帝都のアウルム2
前回、名前の間違いがひどくてすみませんでした。今は直っています。
誤字脱字報告してくださった方々、ありがとうございます!
人生とはそう不公平でもないらしい。
あれから数ヶ月たち、六歳になったアウルムは来年入学することになった宮廷内の学校を見学しに行き、驚くべきことに治癒術師を愛人にしてしまったのである。相手はアウルムと入れ違いに学校を卒業する年齢だったので、アウルムの在学中は従者として共にいることになった。
そうなるとアウルムの立場も一気に変わった。
治癒術師の価値もわからないと揶揄されたメウルニとは逆に、たった数分で治癒術師の信頼を勝ち取ったアウルムは神童、未来の皇帝と目されるようになった。
ただの偶然だ、運が良かっただけだと言う者もいたが、麾下の貴族たちはこぞってアウルムを褒め称えた。馬車の事故の時にパメラと一緒に死ねば良かったと言っていた者たちすらも。
「父上。私に愛人ができました。みんな、流石はエンデパンを継ぐ子だと言います」
「・・・」
もう一年以上前からと同じように、メウルニが聞いていなくてもアウルムは話をする。
「将来は皇帝になるんじゃないかとポラレンス伯爵とレムルーラ卿とサリナーシュ卿ですら言ってきます。これで母上も悪く言われませんよね」
「・・・」
母親のことを悪く言われたことは、死を願われたことよりアウルムの心を傷付けていた。
見返せてやれたと得意げなアウルムだが、すぐにその表情は曇る。
まだ七歳にもなっていないのに、接点すら作ってもらっていない治癒の力を持つ一族を愛人に迎えることのできた幸運はアウルムを褒め称える噂以外も生んだ。それはアウルムが泣きたくなるような話だった。
「・・・だけど、父上。私に愛人がこんなに早くできたのは母上が亡くなったおかげだっていう奴もいるんです。母上の死と引き換えに愛人なんか欲しくなかった。母上に生きていて欲しかった。父上もそうでしょう?」
「・・・」
「・・・父上。私は宮廷内の学校に通う為、これからは食事をお持ちできません。勿論、毎年、春になったら戻ってきます。その間、シャニールたちが運んできます。ちゃんと食べてくださいね」
「・・・」
しばらく会うことができなくなるというのに、メウルニからの反応はいつも通り鈍い。
アウルムは返事を諦めて、空になったカートを押して書斎を出て行く。