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夕飯を食べ終えた私達は、そのままお風呂へ……と言っても一緒に入るわけでも無く、恋が片付けをしてくれてる間に私が先に入ってた。そして今はリビングで寛いでいる最中だ。
何時もなら、お風呂に入ったら直ぐに部屋へと行ってしまうが、何となく今日はリビングに居たい気分だった。
ほどなくして、恋がお風呂から出てリビングに顔を出したけれど、その様子は先程と違って暗く、何かに耐えている感じであった。
「恋。どうした? 何かあった?」
「え? さ、咲!? 部屋に居ると思ってた……」
「私だって部屋ばかりに居るわけじゃないよ。それよりも、本当にどうしたの? 涙流しているけど大丈夫?」
「え……?」
どうやら恋は、自分が泣いている事に気付いていなかったらしい。
どうしてそんな顔をするの? 私には言えない事なの? 私じゃ力になれない? そんな想いばかりが、心の中に渦巻いている。
「私じゃ頼り無いかな?」
「違う…… 私の心が弱いだけ……」
「何か分からないけれど、言わないより言った方が良い事だってあるのだよ。他の人には言えなくても、私達は双子とはいえ姉妹なんだし、理解し合える事だってきっとあるよ」
ね? と恋を宥めつつも、話してくれる様に促す。
「そんな事言われたら…… 諦めようとしているのに諦められないよ…… じゃあ咲は、私が咲の事好きと言ったら受け止めてくれるの!」
「え? 好き…… え? 待って! 恋は、私の事が好きなの? それって姉妹だから……じゃなくて、恋愛としての好きって事!?」
「そうだよ! ずっと…… 咲の事を想っていた。他の誰よりも咲の事だけをずっと想っていた。 ……そんな事言われたら、咲に避けられると思っていたし、何よりも姉妹なのに好きと言われたら、気持ち悪いと思うから今まで言えなかった」
「そんな事……」
「気遣わなくてもいいよ。だって同性だよ! 普通なら気持ち悪いって思うでしょ!」
恋は泣きながら、でも私が気遣っていると思いそんな事を言ってきた。私は、恋の泣き顔を見ていたら、自分でもどうすれば良いのか分からないけれど、ただ一つだけ気付いたのは、恋に “好き” と言われたのが嬉しくって、ずっとモヤモヤしていたのは、私も恋の事が好きと言う事だった。
ソファに蹲って泣いている恋を、自分の方に抱き寄せ、恋の耳元に自身の唇を近付けて “私も好き” と囁いた。
「嘘……」
「まだ信じない? じゃあ、これなら……」
涙に濡れた顔を私の方に向け、私が囁いた言葉を信じられないと目で訴えていた。だから私は、恋の顔を私の方に向けさせ、涙に濡れている唇に自身の唇を重ねた。
キスをした事に恋は驚いていたが、一秒二秒と経つ事で理解したのか、その表情は嬉しそうだった。
「これで信じてくれるよね?」
「…… うん」
ぎゅっと私に抱き着いている恋を抱き返して、私は恋の温もりを堪能していた。