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妹'sとメイド達総出で、お姉様達に張り付いた毒虫を必死に剥がし取りました。全部の毒虫を回収するのに、それほど時間はかかりませんでしたが、真っ赤に腫れてしまったお姉様のお肌が、すぐに白く戻るわけではありません。メイド頭のジョアンナの見立てでは、早くても10日は赤みと痒みに悩まされるだろうと言うことです。お顔には毒虫が付かなかった事だけが救いですが、お姉様達は非常に痛々しいです。
「あらあら、今度は毒虫の見分け方を教えてあげないといけないわね。すっかり忘れていたわ。」
騒ぎを知らされた、お母様がやって来られました。お母様はおっとりした方ですが、私達の庭遊びの師匠です。うちはお父様が忙しいので、虫捕りも木登りもお母様に教わりました。
「奥様、本日のお茶会はどういたしましょう。」
メイド頭のジョアンナにとっては、お城のお茶会の方が心配のようです。
「そうね。この様子では、ソニアは今日のお茶会には、出席出来ないわね。」
困ったわ、と言いながら、お母様は、首を傾げられました。
「王族と結婚しても面倒なだけだから、思い切って欠席したらいいのではないかしら」
「旦那様のお立場がございます。8人もお嬢様がいらっしゃいますのに、エインズワース公爵家から、1人もお嬢様が出席されないと言うことになりますと、王家からあらぬ疑いをかけられるかもしれません。」
お母様は、不満顔です。
「本当に、王族は面倒ね。
けれど、この調子では、ソニアだけではなくて、ロジーヌも、ラシェルも、出席出来ないわ。
だからと言って、アンナはまだ5歳よ。10歳の王子から見たら赤ちゃんみたいなものでしょう。それに、アンナは、しっかり者のようでツメが甘いから、少し心配だわ。」
お母様は、私がお城のお茶会に参加することには反対のようです。私としては、お城のお茶会に憧れる気持ちはあります。ただ今回は、第一王子のシャルル様の婚約者候補の集まるお茶会ですので、とても窮屈そうです。もっと、気楽なお茶会の時に姉妹揃って参加したいものです。
「それでもです、奥様。エインズワース公爵家から、婚約者候補を出すことが大切なのです。」
ジョアンナの一言で、私がお城のお茶会に参加することになってしまいました。そして、出席すると、ソニアお姉様の代わりに、私が王子様の婚約者候補になってしまうようです。ふ、不安しかありません。