第39話 勇者の学校見学と手料理
「見えてきました、あれが魔女の館です!」
勇者の広治と一緒に魔女の館へ向かうエマ。
自然を愛する女性が好みそうな館だった。
「ようこそ勇者様、私はこの館のサマンサよ。こちらは私の使い魔のフギンとムニン。大鴉なの。」
「よろしくな!」
「エマの授業を見ていくのだろう?」
どうやらサマンサという女性が館のリーダーで、その使い魔である大鴉たちがエマの教師のようだ。
ハーブや果樹の世話を終えると、フギンとムニンが教師となって座学が始まった。
ハーブの効能についての暗記や書き取り、ここで未知の単語の読み書きを学び、ハーブを調合した薬・・・漢方薬のようなものだろうか。
その調合方法を学び・・・ここでも読み書きか。
読み書きの後は?
「そうだエマ、いつも調合ノートのレシピ通りの分量の素材があるとは限らないからな。」
「紫根は100gあるが、当帰は2gしかない場合、紫雲膏は最大で何g作ることができるかな?」
手書きの調合ノートを基に計算・・・ここで算数を学ぶのか。プリントでリンゴの計算をするよりも身に着くな・・・。
「正解だ!」
「さすがエマ!」
計算問題に正解したエマの頭をフギンとムニンが撫でまくる。
「ではその分量で調合だ。」
「薬の調合は充分に気を付けるんだぞ!」
フギンとムニンに促され、調合スタイルに着替えたエマが自筆の調合ノートを見ながら紫雲膏を調合する。」
紫雲膏って、確か花岡青洲が処方した軟膏だっけ。有名なやつだ。現代でも漢方薬局で使われていたっけ。傷や火傷、皮膚炎にも効くって聞いたことあるな。
「できました!」
ふう、と小さな手で額の汗をぬぐうエマ。
「100点だ!」
「よくできた!」
と大鴉たちもご満悦だ。
これも一つの理想の教育だよなあ。
「勇者どの!」
「すっかり放ってしまって申し訳ない・・・。」
一時的に広治の存在を忘れていたフギンとムニンが謝罪する。
「とんでもないっすよ!とても素晴らしい授業でした。子供の個性にもよるけど二人の授業はエマちゃんにはあってるみたいですね。超勉強になりました!」
勇者が深々と頭を下げた。
その後、エマを置いてきぼりに勇者と二羽が意気投合し、再び会って教育について意見を交換しようと固く約束を交わした。
「ほうとうって何ですか?」
「俺の地元の郷土料理で、ぶっというどんて言うと伝わるかな。
魔界にホームステイできると聞いて持ってきたんだ。」
今日のランチは勇者が家庭の味を振舞ってくれるらしい。
「すみません、大事な仕事場をお借りしてしまって。」
勇者が唄子に頭を下げる。
「謝らないでおくれ!あたしも楽しみにしていたんだ、間近で作り方を覚えさせてもらうよ。」
「はい、俺のはたいしたもんじゃないですが、家庭の味ってことで。大き目に切ったかぼちゃが入るのが特徴かな。」
勇者が手際よく野菜と豚肉をカットしてゆく。
「学生寮で暮らしているので一応、自炊してるけど母ちゃんみたいには切れないんすよ。」
「いや、上出来だよ。自炊は続けるのが一番大変なんだ。」
「豚肉、かぼちゃ、白菜、大根、にんじん、ねぎ、しめじ、油揚げをカットしたら、鍋にたっぷりの出汁と野菜と肉を入れて、ひと煮立ちしたらほうとうを加えて、みそを加えて・・・出来上がりっす!」
「野菜と肉から出汁が出て美味しいです!」
「寒い日に剣道部の練習でクタクタになって帰った時の夕食がほうとうだと嬉しくて、贅沢なもんじゃないけど俺にとって料理っていうとほうとうなんす。・・・つか、唄子さんのおかず、美味いっすね!」
唄子がぱぱっと作った揚げ出汁豆腐と豚肉の野菜巻きが激ウマだ。
こんな手の込んだ美味いものを、あんなに手早く作れるなんですごいっす!
美味い!美味い!と唄子のお惣菜をお代わりした勇者は、唄子に料理を教わる約束の握手を交わした。




