2日目①
よろしくお願いします。
少しずつ遅くなっていく投稿時間…。
でも大丈夫!寝るまでは当日だから!!
「はあ…、おしっ、行くか。」
昨日、美来という幽霊に会った。
幼馴染たちに会わずに済み、無事に家に帰ることができた。
そして帰宅後は、夕飯を食べたりと普段と変わらなかったが、母さんは何かに感づいたらしかった。
「機嫌いいわねえ。ねえねえ、昨日なにかあった?」
「いや、別になんでもない。」
「あらあら、そうなの?うふふふふ。」
穏やかに笑いながら、見透かしたような目にいたたまれなかった俺は、さっさと学校に行ってしまうことにするのだった。
◇ ◆ ◇
通学路をのんびりと歩いていく。
「家がもうちょい遠ければ、チャリ通ができたんだけどな。」
駐輪場の広さの関係で、学校に近いと徒歩で来なければならない。
とはいえ、歩いて20分ほどで学校につきはするのだが、寝坊した時を考えると、自転車で登校したいものである。
「あっ。陽、おはよう!」
後ろから明るい声が聞こえて、ちらりと振り返る。
「穂乃香か、はよ。」
幼馴染の穂乃香が手を振っていた。にまにまと笑いながら、自然と隣にくる。
「はあ、穂乃香…、走らないでよ。陽、おはよう。」
優弥が走ってきた。二人でいたところを、穂乃香が置いてきたらしい。
はよ。とだけ言えば、穂乃香とは反対側の隣に来た。
隣に来ただけなのだが、あまりの近さに若干の窮屈感がある。
「おい、二人で俺を連行するつもりかよ。」
「あはは、陽は最近ツチノコだもんねえ。うん、どちらかと言えば捕獲かな。」
穂乃香がクスクスと笑いながら、自然な動作で俺と腕を組む。
「まじかよ。研究施設にぶち込まれないようにさっさと逃げねえと。」
そう言って腕を外そうとするが、なかなかどうして外れない。
なぜこんなに力が強いのか。
しかし、腕を振り払ったりまですれば、状況が悪化することは必然だ。
「あらら?陽くーん、どうかした?」
穂乃香が腕は組んだまま、上目遣いのコンボを決めるが、あいにくヒットすらしなかった。
「陽、穂乃香から逃げれやしないんだからあきらめな。」
「おい優弥、お前はそれでいいのかよ…。」
「まあ、僕たちが穂乃香様に敵うわけないからね。」
「ああ、たしかに穂乃香様はお強くていらっしゃる。」
「ちょっと、か弱い女の子に二人とも失礼じゃない?!」
ふはっと、息がこぼれる。幼馴染とふざけたのは久しぶりだ。
「ちょっと、陽も聞いてる?女の子にね…」
気まずさ、とかがなくなったわけではないけれど、こういう時間が嫌いになったわけでもないのだ。
「もー!陽ー!女の子の話を無視するなんて、モテないよ!」
わざとらしく穂乃香が頬を膨らましていた。両手を腰に当てている。ようやく組んでいた腕を外してくれて感謝だ。
「はいはい。それじゃ。」
いつの間にか学校についていた。教室が二人とは違う俺は、先に行ってしまうことにするのだった。
教室にはまだ俊はいないだろう。あいつは朝練中のはずだ。
何もすることがないけれど、不思議と気分がいい。さて、何をしようか。
◇ ◆ ◇
「ほら、言ったでしょ。優弥は押しが弱すぎるんだよ。」
穂乃香と優弥は二人で歩きだす。
「むしろ、無理やり腕組んだりできるのは穂乃香くらいだと思うけど。男同士で腕組んだり手を握ったりはしないし。」
「異性同士も同性同士も、人間同士であることには変わりないじゃない。腕があるんだから、腕は組めるでしょ。次はきっちり捕獲してね。」
穂乃香の超理論に優弥は肩をすくめながら歩き続け、二人の教室も通り過ぎた。
校舎の一番奥の空き教室までたどり着く。
そこまでですれ違う人に声もかけられず、まるで二人を全く意識する者はいなかったらしい。
いっそ、二人は空気になったようだった。
ためらうことなく空き教室の扉を開け、二人は教室に入っていく。
教室の机と椅子はほとんど後ろに下げられていたが、四つだけくっつけた状態で教室中央にあった。
カバンを地べたに適当において椅子には対面で座る。
「最近、やな感じだよね。」
廊下の方を見ながら、穂乃香がつぶやく。
「まあ、自分達にも非はあるさ。」
優弥もまた、廊下の方へ視線を向けてから穂乃香の方を向いた。
「納得してないくせに。」
「理解はしてるよ。」
理解と納得は別物だ。自分たちにも非があることは、責があることはわかっている。
ただ、それを認めたくはないし、だから納得なんてできやしない。
そもそも二人はまだ高校生。すでに理解ができるほどには成熟していても、納得したり飲み込んだりはしたくないのである。
「はあ、もう、大変なこととか嫌なことばっかり。」
「そうだね。穂乃香はテストもどうにかしなきゃね。」
「脛蹴るよ。」
もう蹴っていた。
◇ ◆ ◇
昼休みになった。
「陽ー!今日もボッチ飯かい?」
俊がまるで犬のようにやってきた。
…いや、尻尾を振ってるみたいだという意味で。
「へいへい」
面倒くさかったので適当にあしらえば、「辛辣ッ!傷ついちゃうんですけど!?」とわめきながら前の席の椅子を拝借していた。
「なあなあ、今日の朝めっちゃ機嫌よかったけど、なんかあった?」
俺は俊にすらバレるほどわかりやすいのだろうか…?
いや、俊はモテに対して馬鹿なだけで、人の気持ちを察するのはこれで結構不得手ではなかったと考え直す。
「あー、なんでも、いや。」
少し悩むが、言おうか。
「幼馴染と今日来たんだ。」
こいつは俺と幼馴染のことを気にしていた。
そんな奴に言わないのは不義理ではないだろうか。
別に俊はからかわなかった。
「ああ、それで!良かったな。
まあ、寂しいときは俺のところに来ていいんだからな?」
気を遣っての冗談めかした発言だとはわかっている。
「お前が寂しいときには、慰めてくれる彼女でもいればいいけどな。」
しかし、どや顔は異常にむかつく。
「あああああ!そういうこと言っちゃいます!?じゃあ、もう陽子ちゃん俺と付き合って!?」
陽子って誰やねん。
もはや言う言葉もなく、あきれ果てていると…。
「あっと…、お邪魔だったかな?そういうご関係…??」
「ああ、だから陽、いや、陽子さんは昨日、その人を体育の授業で探してたんだ。妬いちゃうね。」
最悪のタイミングで穂乃香と優弥が来たのだった。
「そんなわけねえだろ。目え、節穴かよ。」
「ちょっと、ツンデレももう少しかわいくやったほうがいいぜ、陽子。」
ニヤついている俊の目を物理的に節穴にすることは許されるだろうか。
「ねえ、陽!いっしょにお昼食べよ!」
穂乃香はにっこりと笑っている。
「俊が一緒だけどな。」
もともといた俊にどこかに行ってくれというのもお門違いだ。それに、俺にとって俊といるのは嫌いではない。…と言えばまた面倒なことになるんだろう。
「ああ、もちろんかまわないよ。僕たちの方が遅かったし。二人の邪魔はしないから安心して。」
「そろそろマジでてめえの目を本物の節穴にするぞ。」
「おっと、それは勘弁。」
俺と俊、穂乃香と優弥の四人で話ながら弁当を食べていく。
「加藤優弥君と遠藤穂乃香チャンだっけ?」
俊が聞く。よく覚えてたな。
「ああ、優弥でいいよ。」
「正解!穂乃香さんとか、好きに呼んで。」
うん、今日のきんぴらうまい。あとは、卵ふりかけじゃなくて梅干しだったら完璧だったな。
じじくさいと言った俊の卵焼きを奪ってやる。それなら洋食だけ食っとけ。
「お前んち、卵焼きにひじきいれてんのな。」
「そうそう、俺が肉以外あんまり食べないから、少ない量で肉以外をいろんな種類食べれるように入れられる。たまにピーマン入りハンバーグとか作ってくれるんだよねー。」
「よう・・・いや。」
幼稚園児への対策か、と言いかけたが、今日は幼馴染もいることだし、二人の前で恥をかかせるのはやめてやろう。
「あー、私も幼稚園のころは良く作ってもらってたよ!」
おい穂乃香。それ以上はやめろよ…?
「まあ、ピーマンと肉って意外と相性いいよね。肉詰めとか青椒肉絲とか。」
ナイスだ、優弥。俺は肉詰め派だ。
まあまあいい空気で昼休みが過ぎていっていた時だった。
「えっ?」
「ちっ。」
穂乃香と優弥は突然、同時に声をあげた。
優弥はスマホの電源を入れてから数度操作をしている。
「ごめん、クラスメイトから、ノートを見せろってメッセージが来たから。」
そう言って荷物をまとめる。
「おっ?えっと、優弥君、お昼は?」
「クラスメイトにノート見せながら食べるよ。貸していて、返し忘れられても困るから。」
その後優弥は去っていった。
穂乃香は優弥の行った方をちらりと見てから、また弁当を食べ始める。
「んー、穂乃香さんって優弥君と結構仲いいの?」
俊が今更そんな質問をした。
「あはは、陽から聞いてない?私達三人で幼馴染だよ?」
その通りで、俺と二人はともかく、穂乃香と優弥が仲がいいかは今更じゃないか。
ありがとうございました。