其の者それ故、"幽霊鬼"
神は楽しそうに、これから行く世界について語る。
「これから、君に行ってもらう世界には、妖穢以外にも妖霊や妖怪といった存在が居るんだよ」
青年は神の言葉を、聞き首を傾げた。
「妖穢……妖霊……妖怪?」
青年の疑問に、神は気付いた様に頷く。
「そう言えば、まだ何も説明して無いね」
神は青年に説明をした。
神の説明を聞くと、今から行く世界には、妖穢、妖霊、妖怪、そして人間の四つの種族が
居ると言う。
曰く、人間は青年の居た世界と、同じ見た目の、人達の事を指し。
そして妖怪とは魑魅魍魎の事で、多種多様な見た目をしているらしい。
妖穢と妖霊は近い存在で、妖霊は人間の思念に取り憑く性質を持っている。
だが、稀に取り憑いた人間の悪い心……悪念に侵食され、性質が変化してしまった、妖霊を妖穢と呼ぶらしい。
「それが……妖穢……」
青年が呟くと神は満足そうに頷き笑う。
「物分かりが良いね、その通りだよ」
青年は説明の中で気になった事を神に質問した。
「妖穢になると、どんな性質に変わるんだ?」
青年の疑問は、もっともだと思った神は説明を始めた。
「妖穢は、人の思念に入り込み欲望と結び付く事で、入り込んだ人間の体を変化させて、主導権を奪い、真宵禍と呼ばれる空間を創り出すんだよ」
真宵禍という言葉を聞き青年は首を傾げて説明を求める。
「真宵禍っていうのはね、妖穢が魂を吸収する為の空間で。その中では人間は体を失い魂だけになってしまうんだよ」
その言葉を聞いて、自分の手を見ながら青年は納得したように呟く。
「その為の……鬼の力……」
神は嬉しそうに頷く。
「正解だ、真宵禍の中でも妖霊と契約した人間や、妖怪などは体を失うことは無い」
神は青年の眼に視線を合わせて、語りかける。
「そして君には、妖穢の浄化の他に真宵禍に取り残された人の保護もやって貰いたい」
青年は神の頼みの中で自分が疑問に思った事を聞き返した。
「……取り残された?自分で逃げれないのか?」
神は青年の疑問を聞き、困った顔をして語るには、真宵禍と普通の場所は黒い壁で分けられていて、出る事だけでなく、入る事も簡単にはできないらしいのだった。
「入る事も出来ないんだったら妖穢を浄化する事も人を助ける事も出来ないんじゃ無いか?」
青年が疑問をこぼすと、神は笑い語る。
「君には、死んだままで行ってもらうから。幽霊の力もあるんだよ」
神が言うには、幽霊の力を使えば、真宵禍の壁を関係なく通る、事ができるらしく。
そして鬼の力を使えば、人の魂を保護したり、妖穢を人間から引き摺り出し、浄化を行なう事が出来るみたいだった。
青年は自分の手を見つめて考える、自分にそんな事が出来るのかと、考えた末。神の方を見て宣言する。
「ーーそれが自分の罪への、罰だと言うのなら、その役目受け入れよう」
青年のその言葉を聞き、神は嬉しそうに頷き、何も無い所に手を翳すと空間に穴が開く。
「その裂け目を通ると、その異世界に行ける。最後に君に新たな名前を与えよう」
神がそう言うと、青年の足元から光が出て来て周りを登りながら回っていた。
光が青年の顔の辺りに来た時、光はさらに強くなる、青年は思わず眼を瞑り、次に眼を開けた時に目の前、文字が在るのに気がつく。
「ーー悠久……諒……?」
青年が眼を見開いて、驚いていると、神は由来を話す。
「果てしなく長い真実……。それが君だ」
青年が神の方を向いて、お辞儀をして、裂け目の中に入って行った。
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青年が入った裂け目を見て、神は寂しそうな顔をして佇む。神は自分以下居ない空間で呟いた。
「ーー諒君……君を神々の賭けに巻き込んですまない。せめて君が本当に感情を取り戻せるのを、僕は願おう」
そう言うと神は自分の手で、器の形を作った。すると、そこから光の球体が出て来たのを確認すると、光の球体に命令する。
「僕はここから動く事が出来ない、だから君が代わりに諒君を導いてくれ」
神がそう言うと、光の球体は神の手の中から離れ、裂け目の中に入って行った。
その後、神は宙を見上げていた、その顔は悲しそうな雰囲気だった。




