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六、襲撃

        1

 奈美たちが別荘に移り住んでから十日が過ぎた。毎日が不気味なほど平穏であった。

 捜査局の囮を襲った連中も、その後その姿を現すことはなかった。

 奈美たちの間にもさすがに警戒心が緩んできていた。

 川端も警戒心を緩めたのか、二階のベランダでのんびりと日光浴を楽しんでいる。

 そこへちょうど奈美が顔を出した。

 「学校は終わったのかい。」

 川端はサングラスの奥からからかうような笑みを奈美に送った。

 奈美は無視するように、川端のすぐ横にある折りたたみの椅子に座った。

 「もうそろそろMOの在処(ありか)を教えてくれてもいいんじゃない。」

 「その話か。」

 川端はあきあきしたような顔をしてそっぽを向いた。

 「安全が確保されたら教えてくれる約束でしょ。」

 「約束か…」

 「それともあの話はでっちあげ。」

 「どうかな。」

 川端はまたからかうような笑みを見せた。奈美の目に怒気の色が浮かび上がると、川端の襟をつかみ、自分に引き寄せた。思いがけない行動に川端の顔色が変わった。

 「これに見覚えがあるわよね。」

 そう言う奈美の右手に例の鍵がぶら下がっていた。

 川端の顔に動揺の色が(よぎ)った。

 「な、何のことだ。」

 白を切る川端の襟を奈美はさらに引き絞った。

 「これはあなたが落としていったものよ。」

 奈美はその鍵を川端の鼻先に突きつけた。

 「この鍵がMOの隠し場所に関係があるんでしょ。」

 「く、苦しい、離してくれ。」

 思わず力が入っていたことに気づいた奈美は、川端の襟から手を離した。

 「女のくせにすごい力だな。」

 「私はアーマノイドよ。」

 「そうだったな。」

 川端は苦笑すると、衣服を正した。

 「そんなことより、どうなの?」

 「いい勘してるぜ。」

 「やっぱり。」

 奈美はあらためて鍵を見つめた。

 「それでどこなの?」

 「そこまでは教えられないな。」

 「まだ、信用できないの?」

 「あんたは信用してもいい。しかし、他のやつらが信用できない。」

 「他のやつらって、陽子さんたちのこと?」

 「そう、俺は組織の人間にいやっていうほど痛い目にあっているからな。組織に属している人間は信用できないんだ。」

 「私だって捜査局の一員よ。」

 「あんたは違う。あんたは俺と同じはぐれ犬よ。」

 思いがけない川端の言葉は奈美の心に鋭く突き刺さった。

 「アーマノイドのあんたはどこまで行っても一人さ。」

 「ひとり…」

 奈美の胸の中に漠然と巣食っていたものが、いま形あるものになろうとしていた。

 (そうだ、私は一人ぼっちなのだ。)

 「どうしたい、ねえちゃん。」

 川端の言葉に奈美ははっとした。いまは自分の闇を見つめている場合ではない。

 「私を信用してくれるなら、私にだけ教えてちょうだい。」

 「あんたが組織の連中と繋がっている以上、おいそれとは教えられない。しかし、ここまできたんだ。ヒントだけ教えてやるよ。」

 「ヒント?」

 「確かにあんたの言う通り、その鍵はMOを隠している金庫の鍵だ。しかし、金庫の場所と開けるためのパスワードは俺だけが知っている。」

 「どこなの?」

 「おいそれとは教えられないと言ったろう。ただ、隠し場所は俺の右目がいつも見ているところさ。」

 「なに、それ?」

 「そこから先は自分で考えな。」

 そう言うと、川端は立ち上がり、部屋の中に入っていった。

 「ねえ、」

 二階から降りようとする川端を、奈美は呼び止めた。

 「まだ、何か用か?」

 「私の過去を知っているって言ったわよね。」

 「そのことか。」

 川端は面倒くさそうなそぶりを見せた。

 「私のこともMOに入っているの?」

 川端はしばらく奈美を見つめていると、おもむろに口を開いた。

 「MOにはお前のことは何も入っていない。マリオネット計画とお前とはまったく別のことだからな。」

 「べつ?」

 「そう、お前は室長が陣頭指揮をとって推進されたからな。」

 「室長?面 史郎のこと?」

 「また後でな。」

 そう言って、川端はさっさと階段を下りていった。

        2

 その夜、別荘に陽子と剣持が姿を現した。

 川端の今後の処遇についてだった。

 「敵もいまだここに気づいていないようだ。そこで、気づかれていないうちに君を海外に脱出させようと思う。」

 「ほう、海外?」

 突然の提案に川端を始め、そこにいる皆が一様に驚いた。

 「そう、いまがいい機会だと思う。」

 「でも、どうやって。」

 「ここから船で横須賀に行き、そのまま横須賀の米軍基地から那覇の米軍基地に飛び、そして、そこからまた飛行機を乗り換えて、海外に脱出する。あとは向こうのエージェントが君の面倒を見てくれる。」

 「なるほど、確かに国内にいるより海外の方が安心だ。」

 川端は納得したような顔をした。

 「でも、海外でも組織の手は伸びているのでは?」

 「いや、組織の網も国内ほど海外には伸びていない。海外に脱出できれば当分の間、安全だ。」

 剣持の目が力強く奈美と陽子を見つめた。     

「それに海外脱出まではこの伊達がついてくれる。」

 いつの間にか窓辺に伊達が立っていた。隠密裏に二人の後をついてきたのだ。

 「それでいつ実行するんだ。」

 川端が身を乗り出すようにして聴いた。

 「明日。」

 「明日?それは急だな。」

 「善は急げというだろう。」

 剣持の言葉に川端は納得したように頷いた。

 「明日の夜10時にここに船をつける。闇にまぎれてここから横須賀に向かう。すぐに出られるように用意をしておいてくれ。」

 「私と奈美は?」

 当然のように陽子が質問をした。それは奈美も同じ思いらしく、興味深く剣持の顔を見つめた。

 「陽子と奈美は横須賀までついていってくれ。飛行機に乗りさえすればひとまず安心だ。」

 「わかりました。」

 二人は一緒に返事をし、奈美は陽子のほうに顔を向けた。陽子はまっすぐ前を見つめ、その表情には緊張がはっきり見て取れた。

 「明日に備えてゆっくり休んでおけ。明日は忙しくなるぞ。」

剣持に言われ、奈美は急いで立ち上がった。その拍子に奈美の首からペンダントが落ちた。奈美はそれに気づかず、二階に上がろうとした。

 陽子が奈美の後に続こうとしたとき、奈美の落としたペンダントに気づいた。

 「奈美、落としたわよ。」

 陽子はそれを拾い上げながら奈美を呼び止めた。

 「え?」

 奈美は何のことかわからないまま、反射的に振り返った。

 そこへ陽子がペンダントを投げてよこした。

 「あ、ありがとう。」

 奈美がそれを両手で受け取ると、陽子はさっさと階段をあがっていった。奈美はその後姿を見送りながら、しきりにペンダントを撫で回していた。

 それからしばらくして、別荘の電気がすべて消え、静寂が訪れた。

 波音と月の光だけがあたりを支配している。

 その静寂と月の明かりから逃れるようにたまっている闇の中に、別荘を凝視する目があった。その目は何時間も前より動きもせず、片時もその視線が別荘から外れることはなかった。明らかにこの建物を監視している。

 別荘の明かりが消えて1時間余り、その目に初めて動きが起こった。

 その目が微妙に細くなったのだ。

 笑っている。確かに目が闇の中で笑っていた。

        3

 翌日、別荘はいつもと変わらぬ朝を迎えた。

 しかし、別荘の中は緊張で空気が張り詰めていた。

 川端の移動計画は、よくできた計画ではあったが、所詮、机上の計画である。実際にはどんなことが起こるかわからないのだ。

 別荘の周りはすでに、数人の男たちによって厳重に警備されていた。

 庭といわず、道路といわず、あらゆるところに男たちの目が鋭く注がれていた。

 陽子も朝から別荘の周りをくまなくパトロールしていた。

 奈美は、川端のそばに付き、緊張に張り詰めた別荘の中で朝食をとっていた。そばには捜査局の伊達も付いていた。

 「あ~あ」

 川端が持っていたフォークをテーブルに投げ出した。

 「どうしたの、もう食べないの?」

 奈美が小首をかしげてたずねた。

 「そんなにジロジロ見られたんじゃ、食えるものも食えねえよ。」

 川端はナプキンで口をぬぐうと、席を立った。

 「どこへいくの?」

 奈美も持っていたフォークを置くと、立ち上がった。

 「庭に出て、一服するだけだよ。」

 そういうと、川端はサッシをあけ、庭に出た。奈美も後に続いて庭に降りていった。

 外は抜けるような青空である。

 川端はポケットからタバコを取り出すと、ライターを探した。そこへ火の点ったライターがぬっと現れた。

 一瞬驚いた川端は、無言まま立っている伊達を睨みつけると、その火でタバコに火を点けた。

 それを確認すると、伊達は無言ままライターをしまい、庭の片隅に退いた。

 「ア~ア、こんな窮屈な思いは今日で終わりだろうな。」

 海を見ながら、川端はぼやいた。タバコの煙が青い海に溶け込んでいくように流れていく。奈美は静かに川端の横に立つと、まぶしそうな目をして、海を見つめた。

 「もうすぐ、お嬢さんともお別れだな。いろいろとありがとうよ。」

 急に川端がやさしいことを言い出したので、奈美は戸惑った。

 「急に何よ。まだお別れじゃあないわ。」

 奈美は川端の顔を睨みつけた。

 「横須賀までついていくんだから。」

 「そうだったな。」

 川端は苦笑した。

 「そんなやさしいことを言うなら、MOの在処(ありか)を言いなさいよ。」

 「横須賀に着いたら言うよ。」

 「本当ね。」

 川端の返事に奈美の目の色が変わった。

 「ああ…」

 川端が庭でそう約束してから、あっという間に時間は過ぎていった。

 外には闇が忍び寄り、都合のいいことに月も雲に隠れた。

 「船が着きました。」

 捜査員の一人が伊達に報告に来た。今回の計画の陣頭指揮は伊達が執っていたのである。

 「よし、総員乗船準備。」

 静かだが、力のこもった声が捜査員たちを動かした。

 周りに気を配りながら、男たちはクルーザーが停泊している海岸に向かう。

 松林を貫く細い道を黙々歩いていくと、急に松林が開け、眼前に岩場に囲まれた小さな海岸が出現した。その一角にある埠頭に一隻のクルーザーが停泊していた。男たちは急いでそこに駆け寄ろうとしたそのときだった。

 後方からすさまじい衝撃音が男たちの頭の上を通り過ぎ、そのままクルーザーを貫いた。と、同時に大音響とともにクルーザーが真ん中から裂け、吹き飛んだ。

 「!」

 男たち全員がその場で石のように硬直した。

 次の瞬間、伊達の声が全員の呪縛を破った。

 「散れ!」

 その声とともに全員が四方に散ったとき、闇の中からすさまじい銃声と火花が散った。

 「奈美、陽子、川端を安全なところに!」

 伊達は懐からベレッタを抜きながら怒鳴った。

 他の男たちもそれぞれ銃を抜き、応戦が始まった。

 「こっちよ」

 奈美は川端の腕をつかむと、一目散に駆け出した。

 「見えるのかよ」

 川端が震える声で奈美に叫んだ。

 「あんたよりわね」

 奈美の目が暗闇を透かして、男を捕らえた。黒ずくめの長身の男だ。

 手にはイングラムが握られている。

 しかし、男がイングラムの引き金を引くより前に、奈美の超振動ニードルが男の首を貫いた。

 「ぐえ!」

 断末魔を残して倒れる男の上を飛び越えた奈美と川端は、別荘へと向かった。別荘に行けば車があるはずだ。

 後方では伊達たちと敵との銃撃戦が激しさを増していた。

 (陽子さんや伊達さんは大丈夫だろうか?)

 不安と戦いながら奈美は、川端を連れて別荘に急いだ。

 松林が切れ、別荘が見えたとき奈美たちのスピードが緩んだ。川端はゼエゼエいいながら後ろを振り返った。

 「追ってくるものはいないようだな。」

 安心したようにホッと息をついた川端の目に、奈美の厳しい顔が映った。

 「お、おい、どうしたんだよ。」

 川端が(ひる)んだとき、奈美の右手が川端の腕を取った。

 急いで別荘に入ると、二階に駆け上がり、クローゼットの中に川端を押し込んだ。

 「いい、ここを動かないのよ。」

 厳しい顔のまま命令する奈美に、川端は素直に頷いた。

 クローゼットの扉を閉めると、奈美はゆっくり階下に降り、庭に出た。

 月はまだ雲に隠れたままだ。

 闇がすべてを支配し、虫の音さえ聞こえない。

 奈美は闇の中を見透かすように、じっとある方向を見つめていた。

 月が雲から滲み出すように現れた。

 奈美の全身が月の光に照らされる。

 銀色に輝く髪が、月の女神を思わせた。しかし、その目は戦闘色に燃えている。

 奈美の髪が風に吹かれたようになびく。と同時に、一条の光が月光の下を駆け抜けた。

 次の瞬間、大音響とともに衝撃波が奈美の超振動ニードルを粉々に粉砕した。

 奈美はその現象に驚きもせず、先ほどと同じ方向を見つめ続けた。

 「いいかげん、かくれんぼはやめたら。」

      4

 奈美の言葉に反応するように、闇が急に揺れた。やがて、その中からひとりの男が月光の下に現れた。

 長身の男であった。

 染めているのか、もともとなのか金色の髪が月の光に輝いている。その下にある顔はモデルのように美形だ。しかし、その目は残忍な光で満ちていた。

 情のかけらも持ち合わせない男だと奈美には思えた。

 「あの人たちを囮にしたってわけ?」

 男は唇の端を吊り上げ、声を立てずに笑った。

 「狙いは川端?」

 「と、ついでにお前もな。」

 嘲笑を残したまま男が音もなく移動した。

 奈美の喉を狙って右の貫手(ぬきて)が迫る。

 奈美は体を半身にしてそれを躱すと、その回転力を生かして左肘を男の脇腹に食い込ませた。

 男は苦痛に顔を歪めながら、奈美の右手に大きく吹き飛んだ。

 地面を転げまわり、脇腹を押さえながら苦痛の声を絞り出している。しかし、奈美はその様子を冷静に見つめたまま、一歩も近づこうとしない。かえって、警戒心を強めていた。

 「お芝居はやめたら。」

 奈美の言葉に苦痛の声が止んだ。その代わりにクククッという抑えた笑い声が男の背中から聞こえてきた。

 すると、何事もなかったように男が立ち上がった。

 その顔には残忍な笑いが浮かんでいる。

 「思ったとおりね。こずるい男がやりそうなことだわ。」

 「おれは、効率を重んじるほうでね。しかし、お前さんにはそうも言っていられないようだな。」

 そういうと、男は右手を軽く伸ばし、奈美に向けた。

 「死にな。」

 男の嘲笑と手の平が光るのが同時であった。

 大音響が響き、衝撃波が男の手の平から迸った。

 しかし、奈美の反応は一瞬早く、その体を横に飛ばし、代わりに奈美の後ろにあった庭石が、粉々に吹き飛んだ。

 奈美が地面を一回転するところへ、第2弾が撃たれた。

 今度は松の木が真ん中から吹き飛び、音を立てて倒れた。

 第3弾、第4弾と続けざまに、衝撃波が走った。

 奈美は、それを脅威の反射神経で躱し続けた。

 男の顔に焦りの色が浮かんだ。

 そのとき、松林の下から人が駆け上がる気配がした。

 ベレッタを片手に月明かりの下に現れたのは、伊達であった。

 「奈美!」

 男の注意が伊達にそれた。

 奈美はその機を逃さず、男に向かって超振動ニードルを放った。

 「ぐわ!」

 男は、今度は本物の苦痛の声を上げた。

 「くそ!」

 男は奈美のニードルに貫かれた右手を押さえながら、駆け出した。

 「まて!」

 伊達と奈美が同時にあと追った。

 門の所まで逃げた男は、門扉が閉まっているのを見るとその場に立ち止まった。奈美と伊達はもうすでに追いついている。

 「もう逃げられないわよ。」

 「観念しろ。」

 伊達がベレッタの銃口を男の背中に突きつけた。

 男は二人に背を見せながらしばらく無言で立っていた。やがて、男の背中からまた例の抑えた笑い声が響いてきた。

 「俺を甘く見るなよ。」

 男はくるりと振り向くと、二人を嘲るように睨み付けた。

 「この期に及んで悪あがき?」

 「そうじゃあない。おたくたちにいいものを見せてあげよう。」

 そう言うと男はパチンと指を鳴らした。

 すると、門の外数箇所から閃光と発射音が響いた。

 門の上を越え、オレンジ色の炎が夜空を切り裂いた。それは、別荘へと向かい、炎が別荘の中に消えたかと思うと、さらに大きな閃光と爆発音がそこら中を押し包むように轟いた。

 立ち上る火柱が夜空を焦がし、爆風が二人を吹き飛ばそうとした。二人は何とか(こら)えながら、その情景を見て、息を呑んだ。

 「さよならを言う前に俺の名を言っておこう。A7。」

 男が唐突に奈美に話しかけてきた。怪訝そうな顔で振り向いた奈美に男は続けた。

 「俺の名はソニー、また会おう。グッバイ」

 そういい残して、ソニーはジャンプすると門の外に消えていった。

 奈美は黙って見送るだけだった。

     5  

 別荘は燃え盛る炎の中にあった。

 「だれかいるか!」

 伊達が別荘の周りを叫んで回った。しかし、それが空しい呼び声であることは、伊達が一番よく知っていた。

 この状況で生存者がいる可能性は無に等しい。

 襲撃者たちもいつまでもここに残っているはずもない。目的の川端の生存が絶望的な今、ここにとどまっている理由(わけ)はなかった。

 奈美はまだ、呆然として炎を見詰めていた。自分がとった行動が結果として川端を死に追いやったのだ。その悔しさと悲しさ、そして空しさが奈美の心を支配しつつあった。

 その肩に手をやるものがあった。振り向くと陽子が悲しそうな目を向けて立っていた。

 「陽子さん…」

 「あなたのせいじゃあないわ。しかたがなかったのよ。」

 陽子の慰めは奈美の涙を誘うのに十分であった。

 目に涙があふれ、いまにも崩れ落ちそうになったとき、奈美の感覚に触れる気配があった。

 陽子の後ろの植え込みの中からだ。

 やがて、植え込みがガサガサと音を立てて揺れたかと思うと、その中から人影が突如現れた。

 奈美は急いで陽子の前に飛び出し、身構えた。

 「ま、待ってくれ。」

 人影が手を振って、奈美の行動を制止しようとした。

 「だれなの?」

 「おれだ、おれ。川端だ。」

 「え、川端さん。」

 奈美はあらためてその人影を見ると、果たしてそれは川端であった。

 「川端さん!」

 奈美は即座に川端に駆け寄った。

 泥に汚れた顔に、衣服も多少破れてはいたが、怪我の様子はなかった。

 奈美の顔に安堵感と喜びがない交ぜになって表れた。

 「一体どうやって助かったの。」

 「お前が出て行った後、下で騒ぎが起こって、気になってクローゼットの中から出て行ったんだ。植垣に隠れて様子を見ようとしたら、あの爆発さ。いやあ、九死に一生を得たというのはこのことだな。」

 「私の言うことを聞かなかったの?」

 奈美が少し不満そうな顔をすると、川端が苦笑した。

 「そのおかげで、こうして助かったんだぜ。」

 その言葉に、奈美もつられて笑い出した。

 「奈美、伊達さんに川端が無事なことを伝えて。私は彼を車まで連れて行くわ。」

 「はい、陽子さん。」

 奈美は、陽子に言われるまま伊達を探すべく、駆け出した。

 伊達はすぐに見つかった。彼はいまだ、無事な者を探し回っていた。

 「伊達さん、川端さんが生きていました。」

 「本当か?」

 奈美の言葉に伊達の目が輝いた。

 そのとき、一発の銃声が鳴り、続いて三発ほどの銃声が響いた。

 「なんだ、あの音は」

 伊達が駆け出し、奈美も不安に刈られて後に続いた。

 車のあるガレージのそばに川端が倒れていた。そのそばに右肩を抑えてうずくまる陽子がいた。

 「どうしたんだ!」

 「陽子さん!」

 同時に叫んだ二人は、陽子に元に駆け寄った。

 右肩を抑えている陽子の手の間からは血が滲み出していた。

 「陽子さん、大丈夫。」

 すぐに傷口にハンカチを当てる奈美は、心配そうな目で陽子を見た。

 「大丈夫、弾は貫通してるから。」

 苦痛に耐えながら陽子は立ち上がった。

 「本当に大丈夫か、どら見せてみろ。」

 伊達が陽子の傷口を見た。焼け焦げた弾の痕からとめどなく血が(あふ)れていた。ハンカチはすぐに真っ赤になった。

 「奈美、トランクの中に救急箱がある。とってきてくれ。」

 奈美は言われるまま、トランクを開け、中にあった救急箱を取り出した。

 伊達はそれを受け取ると、器用に応急措置を施しはじめた。

 「で、どういうことなんだ?」

 包帯を巻きながら、伊達は陽子に尋ねた。そのとき、後ろでうめき声がした。三人が一斉に同じ方向を見た。

 川端がかすかに(うめ)いている。

 奈美は急いで駆け寄った。

 「川端さん、しっかりして!」

 川端はうっすら目をあけ、何か言おうと口をパクパクさせた。

 「なに、何が言いたいの!」

 奈美は耳元で怒鳴りながら、自分の耳を川端の口元に近づけた。

 伊達と陽子は成り行きを見守っていた。

 不意に川端の頭ががくっと横を向いた。

 奈美の顔に絶望の色が広がり、ゆっくりと立ち上がった。

 「どうした?」

 「死んだわ。」

 奈美はポツリとつぶやいた。

 「何か、言ったの?」

 陽子が聞くと、奈美は首を振った。

 「そうか」

 伊達ががっかりすると、陽子の応急措置を続けた。

 「さっきの続きだが、どうしたんだ。」

 「私は川端を連れて車のあるガレージに行ったわ。幸い車は無事で私は川端を車に乗せようとした。そうしたら…」

 「そうしたら?」

 「後ろで銃声がして、振り返ると川端が倒れていた。逃げていく人影を見たので後を追おうとしたら、銃撃を受けて、応戦したんだけど、このざまよ。」

 「そうか」

 包帯を巻き終わると、伊達は陽子の肩に手を置いた。

 「気にするな。おまえはよくやった。」

 「ありがとう。」

 「奈美、向こうにけが人がいる。彼らを手当てしてやってくれ。」

 「わかりました。」

 奈美は救急箱を抱え、捜査員たちのいるところへ向かった。

 「奈美、手伝うわ。」

 「大丈夫ですか。」

 「大丈夫よ。」

 「あ、陽子、ちょっと話がある。」

 陽子が奈美の後をついていこうしたとき、後ろから伊達が呼び止めた。振り返ると、伊達は死んだ川端のそばにしゃがみこんでいた。

 「先に行ってますね。」

 奈美を見送った後、陽子は伊達に近づいた。

 「なに?話って。」

 笑顔を向けていた陽子の顔が凍りついた。

 伊達がベレッタの銃口を陽子に向けていたからだ。

      6

 生き残った捜査員たちは、炎をあげる別荘を避け、松林の中のちょっとした広場に移っていた。そこに駆けつけた奈美が見たものは、瀕死の重傷に苦しむ捜査員二人とそれを介護するやはり怪我を負った捜査員ひとりであった。

 「他の人たちは?」

 奈美は救急箱を差し出すと、応急手当を手伝いながら尋ねた。

 「俺たち以外は皆、やられた。大半は海岸の銃撃戦だが、あの別荘の攻撃の巻き添えを食ったものも何人かいる。」

 男は吐き捨てるようにいった。

 それを聞いた奈美の顔も暗くなった。

 男は、自分の怪我を後回しにして、重症で寝ている仲間の手当てをした。

 「隊長は?」

 「伊達さんなら、陽子さんと後から来るはずよ。」

 そう言い終わった時、突如銃声が響いた。

 「銃声だ。」

 「別荘のほうからだわ。」

 奈美は立ち上がろうとする男を制して、単身別荘の方へ向かった。

 別荘はいまだ炎を上げている。もはや、崩れ落ちるのも時間の問題だろう。奈美は伊達と陽子がいるはずのガレージにまっすぐ向かった。

 ガレージが見え、陽子の姿が見えた。しかし、伊達の姿が見えない。

 「陽子さん」

 奈美が駆け寄ると、陽子から数メートル先に伊達がうつぶせに倒れていた。

 「陽子さん、どうしたの。」

 「伊達が急に私に銃を向けて…」

 陽子の左手にはPPKが握られており、その銃口はかすかに震えていた。

 「伊達さんがなぜ?」

 「奈美が行った後だった。急に銃を向けて…」

 「銃を向けた…?」

 「彼が裏切り者だったのよ。今夜、ここを移動する情報を漏らしたのは彼なのよ。いままでの捜査局の捜査の情報が漏れていたのも彼のせいなのよ。伊達は私を裏切り者に仕立て上げて、殺すつもりだったのよ。」

 陽子はそこまで一気にまくし立てた。

「陽子さん」

 奈美は陽子を哀れむように見ながら、伊達のそばによった。伊達は心臓を撃ち抜かれ、絶命していた。そばにはベレッタが落ちていた。

 「自分の身を守るためにやむなく応戦したわ。」

 陽子の目が涙で潤んでいた。

 奈美は陽子のそばに歩み寄り、そっと囁いた。

 「いきましょう。」

 そういって、奈美が歩き出そうとしたとき、奈美の身体から何かが地面に落ちた。それに気づいた陽子は、それを拾い上げた。

 奈美のペンダントであった。

 「奈美、また落としたわよ。」

 陽子が差し出すペンダントに気づき、奈美はあわてて首に手をやった。

 「いやだ、陽子さんにもらった大切なペンダント。」

 「そうよ。せっかくプレゼントしたものを失くすところよ。」

 陽子は奈美にそれを渡すと、さっさと前を歩き出した。しかし、奈美はその後を付いて行こうとはしなかった。

 「奈美?」

 それに気づいた陽子は、不思議な顔をして奈美を見た。

 「どうしたの?奈美。」

 奈美は足が地面に張り付いたようにその場を動かなかった。

 「やっとわかったわ。」

 奈美がポツリとつぶやいた。

 「なにがわかったというの?」

 陽子は奈美の言っている意味が理解できなかった。

 「誰が川端さんを殺したのか、本当の犯人が。」

 「え?」

 「あなたよ。あなたが全部やったこと。」

 「何を言ってるの?奈美」

 「もういいかげん正体を現したら。」

 奈美の目が戦闘色に燃えていた。

 月はいつの間にか雲の間に消え、生暖かい空気が流れてきた。

 月明かりはなかったが、別荘を包む炎が二人を闇の中にくっきりと浮かび上がらせていた。

 「正体を現せって、何のことよ?」

 「あなたは陽子さんじゃあないわ。」

 炎に照らし出された陽子の顔にはっきりと動揺の色が現れた。

 「さっき、あなたが言ったことはすべて自分のことよ。」

 「奈美、どうしたというの?」

 「まだ、しらを切るき。」

 奈美は鋭い視線を投げつけた。

 「あなたは捜査局の情報を流すだけでなく、重要な情報を握る川端さんを殺そうとここを襲撃させた。しかし、案に相違して川端さんは生きていた。それで、しかたなく、自分の手で川端さんを殺した。でも、それを伊達さんに見破られて伊達さんも手にかけた。」

 「どうしてそう思うわけ。」

 「自分が襲撃されたように見せかけたかったようだけど、あまりにも近くから撃ちすぎたわね。傷口の周りの布が焦げている。遠くから撃ったのならああはならない。」

 陽子の口から低くかすれるような笑いが漏れてきた。

 「とっさのことで、そこまで気がまわらなかったわ。伊達と同じことに気づいたのね。」

 「あなたが陽子さんじゃないとわかったら、すべての疑惑が解けた。」

 「私が陽子じゃあないってどうしてわかったの?」

 陽子の顔に先ほどまでの悲しみの色はなかった。自分の正体を知られたことによる開き直りともいえる笑いが浮かんでいた。

 「このペンダントはあなたからもらったものじゃあないわ。」

 「鎌をかけたわけ。こんな小娘にこのミスリルともあろうものが。」

 ミスリルは両手をあげて、自嘲した。

 「本物の陽子さんはどこ?」

 「教えてほしい?」

 ミスリルは意地悪そうな目を奈美に向けた。

 「黙って教えそうにはないわね。」

 奈美の髪が風に吹かれたようになびいた。

 「あたしを見くびらないことね。」

 奈美の戦闘モードを見たミスリルの手にPPKが鈍く光っていた。

 奈美の体が一瞬にして緊張した。

 銃口はまっすぐ奈美の心臓に向けられている。

 「私の腕は証明済みよね。」

 ミスリルの指がゆっくりと引き金をしぼる。

 そのとき、別荘が大きな音をたてて崩れ落ちた。

 しぼる指が一瞬止まった。

 ミスリルの目の前から奈美の姿が消えた。

 人間離れした移動速度で奈美がミスリルの左に移動する。

 ミスリルも常人以上の反射神経で奈美に狙いをつけて、引き金を引いた。

 オレンジ色の火花と乾いた銃声が響いた。

 PPKの銃口から発射された弾丸は、まっすぐ奈美に向かっていく。しかし、その場所にはすでに奈美の姿はなく、別の場所に移動していた。

 それを追ってミスリルのPPKが再度、火を噴いた。

 それも奈美は躱していく。

 ミスリルが再度構えた。

 その刹那、ミスリルの目の前に移動した奈美の手刀が、ミスリルの右手を打った。

 突然の打撃に痺れた右手は、持っていたPPKを落とした。そして、落としたPPKを奈美の足が蹴った。

 ミスリルの顔に憤怒の表情が表れたが、それにお構いなく、奈美の右拳(みぎこぶし)がミスリルの顔面にヒットした。

 のけぞったミスリルに続けざまに奈美のパンチが飛ぶ。しかし、それを左腕で受け流すと、今度はミスリルの右足が奈美の向う脛を蹴り、腹部にパンチを食らわした。

 「グッ」

 腹を押さえて後ろに下がる奈美に、ミスリルは追い討ちをかけるように手刀で奈美の首筋を狙った。

 その腕をとった奈美は、相手の力を利用してミスリルを投げ飛ばした。

 ミスリルは背中から地面に落ち、苦悶の表情を見せたが、すぐに起き上がり、奈美を憎憎しげに睨み付けた。

 「やってくれるわね。」

 そう言い放つと、ミスリルの連続攻撃が奈美に襲い掛かった。

 拳が、足が、奈美の目の前を風を切って通り過ぎる。そのたびに奈美の髪が揺らいだが、ミスリルの攻撃は一発もあたらなかった。奈美が紙一重で躱しているのだ。

 ミスリルの表情にはっきりと焦りの色が表れた。

 ミスリルは地面をつま先でけると、土を奈美に浴びせかけた。

 奈美がそれを躱そうとしたとき隙ができた。ミスリルは落ちているPPKに飛びつくと、奈美に銃口を向けた。

 そのとき、銀の光が闇を貫いた。

 と同時に、銃声が暗闇に響く。

 「ウッ!」

 ミスリルの手からPPKがこぼれ落ちた。

 押さえる手の平を銀の針が貫いていた。

 「くそ!」

 ミスリルは突然駆け出した。

 「まて!」

 奈美もその後を追った。

 先を走るミスリルの前に運悪く先ほどの捜査員が姿を現した。

 「どうした?」

 「じゃまだ!」

 ミスリルの叫びと同時に何かが空を切った。その途端、捜査員は首から血を迸らしてそのまま倒れた。

 「しっかりして。」

 奈美が倒れた捜査員を抱き起こしている隙に、ミスリルはどこかへ消え失せてしまった。

 捜査員はすでに絶命しており、奈美になす術はなかった。

 奈美はそっと捜査員を地面に横たえると、松林の中を見渡した。

 「でてきたらどう!?」

 松林の中は真の闇であった。ここまでは、別荘の炎も届かない。それでも、奈美は松林の中をじっと見つめた。

 不意に奈美の頬に冷たいもの落ちた。

 雨だ。

 湿気を帯びた空気は雲を呼び、とうとう雨を呼んだ。

 雨は松の木も、地面も、そして奈美もしっとりと濡らした。それでも、奈美はじっと林の中を見つめ続けた。

 すると、真っ黒な闇の中に二つの光が点った。

 二つの光はゆっくりと奈美に近づいてくる。

 奈美の全身からオーラのように殺気が迸る。

 その殺気に反応するかのように、二つの光点が突然、猛スピードで奈美に向かってきた。獣の咆哮がその光点の後から付いてくる。

 とっさに奈美は前に倒れると、頭の上を黒い大きな影が駆け抜けていった。

 奈美の肩に激痛が走る。

 見ると、肩の部分が引き裂かれ、その下から血が(にじ)んでいた。

 黒い影は地上でくるりと方向転換すると、また猛スピードで奈美に向かってきた。奈美の髪から銀の光が迸った。しかし、黒い影は奈美の超振動ニードルを軽く交わすと、木の幹を駆け上がり、そこから奈美に踊りかかった。

 とっさのことに、避ける余裕もなく奈美の上に黒い影がのしかかった。そして、そこではじめて黒い影の正体がわかった。

 黒豹であった。

 爛々(らんらん)と光る二つの(まなこ)が奈美を鋭く睨み、その大きく裂けた口の中に見える鋭い牙は奈美の首筋を狙っていた。

 奈美も黒豹の顎に手をかけ、その口を強引に閉じようとした。しかし、獣の力は強くその牙が奈美の肩に食い込んだ。

 「ウグッ」

 激痛が全身を走り、今にも気絶しそうになるのを必死に耐えた奈美は、もう一度黒豹の頭を持ち上げ、その口を肩から無理矢理外した。黒豹もその反抗を抑えようと、力を入れてきた。それを狙って奈美の足が黒豹の腹を蹴った。

 黒豹の体は宙に舞い上がり、空中で一回転すると、ふわりと地面に着地した。

 奈美の超振動ニードルが黒豹に向かって飛んだ。

 しかし、黒豹は身軽にそれを躱すと、再び、木に駆け上がり、木から木へと飛び移っていった。

 暗闇の中での高速の移動に奈美の目がついていかなかった。しかも、肩の傷の激痛が集中力を鈍らせた。

 黒い影が背後から襲ってきた。

 躱す間もなく、奈美の背中に爪痕が残る。

 「うっ」

 よろめいたところへ、正面からまた黒豹が飛んできた。

 躱そうとしたが一瞬遅く奈美の胸が引き裂かれた。白い肌が顕わになり、爪痕から真っ赤な血がにじんできた。

 黒豹はその動きを止めることなく、奈美の周りを高速で駆け回っている。

 再び、黒い影が奈美をかすめた。奈美の美しい足に爪痕が刻まれる。次にかすめていったときは、左腕が切り裂かれた。

 黒豹は奈美を(もてあそ)ぶように、何度も奈美の体を切り刻んでいった。

 奈美の目が朦朧とし、いまや、立っているのもやっとであった。黒豹はあいかわらず、その周りを高速で駆け回っている。奈美にはもうかわす体力は残っていなかった。

 「もうここらで、終わりにしましょう。」

 闇の中からミスリルの声が響いてきた。

 いよいよ止めを刺しに来たのだ。

 奈美は自分の髪を一本抜いた。

 黒豹の動きがさらに速くなった。

 雨足も強くなってきた。

 黒豹の体は闇と同化し、肉眼では捕らえられない。

 奈美は静かに目を閉じ、呼吸を整え、全神経を触感に集中し、空気の流れをつかもうとした。

 闇の中に奈美がひとりだけ浮き上がっていた。

 不意に地面が盛り上がった。

 二本の牙が奈美の首に襲い掛かる。

 そのとき、奈美の腕が目にも止まらぬ動きで黒豹の顔に向かって伸びた。

 黒豹の体が奈美の伸ばした(こぶし)の先で止まった。

 一瞬、空中で静止した後、黒豹は地面にその姿勢のまま落ちた。

 しばらく、ぴくぴくと痙攣した後、黒豹はそのまま動かなくなった。見ると、黒豹の額に一本の針が突き刺さっていた。

 「ふー」

 奈美は、安堵のため息をつくと、その場に座り込んだ。そして目の前に倒れている黒豹になにげなく目を向けた。

 急に黒豹の体に変化が起きた。徐々にその姿が変形し、女性の姿に変わっていったのだ。

 その姿は陽子のものではなく、奈美の見知らぬ姿であった。

 「これがミスリルの本当の顔なの?」

 奈美は、かつて樫村と呼ばれた女性の顔を、しばらく眺めていた。

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