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00 食糧採集とその後の予定

食糧採集と今後の予定



  ダンテたちが王都を脱出してから2日目の朝、小川のほとりに馬車は止まっていた。


  早くから一行は忙しく動いていた。 動ける者は、ここでできるだけの飲み水と食糧、薪や薬草などの物資を確保するために汗をかいた。 


  食べられるキノコや木の実や種、小動物の肉、山菜と魚――人数分の食糧を確保するにはそれなりの労働が必要だった。 エビやカニや貝などは容易に捕れたが、何分“足がはやい”ので、その日の内に食べる分だけを捕った。



  少女と男の子は、はしゃいでいた。 特に少女にとっては、男の子以上に何もかもが初めての体験だった。 小川も、木々も土も、生き物も、それまで想像することしかできなかった世界がそこにあるのだから、無理もない。


  青い空の下で、はつらつとした声を森に響かせる2人の傍ら、優は大変そうだった。 2つ年上の少女と8つ年下の男の子のおもり役。 額から垂れてくる汗をぬぐい、痛めた身体を引きずりながら、2人について歩いた。 それでも優は、その昔にダンテが優に対してしてくれていたように、本当に危険なこと以外は手も口も出さずに2人を見守った。 歩き始めたばかりの彼女たちが安全に失敗を経験できるように。



  一行はこのあと、北へ延びる道をまた進む。

ただし、移動のペースは昨日の半分ほどに落として、ダンテたちは休息を取りながら2・3日間かけて、ゆっくりと山岳地帯手前の国境を目指すことにした。 王都からの追手も、待ち伏せも、今のところ心配はないと判断したからだ。


  国境線には、人や物の出入りを防止するための物理防壁という壁があって、そのままでは出国することができない。 予定では、国境線の少し手前で適当なところをみつけて宿営地を張り、そこで王都が陥落するのを待つことになる。

  敵国に攻め込まれ、王都の隔離防壁が破られれば、主電源が落ちる。 そうなれば、国境側の物理防壁も王都からの電力供給が絶たれて消える。 その隙を狙って国境を越えるという算段だ。


  ダンテたちが国境を越えなくてはいけない理由は1つ――この国がもうすぐ亡ぶからだ。 国内に残っていては、大半の王国の民と共に、同じ末路をたどることになる。


  侵略者達は王都を完全に制圧した後に、再び物理防壁を作動させるだろう。 それは、手に入れたばかりのこの国に人外のモノたちが侵入してくることを防ぐためでもあるが、一番の目的は、戦利品の奴隷たちを内側に囲い込み逃がさないようにすることだ。

  もちろん、物理防壁を再び作動させることには政治的な意味もあって、情報漏洩を防ぐ目的もある。

国境が再び封鎖されたあと、この国は敵国に隅々まで蹂躙される。 国際社会で謳われるような人道などというものは、閉鎖された場所には届かないのが世の常だ。


  淑女のもつ情報では、敵国は兵器としての魔獣を人工的に培養する技術の開発に成功しているらしい。

何にしても、選択肢はない。 ダンテたちにとっては、人族の起こす強大な争いに巻き込まれるよりも、国境を越えて人外の世界へ出る方がまだいくらか安全なわけだ。



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