第五話
「………ど、どないしよ」
LINEの通知を見て、私は髪を乾かすのも忘れて二十分の時を過ごした。
と言うかいつの間にかもうすぐ三十分経つ。
「なんて返事すれば…いや、まだ既読付けてないからセーフ?」
いや待て先に髪乾かすか…そうだその間になんて返事するのか考えればいいんじゃ…?
そうやそうしよう、じゃないと妹の方が先に洗面使われるかもやし!!
…そう言って髪の毛を乾かす為に四十分。
私は完璧に準備して携帯に向かった。
「……あれ?恭介君だけじゃなくて海からも…清太からも来てるやん!?
この一時間の間に!?男の子ってこう言う連絡嫌いなはずやってゆいから聞いてたのに!」
驚きで固まりながら、私は帰りにザクロのケーキをお礼に持って行ったときの事を思い出した。
男の人と付き合った事が無いまま迎えた22歳、私は男性経験豊富な幼馴染の助言を受けながら色んな事を想定していたと言うのにっ!!
「取り敢えず開いてみやんと分からんしな!」
私はまず清太からのラインを開く。
「お疲れ様、無事に帰れた?
今日はいきなりごめんね、また遊んでくれると嬉しいな」
「…おおう、なんて言うか爽やかやな…」
無事に帰れた事と、また美味しい抹茶のお店を教えて欲しい事を入れて返事をした。
「次は海か…あ、意外に短文や」
「今日はお疲れ、また来いよ」
「会ってた時のテンションと全然ちゃう!!」
梅田駅まで送ってくれたお礼と、思ったよりLINEだとテンション低いんやなって入れて送信。
「…最終的に残った恭介君のLINEが一番緊張するんやけど…」
ぱっと開いた文は意外で、海よりも以外で、私は思わず噴き出した。
「今日はお疲れ様( *´艸`)
偶然で会えたのがびっくりしたけど、楽しかったよ('ω')
今度京都来る時は案内させてね、千光寺も行きたいね(*´ω`*)」
「顔文字とか使うんや…恭介君見た後の海がすっごい素っ気無く感じてまうわ!」
私も会えて良かった事と、今度行く時に連絡するよ、千光寺にはまた違う友達も連れて行きたい事を入れて返信した。
自分自身がそんなに連絡を取ったりしない性格なので返事に四苦八苦しながら全てのメッセージに返信し終わると。
ツイッターの通知が来て続けて開く。
そこには友達何人かから「千光寺ってどんなとこ?」「あきって京都詳しかったっけ?」と入っていて、私は晩御飯後回しでそれらに返信し続けた。
そう言えば興味はあるけれど中々行く機会は無いかもしれないと皆が言うので、私は首を傾げた。
行けばいいのにと返事をすれば、忙しいやら今まで気にした事が無かったやら言われ、私は笑顔でその子達に返事を送る。
「うちの知ってる所で良ければ案内するよ、千光寺行ってみん?」
少し飛び出したお散歩で、縁の繋がった三人と不思議なお寺。
今度は手土産持参でもう少しゆっくり遊びに行きたい。
モンキーパークも結局行けてないし、どこにあるのかも聞きそびれた。
私としてはボートにも乗ってみたいし、渡月橋の向こう側ももっと探検してみたい。
神社のお参りや観察、川辺に居た鳥の写真も撮ってみたい。
それに宇治の方にも行ってみたいな。
どんどん膨らむ想像に、私は笑顔で布団へと潜る。
「恭介君にも、会いたいなあ」
ぽつりと呟いた独り言に、自分で照れてしまって布団で顔を隠した。
今度は普通に、変な返事とかじゃなく普通に接することが出来れば良い。
私は携帯を枕元に置いて、眠った。