にマリアから受け取ると、指で眉間の皺を伸ばす。
「車の中でマリアが構い倒したのよ 寝ぐずって可哀想だったわ」
「だって世良ちゃんの反応がいちいち可愛いから」
「マリア・・・」
リビングのソファに腰掛け、哺乳瓶でミルクを飲ませながら、
大成は呆れ気味にマリアを見つめる。
「はい はい程々にしますヨーだ」
マリアは荷物の片付けと着替えの為、不貞腐れ気味に、二階の寝室へ上がって行った。
そんな中、赤ん坊のマルズはジッと大成を見上げている。
「あら、お目々ぱっちりね」
孫の顔を除き込んでアメリアが破顔する。
「お腹が空いてグズってたのかな?」
視界がボンヤリしているが、どうやら自分の父親らしい
女性率の高かった今世で、やっと身近に居る同性だ
やや低い声に安定感のあるしっかりした腕、落ち着く
そして何より
母乳以外の食べ物!いや、飲み物か?
味はイマイチ分からないが今世、初の母乳以外の食事
感動に打ちひしがれ 脱母乳の喜びに浸っていると、
「何で・・何でミルクをそんなに嬉しそうに飲んでるの?
おっぱいあげる時はイヤイヤが凄いのに〜」
ラフな部屋着に着替えてリビングに戻ったマリアが信じられものを見るように
世良の顔を覗き込み、大成の横で騒ぎ始める。
だが、会話の内容を理解できないマルズは、ご機嫌でミルクを空にして
安定感ある父の腕でグッスリだ。
そう、又、今日もグッスリと眠ってしまったのだ・・・
今日こそは自分を【鑑定】して現状の把握をするハズだったのに・・・
有体精霊種だったマルズは知る由も無い事だが、
乳児の平均睡眠時間は16時間から18時間、飛び石の様に睡眠をとる為、覚醒時間がほぼなきに等しい
マルズが鑑定のスキルが使える様にななるには早くとも、
首が座って外界のものを認識できる様になる生後、3ヶ月位、
もちろんその間、ミルクのみを主食に出来たハズも無く、
おしめを替えて貰い、入浴も介助付き、母乳を飲む日々が続いたのである。
だが、そろそろ悟りが開けそうだと諦めかけた頃
その日は突然やって来た。
まだ3回目、up時は緊張します( ̄∇ ̄)
勢いでupしてましたが、修正もろもろの為
しばらく修正作業に偏中します。
兎に角、名前の誤字が酷い・・・反省してます。