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俺とあいつの秘密の七日間  作者: シソ熊
2/16

1日目②

予約投稿はできる気がしないのでしません(開き直る)。

そのため、投稿時間はわりとバラバラです。


シリーズにちゃんと設定できました!

シソ熊 は レベルアップ した!

「…幽霊って、あの、世間一般的に言われる…やつか?」

本人にこんなことを聞いていいのか。ためらいがちに聞いてみると、当の本人は意外と、あっさりとしていた。


「そうそう、たぶんその認識で合ってるよ。ちょっと前に事故にあってね?私は割とすぐに受け入れられたなあ。自分がもう生きてないんだってこと。それで、ふらふらしてたんだけど、なんだかこの山に来てみたくなってね。それから住み着いてるんだ。」

「そっか、あー、安田さんは…」

「あ、美来でいいよ。」


ずっとにこにこと笑っている。ずいぶん明るいんだなと思った。そして、さっき俺が思わず質問をしてしまわなかったことを良かったと思う。死んでしまったのに、明るいやつだな。なんて、言うべきじゃない言葉だ。死んだことなんて当然ねえから、わからない。だから、俺には美来が苦悩があって乗り越えたのかもなんてこともわからない。


「美来さんは何してんだ、普段。今、俺、暇なんだよ。」

さすがに、初対面呼び捨てはハードル高い。正直、名前呼びも迷いどころなんだが、まあいいだろう。


「歌ったり、おしゃべりしたり…かなあ。」

「おしゃべり?この山、結構人来んの?」

っつうか、普通幽霊としゃべれるもんなのか。いや、今まさに俺は幽霊としゃべってんだけどさ。心霊現象の類と縁なんて全くなかったから、てっきり霊感なんてないと思っていたんだが、どうやらそうでもないらしい。いや、意外と幽霊とはだれでも喋れるものなのかもしれない。


「ううん、人はめったに来ないし、おしゃべりだってできないと思う。陽くん…でいいかな?まあ、陽くんが特別なんだよ。私、死んじゃった瞬間はさすがに理解できてなかったから、周りの人に話しかけたけど、ガン無視決められたからねっ。」

最後に美来はわざとらしくにやりと笑った。


地雷を踏んでしまった。だが、ここで謝んのは違うんだろう。


「へえ。んじゃ、俺としゃべりでもするか?ちょっと時間つぶさなきゃいけねえんだよ。」

「あはは、幽霊にナンパする人がいると思わなかったなあ。よし、物珍しいから乗ってあげる!」

やっぱりこれはナンパなのか。どっかの俊がうつってしまったに違いない。

◇  ◆  ◇


二人で地べたに座ってしゃべり始めた。まあ、美来は少し浮いてるけれど。

といっても、大した話題なんてないから、中学どうだった?とか、ずいぶんとぎこちなかったんだが。


「ああ、そうだ。さっきから気になってたんだが、意外と浮いてねえんだな。こう、幽霊って1メートルくらい浮いてるイメージだった。」

「あー、わからなくもないかな。でも、そんな高く浮く必要もないからなあ。それにほら、私さっき、普段はおしゃべりしてるって言ったでしょ?その人が地面すれすれレベルにいるから、それに合わせると、私もこの位置になるんだよね。その人、ずいぶん身長低いし。」


そういえば、さっき、おしゃべりしてるって話してたな。


「いやちょっと待て。地面すれすれレベルってどういうことだ。」

「ああ、その人も幽霊なんだよ。なんか、ずっと幽霊らしくって、いろいろ詳しいんだ。」


なんでも、タマさんというらしい。ちなみに、猫みたいな名前ですね。と言ったら怒られたそうだ。


「そう、それでね?タマさんっておっとりした美人さんで、十二単みたいなの着てるの。」

「へえ、平安時代かなんかから来たみたいだな。」

「あはは、案外、そのくらいからずっといるのかもね。」

そうだとすれば、ずいぶんと長生きだ。いや、霊だからこの表現は違うか。


「知ってる?ここね、お城の跡地みたいなところがあるんだよ!タマさんはその近くにいて、私も午前中や夜はそこらへんにいることが多いかな。お昼は歌うからここにいるんだけどねー。」

「ああ、城の跡地か。知ってる知ってる。」

「えー、知ってたんだね。自慢げに言っちゃったの恥ずかしいやつだ。」


頬を少し赤くしながら、美来はそう言ってへらりと笑った。

優弥から話を聞いたことがあったから、思わず知っていると言ってしまったが、知らないとでも言ってやった方がよかったかもしれない。


「でも、タマさん今日はここに来ないなあ。」

「ん?普段は城周辺にいるんじゃねえの?」

「うん、そうだよ。でも、暗くなってきたら、そろそろ帰っておいでって、迎えに来てくれるの。」

「暗くなってきたら?あ、やべえ。」


腕時計を見る。気が付けば、もう六時だった。別に門限なんてものはないが、遅く帰るのがいいことっつうわけでももちろんない。


「わりいけど、俺はそろそろ帰るな。時間も時間だからよ。」

腕時計を美来に見せながら言った。この時間なら、優弥たちもすでに帰宅しているに違いない。


「そうだね。気をつけてね。ああ、そうだ。一つお願いがあるんだ。」

ずっと笑っていた美来は、少し困ったような表情になっている。


「私のこと、内緒にして欲しいの。」

「ああ、別に構わねえけど。」

そもそも、幽霊にあったなんて、誰も信じやしないだろうし、わざわざ、噂を広める趣味もない。


「ならよかった。それじゃあね。」


美来は手を振っていたが、まだ、何か言いたがっているにも見えた。


「どうかしたか?」

「あっ、と、何でもないよ。」


確実になにか言いかけたのを笑ってごまかしていた。


「…明日も来ても平気か?」

「…!うん!うん!大歓迎だよ、学校終わってから、ぜひ!」


俺の予想は正解だったらしい。美来は、さっきとはうってかわり、満面の笑みで頷いていた。

…後になってから恥ずかしくなってきた。じゃあな。そう言って、背を向けて俺は山道を駆け下りていった。



運動好きだからか、帰宅部の割には体力があるおかげで、すぐに学校まで戻ることができた。校門を見ると、もう幼馴染たちはいない。

のんびりと、一人で帰ることができそうだ。



◇  ◆  ◇


「おー、陽くんじゃあないの。手作りお菓子いらなーい?」

「ぜってえ、いらねえよ!」

自宅近くまで来たところ、声を掛けてきた女性がいた。近くの大学の薬学部生、雅さんである。雅さんはかなりの美人で、成績も優秀なのだが…、壊滅的な料理の腕前である。料理の見た目は悪くないのだが、味がひどいんだから、余計にたちが悪い。

それでもはじめのころは、断るのも良くないだろうと思って食べていたが、味は良くならず、お菓子を渡す頻度は上がるのを見て、最近では断っている。しかしまあ、思わずため口になったのは良くなかったかもしれない。


「あらあら陽くんってばひどいんだから。頑張って作った好意を無碍にして、女の子に恥をかかせるだなんて。そんな子に育てた覚え、お姉さんにはありません!」

「育てられた覚えないんすけど…。初めてあったのも去年じゃないですか。」

「ふうん?じゃあ、一年しか通常担当にならない担任の先生にはお世話になってないのかな?」

雅さんはにやにやと笑っている。結局俺が口論に勝つことができないのを、良く知っているのだ。


「はいはい、俺が悪かったです。すんませんでした。」

「んふふ、それでよろしい!」

にっこり笑った雅さんは、悔しいが、やはりかなりの美人だった。


そこで、俺を見ながら、雅さんはふと首を傾げた。

「んー、陽くん、今日はどこかへ行ったのかな?」

まあ、部活もない俺が遅い時間に帰ってくれば、そう考えるのも無理はないことだ。

裏山で時間をつぶしていたことを話す。


「へえ、裏山にね。知ってる?あそこってね、呪われたお宝があるんだって。」

「…お宝?」

忘れていた。雅さんは大のオカルト好きで、大学でもオカルト研究会に所属しているほどだ。しかし、大学の講義や実験が重なって、実際のオカルト巡りはできていないらしく、ひどく嘆いていた。


「へえ、お宝なんすね。」

「ん?そうだけど…。何かほかのがあるの?}

しまった。雅さんは結構鋭い。今の言い方だと、確かにそのようにとられても無理はない。

美来から秘密にするように頼まれているのに、失言しかけた。


「いや、城の話は聞いたことありますけど、お宝はなかったんで。城の話じゃないんだなって。」

なるほどね。と、雅さんはうなずいた。ごまかせたことに、こっそり安心する。


「そう、あそこにお城があったのは、知ってるのよね。」

「まあ、前に優弥から聞いたんで。」

今日は城の話が良く出るな。普段は、優弥や雅さんともあまり話さないし、美来なんて、会ったのは今日が初めてだから、まず城についてなんて話さない。


「そのお宝はね、もともとお城の家宝だったらしいんだけれど、大切に扱われないから、呪われて、お城の人たちも滅亡しちゃったらしいのよ!」

大切に扱われないからって…、そういうもんだろうか。番町皿屋敷の話だって、皿が割られたが、実際に怪奇になったのは人間のお菊さんだ。いや、割られた皿は皿で、なんかにこっそりなってたのかもしれねえけど。ああ、でもあれは、一応大切にしてた皿を割ったんだっけ。


そうなんすね。と、うなずきながら話を聞いていれば、雅さんはトリップしていて絶対呪われたお宝を探すのよ!あーでも時間ー!!と、忙しそうにしていた。


美来は呪われた宝を見たことはあるんだろうか。


そんな話を聞かなかったからないかもしれないが、明日聞いてみるくらいはいいだろ。


「じゃあ、陽くんは呪われないように気をつけてね。」

どうやら、現実世界に戻ってきたらしい。適当にうなずいて、その場で雅さんと別れた。

登場人物

松本陽まつもとよう

1年4組 帰宅部

進学校に通っており、1,2組が普通科で3~6組が進学科。

口はあまりよくないが、本質的には悪人でないため、ある程度付き合っていれば仲良くなれる。


幼馴染から逃げた過ぎて、裏山登っちゃった謎方面努力ボーイ。


田中俊たなかしゅん

1年4組 バレー部

モテたがりだが、実はファッションなのでは?といううわさがある。

頭は馬鹿だが、意外に鋭い一面あり。


昔はよく、なぜ陸上部やサッカー部じゃないかとからかわれていた。


加藤優弥かとうゆうや

1年3組 帰宅部

陽の幼馴染その1。

苦労症の一面がある。


イケメンだけど、優男でなよなよしてるよねー。と、最初は言われるが、たいてい体育の授業で見直される。


遠藤穂乃香えんどうほのか

1年3組 文芸部

陽の幼馴染その2。



バレーの授業では、コートごと男女別のため話しかけず(俊はわざわざ女子のほうへ行ったために、次の体育では準備を手伝わされた)にいた。



安田美来やすだみく

幽霊少女。

歌が好きらしい。


山崎やまざき先生

体育教師。

太陽神になれる日を目指している。たぶんなれない。


みやび

近くの大学の大学生。

薬学部所属で、調合の腕は確かだが、料理は壊滅的。


黒髪ストレートの美人で、陽は最初は美人からお菓子もらえたひゃっほー!という気分だったらしいが…。


ありがとうございました。


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