2日目②
よろしくお願いします。
入れたい描写が多すぎるけど、全部入れると一日が48時間の世界になりそう…。
「おい、俊ー!」
「あ、高橋!ごめん、ちょっとバレー部のやつ来たから行ってくるな。」
高橋というらしいバレー部の人の元へと俊は行き、俺と穂乃香の二人になった。
俺が穂乃香をちらりと見るとタイミングが同じだったらしく、目が合った。
穂乃香は一瞬間抜けな顔をしてからニコッと笑った。
「そういえば、昨日はどうしたの?」
急に聞かれた内容が一瞬わからなかった。帰りのことだと察するがとぼけることにする。話せば気まずくなるに違いないし、そもそも山であった美来のことは秘密だ。
「どうしたって何が?昼なら俊と食べてたよ。」
「あはは、お弁当じゃなくて帰りの話だよ。もう。」
やはり、ごまかすことは許されないらしい。
「昨日さ、私と優弥で校門で待ってたのに全然陽ってば来ないんだもん。」
穂乃香はこちらを上目遣いしながらにらむというテクニックを見せた。
良くできるな。へたすれば白目に見えそうなんだけど。
「約束してなかっただろ。」
「だって、陽は部活に入ってないからいらないかなって。いつもまっすぐ帰ってるでしょ?」
空気が怪しくなってきた。
穂乃香が尋問めいたことをしたことはあっただろうか。
まあ、そもそも昔は幼馴染から逃げてはいなかったが。
「学校にいたんだ。」
へたに勉強していたといえば怪しまれるだろう。俺が学校で勉強するために残るタイプでないことは自覚している。さらに、校門にずっと幼馴染がいたなら、俺が入れるのは山と学校内しかないが、山にいたとは言えない。
「へえ、ずっと学校に?よく先生に帰らされなかったね。」
「別に閉まる時間までいたわけじゃねえし、三年はそれこそ遅くまでいるだろ。」
弁当を食べ終わり、追加のパンを開ける。
正直この気まずさで食べたものの味があまりしないが、午後のためにも食べなければ。
俊はいつ戻ってくるだろうか。
俊のほうを見ると、もう少しかかりそうだった。
「私ね、最近寂しいんだ。」
穂乃香の声に、顔を戻す。
「ほら、前は幼馴染三人でいたのに。ねえ、陽の今日の放課後の時間も、私たちにちょーだい?せっかくだし、どこかに寄り道とかしようよ。久しぶりに遊びたいんだ。」
穏やかな笑顔だった。
「たーだいまあ!」
「遅かったな、俊。」
へらへら笑った顔と大きな声で、重い空気が吹き飛ぶ。
「あは、びっくりしたよー。」
俊のほうを見て、穂乃香は苦笑していた。いつも通りに戻っていて少し安心する。
「それじゃあ、私、もう行くね。次の時間の予習しなきゃ。」
ばいばーいと俊は手を振っている。
言えるタイミングは今だけだろう。
「じゃあな。あと、放課後はしばらく用事あるから無理。他の時間はとりあえず連絡くれ。」
こちらも譲歩をしなければ。放課後につかまり、美来との約束を破るわけにもいかない。
「ええー!けちー!」
口を尖らせながらそう言ってから、穂乃香は教室を出ていった。
「うーん、穂乃香さん、意外とガード固いんだなー。」
俊が考える人のようなポーズで言っている。
「お前にとっては誰でも耐久値カンストじゃなくて?」
「ほう?そんなこと言ってたら、俺がモテてもモテの秘訣を教えないんだからね!?」
「俺、信頼ある商品しか買わない主義だから。」
「どういう意味!?」
◇ ◆ ◇
「あはは、これからは朝一緒に行けそう。」
穂乃香は笑顔がこぼれるのを抑えられないまま廊下を歩いて行っていた。
教室で予習を始める。正直に言えば、予習は昨日のうちに済ませていたのだが、陽に言った手前やっておかなければならないだろう。
実はしていなかったと知れば、また少しの信頼を失う。陽は意外とちょろいので信頼はそう簡単には底をつかないだろうが、油断して減らしていくのも危ないのは事実。
「穂乃香ちゃん、めずらしいねー。」
「あはは、そうかな?」
聞いてきたクラスメイトに首をかしげて見せ、笑顔を作った。
あっという間に授業は終わり放課となった。
放課後に陽と帰れないことはわかっていたので、朝も行った教室に優弥と向かう。
「あれ?」
「どうしたの、穂乃香。」
優弥が軽く眉を顰める。
その表情には、疑問を浮かべており、声を上げた穂乃香を批判するようなものもあった。
優弥に答えず、何かを小さくつぶやいた穂乃香は、その後優弥の手を取って、教室への足を速める。
教室に入って椅子に座ってから、ようやく優弥のほうを見た。
「視線を感じたんだよね。多分、距離はあったと思う。」
「僕たちに対して?」
穂乃香はうなずく。
しかしもう、この話題に興味を失ったらしい。表情がころっと変わった。
「ねえ、これからは陽と一緒に大分いれそう。うれしいな。」
あはは、と穂乃香は機嫌がよさそうだった。
「僕たちが陽から離れなければね。一時期、陽といなかった時期もあったし。」
優弥の顔には後悔の表情があった。
「しょうがないよ。今だって、いつまでいれるかなー。少し、嫌な感じだからなー。
それに、放課後はダメって断られちゃうんだもん。」
「放課後はダメって?」
「一緒に寄り道とかしながら帰ろって言ったら、放課後はしばらく用事があるから無理って言われちゃったんだ。」
優弥は一度口を開きかけたが、何も言わずに教室のロッカーまで行く。
中に入れ込んでいたノートをぱらぱらと開きながら戻ってきた。
「穂乃香は嫌な感じとかよくわかるね。」
「優弥は鈍感だよね。」
優弥のしかめっ面を見てしばらく穂乃香は笑っていたが、それも収まり顔から表情がなくなる。
「まあ、私は陽に愛がいっぱいだから。」
悦に入った表情を見た優弥の顔は悲しげだった。
「ひどいな。僕はあんまり幼馴染が好きじゃないみたいな言い方をしないでくれよ。」
ありがとうございました。
でも、リアルの世界は1日48時間がいいな…。