2日目④
よろしくお願いします。
投稿してないのwasureteta-!!!
いや、まだセーフセーフ。
格好つければ恥ずかしい。
昨日と同じ過ちを犯した俺は、バツが悪くなり美来から目をそらした。
すると、自分の高校の校舎が見えた。
「あれ、俺が通ってる高校なんだよ。」
強引な話題変換だったが勘弁してもらいたい。なんせ、今の俺には逃げ帰るか話題を変えるかの二択しかなかった。
「へえ、ここから結構近いんだね。高校の名前なんだっけ?」
昨日は美来が幽霊だからこそ現在の話をしなかった。
しかし、死んでから40日程度ならば知識にそう差異もないし、そのような気の使い方は美来の気分を悪くさせるだけと今なら分かった。
「県立南高校。」
俺が通う高校は学費が安い県立で一応進学校だ。しかし、日本の首都にあるトップレベルの大学に行くのは毎年一人か二人程度のいわゆるなんちゃって進学校。俺ここに通ってるのも、単純に家が近いからである。
「そうなんだね!私は城北高校出身だから真反対だ。」
そう、俺や美来がいる町は高校が四つあり、位置関係が非常にわかりやすい。
城の北側にあるのが県立の城北高校。美来が通っていたらしい。
西側には、この街で唯一の私立である豊西高校がある。
東側には県立の東鶴高校だ。
最後に南側が県立の南高校で、互いが正反対の高校以外とは交流がある。
つまり、俺が通う南高校は豊西高校や東鶴高校とは、部活での練習試合などを盛んに行っているらしい。
実際、山があるからこそ城北高校とは疎遠なだけで、直線距離的にはどの高校も近い。
「部活は何してるの?」
「ああ、帰宅部だけど。」
えっ!とひどく驚かれた。三日連続で山登りしようとしている時点で帰宅部な気がするんだが。
まあその後、いや、と例外を思い出した。
「美来さんは何か部活は?」
「私は文芸部!本当は歌が好きだから、そっち方面を探したんだけど吹奏楽しかなくって。」
たしかに、吹奏楽部は大きな高校ならどこにでもあるが、それ以外の音楽系となると私立でなければ、県立ではないところが多い気がする。
「文芸部っつったら、俺の幼馴染と同じじゃねえか。」
穂乃香も文芸部だ。
「え?幼馴染いるんだ!それに部活が私と同じなんだね。」
そう言えば、昨日は幼馴染について話さないままだった。
そもそも昨日は幼馴染から逃げていたからこそこの山を登ったのである。
「ていっても、あいつたまにしか言ってねえけど。たしか、本当は週に3回あるけど、金曜日しか行ってねえな。」
月、水、金曜日にあるが、そのうち一日だけ。
よく考えれば、昨日は月曜日だったから、またサボったんだな。
「それも私と同じじゃない!」
美来はクスクスと笑っている。
「意外だな。」
部活をサボるというイメージを美来に持っていなかった。
「基本的には、高校外で歌のレッスンを受けていたから。レッスンがない日しか行ってなかったよ。
私の高校は、部活には原則的に必ず入らないといけなかったから入っていただけなんだ。」
ああ、なるほどな。と頷いた。
「ねえねえ、幼馴染と仲いいの?」
あまりされたくない質問だった。
美来の表情からして悪気はなさそうだ。そもそも、お互いをあまり知らない俺たちなのだから、少しでも互いの情報を得ればそこを掘り下げない限り会話も続かない。
だから、美来が悪くねえのはわかるんだが…。
「まあまあ、だな。」
悪い、と言って空気を悪くはしたくなかった。
「そっか…。」
しかし、俺の言い方が悪かったらしく、何かを察したようで、表情は気まずげだった。
「…何か、秘密がある気がする。」
言ってしまってもいいのだろうか、とも思った。
多分、俺は誰かに話してしまいたかった。
「秘密…か。何かを秘密にされているのが嫌なの?」
美来の言葉を聞くと、自分が小さい人間だと実感させられる。
「かもしれない。」
だが、美来の言葉を否定したいという思いでなく、違う気がした。
「たまに、わけわかんねえ時がある。」
美来は何も言わずに俺を見ている。
このまま続けることにした。
「俺の幼馴染は二人いるんだけどよ。今日も、二つあったんだ。
一つは、飯を食ってるときに、二人で急に声を上げた。そんで、片方が急にいなくなった。
偶然上げた声が被っちまっただけかもしれない。だけど、俺含めて三人で帰ってるときも、急に二人が何かに反応してからいなくなる。
もう一つは、あいつらに対して周りが変なんだ。それに、まるでいねえんじゃねえかって思う時がある。」
二つ目に関しては、自分でもうまくわかっていなかった。
空き教室がある方向へ二人で歩いて行っていた。
それ自体は、何か空き教室でしているのかもしれないから、疑問に思うくらいでここまで秘密だとかと思うことはなかったはずだ。
「あいつらは今日、二人で校舎を歩いていた。
その時、周りのやつらは何も反応しなかったんだ。」
「でも、あまり知らない子なら、わざわざ何もしないと思うんだけど…。」
美来の指摘は確かにそうで、挨拶をしない程度なら何とも思いやしない。
「すれ違う時に避けようとすらしないか?普通。」
当たり屋でもなければ、体を少しずらすなり、目の前にいれば横にずれたりして避けるはずだ。
だが、あいつらとすれ違った人の中で、そういった対応をした者はいない。
全て、あいつらが避けていた。
「まるで、俺以外誰もあいつらが見えていない。」
その時、多分俺が感じたことはわけわかんねえ事象が嫌だったんじゃない。
「その二人は幼馴染だったんだよね。
気を悪くしたらごめんね、もしかして陽くんは…、三人で幼馴染のはずなのに、独りぼっちだと思った?」
俺が感じたのは、孤独感だった。
何かの秘密が原因で急にいなくなる幼馴染。
事情が分からず、ついていく事も出来ない。
そして、時には存在すら怪しいのだ。周りはまるであいつらが存在していないように扱うんだから。
「…意味わかんねえよ。」
うつむき、自分の頭をぐしゃぐしゃとかき回す。
あの時もそうだった。中学のころ、俺は周りのやつらの理由がわからなかった。
「私さ、陽くんのこと、知らないことのほうが多いよ。」
美来の強い声に、俺は思わず顔を上げた。
「陽くんがどうかは知らないけど、私は陽くんと離れているとは思わない。
秘密を共有しなくても、お互いの関係は築いていけるでしょ?」
そこまで言ってから、恥ずかしそうに美来は笑った。
「よく言えるな。漫画かよ。」
「へへ、幽霊を信じていなかった私にとって、今の私は半分漫画みたいなものだよ。」
まあ、しかし
「あって二日目の女子に慰められる俺のほうが恥ずかしがってしかるべきだな。」
自虐を言って見せた。
「一日目にナンパをしてる時点でなかなかだよ。」
それはどこかの俊のせいだ。
話していけば自分を客観的に見ることができた。
たぶん、急に置いてけぼりにされてることは俺が同情されるべき点かもしれないが、それ以上にあいつらから離れて、嫌悪感を見せすぎていた。
「恥ずかしい奴ついでに、仲直りでもしてみようか。」
たぶん、今ならできる気がした。
「私も応援するよ!応援歌でも歌いに行った方がいい?」
「やめてくれ。」
天然だろうか、冗談だろうか。
頼む。冗談であってくれ。
これが天然だったら、いつか祝福の歌でも歌われそうだ。
がっかりした表情は、まるで前者のようだった。
いや、まじでこれは頼む。
ありがとうございました。
明日も割と遅い時間の投稿になりそうです。