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感情爆発『幽霊鬼』(旧題:幽霊鬼録)  作者: ナック
第2章巫女と獣は笑い合えるか?
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第15話

久し振りの投稿ですみません。

なかなか思いつかなくて……

 妖穢を追い掛け、学園内を走り回る諒。発見しては逃げられ、妖穢の残す禍人を殴り消滅させていく。

 そして自分のテリトリーを広げ妖穢の行ける範囲を徐々に狭めていくのだった。


「ーー諒くん‼︎後は講堂だけだよ‼︎」


「……わかってる」


 諒が蛍の言葉に冷静に頷きながら走る。廊下を掛けて大きい扉を開くと、そこはまだ騒乱が止まない講堂の風景が飛び込んで来た。


 諒は周りの騒動を煩そうに耳を塞ぎ、辺りを見渡し霊力を使い探る。


「あっちか……」


 諒が探ると講堂の真ん中辺りから、妖穢の気配を感じる。感じる方へ諒は気を張りながら歩き出す。


 諒はそこに着いたが気配は感じるも、妖穢は居ない。諒は一点を見据える。


「ーー諒くん‼︎其処に居るのは確かだよ‼︎

 君なら引き摺り出せる‼︎」


 蛍は諒にそう言う、その姿は光の玉にしか見えないがガッツポーズしているのを、想像するのは難しく無い。

 諒はその助言に頷くと、目の前の地面に腕を突き立て引っ張る。すると地面に黒い影が浮かび上がり、黒い影は見る見るうちに地面から引っ張り出される。

 その光景を目の当たりにした周りは、より一層騒ぎになり、周りの者達は少しでも遠ざかろうと、一歩退がる。


「……見〜つけた‼︎」


 諒の言葉と共に、気付けばさっきまであった黒い影はみるみるうちに人形へと姿を変えていく。


 《ーーナゼッ‼︎ナゼッ‼︎バレタッーー‼︎》


 現れた瞬間、慌てふためく妖穢、その様子に諒は鬼の面から露出した口を歪ませ、笑う。


「……さあ?分かったからとしか、言い様は無いが。なっ‼︎」


 諒はそう言いながら、妖穢を掴む腕を振り上げ、その妖穢を地面にたたきつける。


 《……ナゼッ‼︎マァ、イイ……ツギハカクレンボダッ‼︎》


「ーーえっ?キャッ⁉︎」


 妖穢はニンマリと下衆な笑みを浮かべると、余程、眼に付いたのだろう。

 唯一、人の身で身体のある雛里を抱えると、妖穢は雛里と共に分身した。


「ーーダァレガッ‼︎ホンモノカァ‼︎ワッカルカナァ‼︎」


 妖穢は数十体に別れてぐるぐると諒の周りを回る。諒は数十体の妖穢を見つめて、眼に霊力を集中させる。


「どうする?諒くん……」


「……今やってる」


 普段諒はもっと感覚的なもので、妖穢を判別している。それは気配だったり匂いだったりする。

 しかし今回の妖穢の分身の全てから妖穢の気配がする。それは分身は妖穢の力によって生み出されたからだろう。


「……何処だ……何処に居る」


 諒は霊力を集中した眼で妖穢達を見据える。あの時(・・・)の再現をしようと、幾重も妖穢を見る。


「ーーそこか‼︎」


「……えっ?」


 諒の言葉を聞き蛍が少し反応するが、蛍が気付いた時には、さっきまで隣に居た筈の諒は居らず。

 諒は妖穢の内の一体に手を突き立てて居た。


 諒は気付いていたのだ、妖穢が反撃してこない事に。今までこの妖穢は何回も諒と会ったが、その度に妖穢は逃げるだけだった。

 たまに禍人を向けてくる時はあっても、自身が攻撃して来ることは無かったのだ。


 《ーーオッ、オマエハ……ダレダッ‼︎》


「ーー自分は幽霊にして、鬼の……幽霊鬼だ‼︎お前ら妖穢を喰らい浄化する者だ」


「ーーナッ‼︎ナンダ……」


 妖穢が言い終わる前に、諒は腕を妖穢から引き抜く。引き抜いた右手には黒い人魂を持っている。

 諒が腕を引き抜いた途端、世界は色を取り戻し始める。

 真宵禍が解けていくと人魂だった人達は身体を取り戻し、本性の姿をしていた妖怪達は人の姿に戻る。


 その様子に諒は自分でも気付かない内に、満足そうな顔をすると、黒い人魂を浄化しようと口に運ぶ。


「ーー動くな‼︎化け物‼︎」


「ーーはぁ?」


 諒が黒い人魂を喰べるのをやめて、声の方向を向くと、恐らく諒と同い年だろう男子生徒が。諒に向けて銃を構えている。


「ーーさあっ‼︎化け物め‼︎その子達から離れて、その人魂を解放するんだ‼︎」


 男子生徒の言葉に諒は戸惑った表情を向ける。しかも妖怪達はさっきまでの一連の流れを見聞きしていた為、呆れた表情で眺めている。


「何故?」


「ーーそんな事当たり前だろ‼︎お前みたいな怪しい化け物が、人の魂を喰らう所を止める‼︎当たり前だろ‼︎」


 男子生徒は自信満々で宣言すると、諒に近付いてくる。


「ーー諒君‼︎聴こえておるか‼︎」


「ーーあっああ、おっさん」


 諒の耳元から博士の声が聞こえてくる。諒は博士の声に返すと、博士は興味深かそうに語りかける。


「ーー今、諒君が持っておるのが妖穢の本体か‼︎」


「ああ、というか見えてるのか……」


「うむ、諒君に渡したチョーカーには変声器の他に君の霊力を通して見ることの出来るカメラが付いておる。儂の研究にはもってこいじゃ‼︎それよりも……儂も妖穢を見たい‼︎是非持ってきてくれ」


 諒は博士の頼みを聞くと蛍を見る。


「ーーとっ言ってるがどうする蛍?」


「別に減るもんじゃ無いんだから、いいんじゃない」


 諒は蛍を見て頷くと、その場から飛び消えた。その場には唖然とした表情の男子生徒が残されていた。


「ーー雛里無事だった?」


「ーーうん、大丈夫だよ‼︎優しい鬼さんが助けてくれたから」


 雛里はニッコリしながら、友達みたいな長髪で金髪の目付きが少し鋭い少女に話しかける。


「ーー鬼?」


「ーーそう‼︎幽霊の鬼さん‼︎また会える気がするんだ」


「ーーはっ?」


 金髪の少女は呆れた顔で雛里を見つめる、その間もニコニコする雛里だった。


 *********


 諒の去った講堂で色んな人が、さっきまで居た幽霊鬼の話をする中、壇上に立って居た初老の男性……学園長が微笑む。


「ーー彼が悠久 諒……か。頼もしく、楽しみですね」


 学園長はそう言うとその場から立ち去る。周りの人達は彼が立ち去った事を気付いていない様だ。

 まるで最初から居なかった様に彼はその場から居なくなった。

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