非常で非情な現実
俺は、勇者として今魔王との戦闘中である。
ゲームの中では…
俺は、今彼女とのデート中なのである!!
画面の中では…
俺は、イケメン&秀才でしかもスポーツ万能の完璧な男である!!
妄想の中では…
俺は… 俺は…
俺は!!!!!!
「さっさと起きろ!!あほぅ!!!!!!」
「ぎゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」
「さ、最あk…」
「ほら!!ぼさっとしてないで起きる!!」
「ぶべらっ!!」
本日既にHPがさっきの攻撃(寝起きの体に関節技)によって、ほぼ満タンから半分以下になった体に姉のビンタが叩き込まれた。
「全く…私だって疲れてるんだから、早く起きてよね。」
そして、加害者である本人からは、説得力皆無の言葉である…
そもそも、疲れてるならどうして朝1番から人の体力をここまで削れるのだろうか
「うるっさいな~、そんなに疲れてるなら寝ればいいじゃん!!
それに自分が早く起きたからって俺まで起こすなよ!!
自分がババアだから早起きが日課であるかもしれ な…」
「ん??何??」
ここまで言ったときに既にやばいと思った。
そして姉の腕に力が入る気がした。
案の定、姉は優しそうな笑顔とは裏腹に、手を後ろに隠しながら見えないようにガッチリと握りこぶしを作っていた。
ここで、何かいい訳をしなければ、今までの攻撃以上の威力を秘めた攻撃を喰らうことになるということは誰でもわかるであろう…
もちろん、それを避けるためにもなんとかごまかさなければ…
「え、あ、いや…その…」
がしかし、言葉が出てこない。
「いいからこっち来いやぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」
握りこぶしを作ってるあたりから、殴られると思っていたのだが、予想は外れ、本日三回目の攻撃、そして二回目である関節技放ってきたのである。
「え、ちょま…痛い痛い痛い痛い無理無理無理無理無理無理ストップストップストップストップそれ以上曲がらな…」
俺の言葉とは裏腹に、力が更に強まり、自分でも聞こえるような「バキッ」という鈍い音が聞こえた
「ぎゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!すいませんでしたぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」
そう、妄想の中では最強の俺も姉の前では、無力な存在なのだった…
現実は非常だ…