人は如何して幽霊に?
学校の屋上で、黒い髪の青年が、虚ろな眼で空を見つめる。
「きっと、あの時から……」
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それはまだ、青年が少年だった時の事、少年は両親と死別しており、養護施設で過ごしていた。
少年の脳裏に両親の死際の言葉がよぎる。
『ーーー、何があっても、泣くなよ』
『強い子に育ってね』
少年は両親が死んで、泣かないほど、強い心をしていなかった。だが、少年は両親の言い付けを破りたくはなかった。
それ故に自分の感情が表に出ないように心の底に閉じ込めたのだった。
少年が、両親の言葉を思い出してると、少年を呼ぶ元気な声が聞こえる。
「ーーー君も、一緒に遊ぼ‼︎」
声が聞こえると少年の目の前に同じくらいの歳頃の少女が駆け寄ってくる。少年は無表情な顔で少女見て。
「僕はいい」
少年がひとことで、そう言った。
すると少女は、つまらなそうにして、なおも誘う。
「え〜〜、遊ぼうよ」
不満そうにしている少女を、少年が見ていると、笑顔で施設の職員が近寄って来て。
「ーーーちゃん、ーーー君はいいって、言ってるんだから、あっちで他の人と遊びましょうね」
そう言って、少女を他の子供の場所に行かせて、少年に話し掛けた。
「ーーー君、気が変わった、来てね」
そう話すと職員も、少女が向かった方向に歩いて行った。
少年は職員の背中を見て、俯き小さな声で。
「なんの拍子に涙が出るか、分かんないから」
少年の呟きは、誰の耳にも入る事は無く、消えていった。
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その日の夜、少年がトイレに行きたくなり、起きた。トイレへ向かう、途中で職員がいる部屋の前を通りかかった時に職員の話し声が聞こえてきた。
少年が息を潜め、部屋を覗くと昼間の職員が、もう一人の職員と話していた。
「ーーーって子いるでしょ」
もう一人の職員が少し考えて、気が付いたように言った。
「ーーそれって無表情の子?」
それを聞くと満足そうに昼間の職員は頷き。
「そうそう、あの子、無表情で何考えてるのか、分かんないのよね」
もう一人の職員は思い出したように指を指し語った。
「ーーそういえば、あの子の親戚の人が言ってたけど、ご両親が亡くなった時も、全然泣かなかったみたいよ」
同僚のその言葉を聞くと、昼間の職員は嫌そうな顔で。
「それって、強い子を通り越して、少し、気味が悪いわね」
そこで、一旦切ると、職員は言うつもりも無かったのだろうが、呟いた。
「ーーまるで、感情の無い化け物みたい」
そう言うと、職員は自分の口を驚いた様に抑えこむ。
もう一人の職員がその言葉を聞いて注意する。
「馬鹿、誰かに聞かれたらどうするのよ」
その言葉を最後に少年は、気付かれないように、ソッとその場を立ち去った。
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それから数年経った今でも、青年の頭からあの時の職員の言葉と顔が離れる事は無かった。
「……化け物か」
そう言うと、青年はいつの間にか下を向いていた視線を空に戻して眼を瞑り。
「……死んだら、母さんや父さんに、……会えるかな」
そう言うと、青年は柵を越え、頭から真下に落ちた、そこで青年の意識は途切れた。
血溜まりの中、青年は横たわって居た、その顔は頭から落ちた為に表情はもう、分からない。




