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俺とあいつの秘密の七日間  作者: シソ熊
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2日目⑤

よろしくお願いします。


音ゲーの推しが来てくれない…。

陽は帰りに用事があるとのことで、穂乃香と優弥は先に下校していた。


陽と穂乃香、優弥の三人はすぐに近所というわけではないが、家は近い方だ。

穂乃香と優弥は朝に陽と会った道のあたりへと来た。


あの部分はY字路となっており、帰り路ではここで普段、穂乃香と優弥は陽と別れる。


「ねえ。い…」

「わかってるよ。行こうか。」


穂乃香の声に対して、優弥はさえぎって頷く。


二人は自分たちの家の方向でなく、陽の家がある方向へと向かっていった。



二人が歩いていき、陽の家の近くまで来た。


「あの、こんにちは。」

近くを歩いていた女性に声を掛ける。


「あら、こんにちは。」

女性は少し驚いたような表情を見せた後、にっこりと笑って会釈を返した。


そのまま女性が通り過ぎようとしたところで二人はその前に立つ。


「これから、時間ありますか?」

優弥が女性に声を掛ける。


女性は目をすっと細めた。

「ええ、お菓子も焼き終わったから。この後は時間はあるわ。」


女性は手に持っている紙袋を軽く上げて見せた。


「それじゃあ、ぜひおしゃべりでもしませんか。

私たち、あなたの話をよく聞いていたんで、興味があって。いいですか、雅さん。」


「もちろんよ。あなたたち、陽くんの知り合いでしょう。加藤優弥君と遠藤穂乃香さん。

私も少しだけ話を聞いたことがあって、興味があったのよ。」


興味を持っているようでうれしいと互いに笑いあう。


「せっかくだし、家に来る?お茶でもしながら話さない?」

「いえ、喫茶店とかにしましょう。」

優弥は焦ったような声で、女性の家に上がるわけにいきませんから。というとふはっと雅は笑った。


「南高校の一年生だっけ?」

「はい。」

雅はスマホをいじりながら、頷いている優弥に対してかわいいわね、と微笑んだ。


「せっかくお菓子をふるまおうと思ったのに。」

紙袋の中からラッピングされたカップケーキを取り出した。

キツネ色に焼けているそれはとてもおいしそうに見えた。


「ラッピングが丁寧にされてますね。誰かに渡す予定だったんじゃあないですか。」

「ええ、いつも陽くんに渡してるの。」


「あはは、陽と仲がいいんですね。」

「お菓子作りが趣味なのだけれど、毎日作っているから自分だけで食べるとカロリーが不安なんだもの。

だから代わりに消費してもらってるのよね。」


雅はスマホをいじるのをやめる。


「お待たせ様。いいお店を見つけたから行きましょう。」

カツンとヒールの音を鳴らしながら雅は歩き始めた。


「はい。そうだ!お菓子、せっかくなんでもらっていいですか?」

「ええ、ココア風味でもどうぞ。」

「おいしそうですね、ありがとうございます。」


そのまま三人は喫茶店に歩いて行った。


◇ ◆ ◇

今日も18時で、陽は下山していた。

タマさんという人は今日も遅かったらしく俺は会うことがないままだった。


今朝、穂乃香と優弥に会ったY字路まで来た。

穂乃香と優弥のことを思い出す。

「明日はもうちょっとな。」


美来との話から少しは態度を変えてみようかとも思うが、今更気恥ずかしさもあり、どうしようかと考える。


「あれ?」

Y字路の穂乃香や優弥の家の方面から雅さんが来た。


「雅さん。珍しいっすね。」

「ええ、知り合いとお茶をしててその後家まで送ってあげてたのよ。」


雅さんはどちらかと言えば送られる側ではないだろうか。

そんなことを考えながらお互い歩き始める。


雅さんの家の住所は知らないが、方向は同じだ。


「そうそう。今日もお菓子を焼いたのよ。」

俺が嫌そうな表情を隠さずに出す。もう、食い物関係なら遠慮はいらないと思っている。


「ひどいわ。知り合いは嬉しそうに受け取ってくれたのよ!」

「それって、その人は雅さんの料理食ったことあるんすか?」

「ないわ!」

「だろうな。」


またため口が出てしまった。

しかしそれはもはや詐欺ではないだろうか。


菓子の見た目の良さに騙されて受け取ってしまったに違いない。


「ほら、カップケーキ!ちなみにプレーン味よ。」

「あ、プレーン?なんすね。」


ちなみに、プレーンを知らないからの疑問形でなく、本当にこの物体がプレーン味であるかを疑っての疑問形だ。


「ええ、陽くん、前にチョコレートが苦手って言っていたじゃない。」

そうっすね、と頷く。

そういった気遣いはしてくれるのだ。ただ、気遣いが味として反映されないだけで…。


「まあ、じゃあもらいます。あざます。」

昨日は断ったし、その知り合いがもらったのだと言われると今日も断ることはためらわれた。


「もうちょっとありがたがってくれてもいいと思うんだけれど。」

もうっとため息だけついていた。


雅さんは基本的にそういった姿だけでも絵になるほどには美人である。


俺の家の近くの十字路で雅さんと別れた。


家に帰り着き、スマホを見るとメッセージが優弥から来ていた。

『穂乃香から聞いたんだけど、明日から朝は一緒にって事でもいい?』

Y字路で考えていたことを思い出す。

「これ断ったら、多分またしばらくチャンスなくなるよな。」


『ああ。穂乃香には俺からメッセージ送っとく。』

『了解。時間は今日と同じでいい?』

OKのスタンプを送り、穂乃香とのメッセージ画面を開く。


『昼休みで話してたやつなんだけどさ、明日の朝から三人で行かね?

時間は今朝と同じで。』


返信がまだ来ないため、メッセージアプリを閉じようとすると、すでに優弥からスタンプの返信が来ていた。


「こういうことするから、あいつ、ギャップ萌えとかって騒がれんだよな。気づかねえけど。」

うさぎが飛び跳ねて喜んでいるスタンプが返信できていた。


雅さんからもらった菓子のラッピングをとり、一口食べる。

「あれ?雅さん、前よりうまくなってんじゃん。」

いまだにまずかったが、食べれる味に進化していた。


スマホの画面には、穂乃香からの

『うん、わかった!Y字路でね!』

という返信が来ていた。


ありがとうございました。


2日目もあと少し。


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