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俺とあいつの秘密の七日間  作者: シソ熊
13/16

3日目④

よろしくお願いします。

放課後となった。

靴箱で靴を履き替えていると、目の前を穂乃香と優弥が走っているのが見えた。


「あいつらが走ってるとか、珍しいな。」

というか、穂乃香、今日も部活サボってんな。


さらに言うなれば、全力疾走している生徒を先生たちがとがめていないのも珍しい。

まあいいか、と学校を出て裏山を登り始めた。


「うわ、なんか前より茂ってね…?」

いつも登る獣道がたくさんの雑草が生えていて、歩きにくい。

実際には一日二日で草が生えることもないだろうが、この程度の呟きは許してほしいものだ。


もしかすると幼馴染とのことがうまくいって、心に余裕ができたために獣道のことも考えられたからというだけかもしれない。


いつもの場所に行けば美来がいた。

「あ、陽くん!今日は早かったね!」

「あー、水曜日だからな。授業がいつもより少なかったんだよ。」


うちの高校では、水曜日は授業時間数が1時間少ない。部活をしている人は、部活の時間が長引くため帰宅時間は変わらないが、俺は部活に入っていないため、いつもより早く帰ることができる。



「今日、水曜日なんだね。」

急に曜日の話になり、少し驚いた。

「ん、ああ、そうだよ。」

「私、ずっと山にいるから、曜日感覚がなくなっちゃって。」

確かに山では、ニュースを見ることもなければ、授業や仕事に行くこともない分、曜日感覚がなくなることは無理はないだろう。


「なるほどな。」

「うん、ってことは陽くんが最初に来たのは月曜日か。」

「確かに、一昨日初めてきたもんな。」


美来がふわふわと低いところで浮きながら俺の隣に来た。


「そもそも、この山に来たきっかけって聞いたっけ?」

「いや、話してねえな、そういえば。」

昨日幼馴染がいる、秘密がある気がするという話はしたが、その幼馴染をきっかけとして、この山に来たことは話していない。


「聞いてもいい?」

不思議と遠慮がちな声だった。

「ああ、別にそれはいいけど、どうかしたわけ?」

言い方がきつかったかもしれないとも思うが、美来が暗い気がすることが気になった。


「あ、えっと、何もない山に、どうしてわざわざ登ったのかなって!」

急に慌てだしたことを不思議に思うが、あまり追求しなくてもいいだろうと考えた。


「ああ、昨日幼馴染と気まずいって話をしただろ?」

「秘密がある気がする、とかって話だよね。」

頷いた。俺の言ったこととか、意外と覚えていることに驚く。え、俺ヤバい事言ってないよな…。


「それで、幼馴染のこと避けてたら、放課後に待ち伏せしてたんだよ。で、それから逃げるために山に登ってきたってわけ。」

今話してみれば、俺、結構ダサいな。

言語化することによって、自分に対して恥ずかしく感じる。


「そう、だったんだ…。あ、そういえば!幼馴染とは今日、話せた?」

「ああ、うん、まあ和解できた、と思う。」

青春臭い事をいろいろ言ったことについては説明させないで欲しい。

恥ずかしさでマジで燃え尽きる。


「ほんと!ほんとに!?よかったね!」

美来はまるで自分のことみたいに飛び跳ねて喜んでいた。


「ありがとう。」

美来を見てると、自然と口から出てきた。


「へっ?」

不思議そうな美来の面がまるで間抜けで笑ってしまった。


え、ちょ、なんで笑ってるの?と慌てたような怒ったような声を流していた。

「俺、美来さんと話してなかったら、たぶんあいつらと和解できなかったし。」


自分のダサさを客観視することができたのは美来に話したから。

俺の心情が分かったのは、幼馴染に対してどう思ってるのかを美来が聞いたからだ。


声に出すことで、俺は俺が少し分かれた気がした。

だから、これは美来のおかげだ。


そうやって、明るい美来のことが、俺のつまらない話を聞いてくれるような美来の人格が


「羨ましい。」

「羨ましいな。」


俺と美来の言葉が重なった。


「あ?どうした、急に?」

俺に羨ましいという要素が、今の話の流れであっただろうか。

俺がダサいのを美来のおかげで助かったという話でしかなかったはずだ。


「だって、陽くん、青春してるなって。」

「いや、止めてくれよ。」


顔が引きつるのを感じる。青春してるだなんて、ばかやってるみたいで恥ずかしい。


「幼馴染とうまくいかなかったけど、仲直りできて。楽しそうな、うれしそうな陽くんがまぶしいよ。私。」

「楽しそうに見えたか?俺。」

楽しそうな部分や、うれしそうな部分が他人に見えてしまっているとか。もし本当なら、ポーカーフェイスでも鍛えたほうがいいかもしれない。


「すごく。昨日、一昨日よりずっと声が楽しそう。なんていうか、楽しい気持ちがばれないように、声を抑えてるって感じ。」

「うわ、そこまでわかんのかよ…。」

「あ、やっぱりあってたんだ。」


…誰か俺を埋めてくれ。マジで墓穴掘った…。なんで掘った墓穴に埋まれねえんだよ…。


「でも俺は。美来さんのほうが、なんつうかまぶしいと思うけど。」

「え?え?なんで?」

少し慌てた様子に、仕返しができた気がした。


「こうやって、他人のことに喜べるってすげえと思うし。いつ来ても明るいし。」

「…へへ、明るい、かあ。」


一瞬伏し目がちにした表情が俺にはよくわからなかった。


「でもやっぱり、生き生きとしている陽くんにはかなわないかも。」



昨日一昨日と雰囲気が違うことが気になる。


「そうそう、宝の話、タマさんに聞いたよ!」

「へえ、まじで?」


だが、俺は昨日の美来みたいに、聞いてやる度胸を持つことはできなかった。



ありがとうございました。


プロットなくして、間に合わないかと思った…。マジ焦った…。

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